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「不都合な真実」と「好都合な真実」の間   - 複雑系を追う

2013.02.04)  地球の温暖化という問題は、決定性の現象ではあるが、複雑すぎてあらかじめ結果を予測することができない複雑系であることは前回述べた。たとえ今よりコンピューターがいくら高性能となっても、本質的に結果を予測することはできないという意味だ。ごくわずかの揺らぎでも、その非線形性から結果が大きく変化するからだ。

 Photo そういう性質を持っているところから、温暖化真実論者と温暖化懐疑論者の間で、丁々発止の論争がこの20年、延々と続いてきた。IPCC最新報告書(第四次、2007年)は、人為的に排出された二酸化炭素が原因で今温暖化が起きていることは、ほぼ確かであると結論付けている。しかし、それでも一向にどちらかに収束するというような気配すら、その分野の専門家の間でもみえない。

 それどころか、データの取り扱いをめぐって、2009年秋にはねつ造ないし改ざん一大スキャンダルすら起きており、温暖化真実論者の信頼が国際的に大きく揺らいだ。

 前回も取り上げたが、真実論者は、巻き返そうとばかり、

 『地球温暖化懐疑論批判』(2009年秋)

という本を日本で緊急出版。ところが、これが懐疑論者の名誉を毀損したとして、東京地裁で訴訟騒ぎにまで発展した。

 最近の日本でも、専門的な知識を持つ専門家による懐疑論の新著が多く出版されている。たとえば、

 渡辺正『「地球温暖化」神話 終わりの始まり』(丸善出版、2012)

がある。渡辺氏は東大生産技術研究所副所長で教授。植物などの光合成研究の専門家である。その知見を生かして、二酸化炭素の循環問題を詳細に論じている。なかなか説得力があり、真実論者も反論するのは容易ではないだろう。

 ブログ子の意見をいうと、渡辺氏の論理は正しい。

 ● 温暖化神話こそ人為

 この本については、ユニークな生物学者として知られる池田清彦氏(早稲田大学国際教養学部教授)も、最近の「週刊文春」で書評を書いている。渡辺氏の懐疑論を支持し、いわく、

 温暖化という「神話こそ人為。このでたらめにそろそろ気づくべきだ」

としている。この書評欄は

 〝本読みの達人〟たちの希望がわく「初春の一冊」

と銘打っている。そんな欄で国際教養学部の教授が警鐘を鳴らしているのだから、温暖化は本当か、と疑いを持つのも当然だ。

 さらには、この本については、廃棄物リサイクル問題など環境問題の工学的な研究でも知られる武田邦彦氏(中部大学工学総合研究所所長)がこの本を書いた渡辺氏の分析や見解を強く支持することを公に表明している。温暖化を真に受けるなんて、

 知の侮辱

であるとも、ぶち上げている。温暖化を信じるなんて科学的な無知に過ぎないとばっさり。

 ● 地球シミュレーターの警告

 一方、そんななか、NHKBSアーカイブス

 「気候大異変 地球シミュレーターの警告」

というタイトルで2006年に放送された番組を紹介していた(1月28日深夜)。案内役がIPCCの議長だったジェームス・ワトソン博士であったので、ブログ子も注目した。

 Dsc01057_2 この番組の終了後、2013年1月現在の状況を踏まえて、国立環境研究所の江守正多氏(同研究所地球環境リスク評価室長)が番組の感想を述べていた(写真下=同番組の画面から)。

 それによると、放送から7年近くたった現在(2013年1月)でも、温暖化が進行しているという地球シミュレーターの結果(さらには21世紀最後の10年間の様子)は、大まかには、あるいは定性的には基本的に正しいとコメントしていた。世界各国の同様のスパコン結果、20ぐらいあるそうだが、いずれも定性的には一致しているという。

 一致とは、具体的には、温暖化の原因が人為的な二酸化炭素排出の増加によって説明できること、熱帯で今より巨大な熱帯低気圧(台風)が頻繁に発生し、しかも日本にも上陸の可能性があること、東京の熱中症死亡者は、50年後には今の2.5倍、21世紀末ごろには11倍に増加すること、東海地方はそれほど今と変化がないのに対し、東北では干ばつや乾燥化が進行、逆に九州では豪雨や雨の日が多くなること-などである。

 このまま温暖化が進むと、日本だけでなく、たとえば、中国でも、砂漠化と大洪水が同時進行するらしい。当然、水不足と乾燥化による食料危機は深刻化するだろう。

 ただ注意すべきは、温暖化の要因は、二酸化炭素にかぎっても都市化に伴う排熱のヒートアイランド現象、火山活動がある。さらに間氷期の気候変動、最近の太陽活動の低下(11年黒点周期の乱れ)、太陽系外からの宇宙線による地球上の雲発生の変動なども有力な要素である。二酸化炭素のキャリアーとなる大規模な深層海流の変動解明もポイントだろう。

 2014年にもまとまるIPCC最新報告(英文、第五次)が注目されるし、日本は京都議定書から離脱したものの、代わって自主的な取り組みが、2020年の新枠組みづくりに向けて始まる。離脱しなかった各国は、今年から京都議定書による第二約束期間にはいる。

 この2010年代は、予見のできる科学ジャーナリズムの真価が問われる時期であり、複雑系を追う10年間にもなろう。

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