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規制委のもう1つの責務  事故原因の特定        

(2013.02.25)  まもなく、東北大震災や原発事故から丸2年を迎えようとしているが、原発の再稼働に向けた駆け引きが活発化している。原発の新しい安全基準の骨子案が今月初めに固まったからであろう。原子力規制委員会の検討チームがとりまとめを急いでいた。

 早ければ7月にも、この基準を満たしているかどうか、規制委は電力会社からの再稼働申請を受け付け、審査するという。

 だが、忘れてならないのは、事故原因の特定がないまま、原発の再稼働の安全審査はできないということだ。

 それぞれの号機ごとにメルトダウンに至った原因、4号機については水素爆発に至った原因を特定し、再発防止の見地から、特定原因をどのように新安全基準に反映させたのか、まず、規制委は国民が納得するような説明をするべきだ。

 現時点では、この説明がまったくない。説明がないばかりか、規制委のホームページにすら公表されていないのは、問題だ。

 事故原因の解明は、政府や国会の事故調から法的に引き継いだ規制委の責務である。しかも、民間事故調、東電社内事故調、政府事故調、国会事故調のどの事故調も自らの事故原因解明が、まだまだ不十分であったことを強調している。

 今、東電のウソ説明で、1号機の復水器の再調査が行なわれようとしている。少なくとも政府事故調、国会事故調の報告書を精査、あるいは独自調査を追加し、それぞれの号機ごとに事故原因の特定を含めた全容を具体的につまびらかにするべきだ。

 これは、規制委のもう一つのきわめて重要な役割であることを強く意識してほしい。安全審査うんぬんは、その後の話である( 補遺 )。少なくとも、今後、特定ができるごとに、審査指針の改定をする覚悟が必要だろう。

  ● 未解明の放射能漏れ

  4つの事故調査報告書のいずれも、外部および発電所内の交流、直流という全電源喪失がどういうプロセスを経て炉心溶融、水素爆発、大量放射能漏れにつながったのかについて、その具体的な因果関係の特定を浮かび上がらせてはいない。

  具体的に言えば、肝心なそれらの間の原因と結果にまで踏み込んで事故を究明しておらず、各号機ともに不明のままなのだ。それどころか、頼みの綱の発電所内の非常用電源(交流と直流)が、地震で喪失したのか、その後の津波によるものか、各号機ごとに明確に見極められていない。これでは、これほどの組織事故なら再発防止のために当然試みられるはずの再現実験すら、やりたくてもできない。

 さらに放射能漏れのほとんどは、3月15日早朝、2号機の格納容器で起きたことは、東電報告書も認めている。しかし、どこから、どんなふうにとまでは言及を避けている。

 また停止中の4号機の建屋がなぜ水素爆発で吹き飛ばされ、使用済み核燃料プールがむき出しになったのかは依然謎だ。これが首都圏3000万人避難という最悪のシナリオにつながりかねなかったことを考えると、ぜひとも解明が必要だ。

 こういう原発の安全性を見極めるのに欠かせない疑問点をそのままにして、再稼働はあり得ないのではないか。新安全基準の骨子案のように、

 フィルター付きベント(排気)装置を2系統設置(沸騰水型)

をすればいいというものではあるまい。電力会社が言うように、1系統で十分という主張に反論することは難しい。放射能漏れの原因がわからないのに、装置は多いのにこしたことはないという程度の論理はいかにも、苦しい。多いことがそれ自体トラブルのもとになることもある。

 ただ、結果的にわかったことは、いずれの号機についても、原発をコントロールするための全電源の同時かつ長期の喪失と、原子炉を冷却する冷却源の長期の喪失が、メルトダウンの連鎖を招き、それがメルトスルーに至り、日本を悪夢の瀬戸際まで追いやったことだ( 注記 )。

 しかし、突き詰めて、1号機の非常冷却用の復水器(IC)が、水の供給が8時間ぐらいなくても自動的に機能するはずだったのに、なぜほとんど機能しなかったのか。このことでいち早く炉心溶融を起こし、水素爆発に至った。地震による損傷か、津波によるものか、はたまた外部電源喪失、あるいは非常用電源喪失によるものか。さらには、設計上に問題があったのではないかとの指摘も出てきそうだ。

 ● 新基準、規制委は国民に説明を

 原因を詰めないから、ここでも新安全基準は、原子炉の冷却監視の特定安全施設(第2制御室と非常用電源設置)など全電源喪失の防止や、冷却源の確保などに重きを置かざるを得なかった。

 こういうのを、一時的な間に合わせの

 弥縫(びほう)策

というのだろう。原因を突き止めた上での根本的な解決策ではない。福島事故と同じような事故はあるいは防止できるかもしれない。しかし、新たなたとえば、注記したような電源にも冷却にも関係がない制御棒事故には対応できない。南海トラフ「浜岡」では、この心配のほうが強い。

 それどころか、弥縫策では余計なところまでいじりまわすところから、それがもとで、いつかまた事故が、それもこれまで以上に大きな事故が起きる恐れもある。

 Image1167_2 再発防止する安全審査とは、まず、事故原因の具体的な特定をひとつひとつすることであり、次いで、その結果を安全基準に反映することだ。事故原因と新安全基準の関係は、電力会社と規制委だけが知っていればいいというものではない。放射能漏れは結局住民の健康に影響するのだから、安全側に立った基準になっているのかどうか、国民に丁寧に説明する責務が規制委にはある。

  ● 注記 『原発再稼働 最後の条件』

 この長期にわたる全電源喪失と、長期にわたる冷却源喪失が事故の基本的な原因であることは、原子炉設計技師だった大前研一氏の

 「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書( 写真 )

でも、結論付けられている(小学館、2012年7月)。

  注意すべきは、基本的な原因だけを安全審査に反映させただけでは、新たな原因による原発事故は未然に防ぐことはできないことだ。

 福島と同じ事故は、基本的な原因だけを考慮すれば、再発はできるかもしれない。しかし、福島とは異なる、たとえば、南海トラフ「浜岡」で懸念されるような

 巨大地震の強振動に伴う制御棒機能の喪失による核暴走

には何の役にも立たない。長期の全電源喪失も長期の冷却機能喪失も、この場合はなんの関係もないからだ。基本的な原因に至る一つ一つの原因を特定していくことで、あらゆる事故に対する教訓が得られる。これを厭うようでは、それは、

 大前氏がつとに技術者を戒めた

 傲慢のそしり

をうけるだろう。それどころか、規制委は職務怠慢のそしりすら受けるだろう。

 それともう一つ。規制委の安全審査基準は、ハード志向が強すぎる。福島原発事故は、

 組織事故

であるという観点が欠落している。

  ● 補遺 フォローアップ有識者会議

 昨年秋口から、月2回のペースで、政府、国会それぞれの事故調報告書をフォローアップする有識者会議が開かれている。事務局は内閣官房と原子力規制庁。

 この会議には、元政府事故調委員長の畑村洋太郎氏、元国会事故調委員長の黒川清氏、民間事故調の北澤宏一氏がメンバーとして加わっている。

 突っ込んだ議論で、事故原因を特定し、新安全基準に生かす責務があろう。

  福島原発の4つの号機それぞれの事故原因の特定は、これからの原発安全基準の改定において最も良いお手本、いわば〝教科書〟にしなければならない。

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