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「不都合な真実」と「好都合な真実」の間       -  北極圏の場合 複雑系の真実を追う

(2013.02.02)  南極海の温暖化について書いた先ほどのブログの続きで、

 北極圏、北極海では温暖化はどうなのか

について、書いてみたい。そこで書いたように、北極圏はもっとも温暖化の影響が敏感に現れる場所であり、また大陸がない分、温暖化のメカニズムは、そう複雑ではないだろう、と予想される。

 ● 北極海の海氷、年々、減少傾向

 事実、北極海の海氷は、毎年、縮小し続けている。温暖化のせいだと素直に解釈すれば、合点がいく。

 先日1月30日深夜、NHKBSプレミアムでアーカイブス「北極大変動」というのを再放送していた(アーカイブス番組としての初回放送は2012年4月。今回のはアーカイブスの再放送)。

 それによると、北極海の海氷は9月中旬ごろ、その年の最小になるが、

 1980年9月に比べて、2007年9月の海氷の面積は約6割も減少、観測史上、最小

という。番組では、その比較図まで出ていた。ただ、海氷は、陸地から流れ出た氷山と違って、海面上昇効果は事実上、ゼロではある。

 Image652 その後も、減少を続けて、

 2012年9月21日付朝日新聞によると、

 北極海の海氷 最小を更新

として、1980年代の9月最小期の平均分布と2012年9月16日(この年の最小)の分布図

が比較できるように掲載されている(写真)。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公表した水循環変動観測衛星「しずく」の観測データである。

 記事によると、これまで上記に書いた2007年9月の最小面積425万平方キロが最小記録だったが、この記録を2012年8月に更新(421万平方キロ)、その後さらに縮小した。掲載された図から見積もると、

 1980年代の最小分布の約半分以下

となって、二つのデータはよく一致する。つまり、年により、多少はジグザク増減するものの、北極海の最小期9月の海氷の面積は、縮小傾向にあるといえるだろう。

 この30年、最小期9月の北極海の海氷は毎年、縮小し続けている

というのは、これが何によるものか、という原因論は別にして、科学的に根拠のある確実な事実であろう。番組によると、

 残った海氷も、ずいぶんと薄くなり、たとえば白クマがかつては容易だったのに、今では移動できにくくなっているという。泳がなくては移動できないという事態。食料が得られず、今では

 シロクマは絶滅危惧種であり、将来は絶滅する危機にある

らしい。

 ところで、北極圏にほとんどが入るグリーンランド島はどうなっているのだろう。

 この島で起きていることは、温暖化によるものとすれば、素直に解釈できる。

 これまた、NHKBSアーカイブス「北極大変動」(2013年1月30日深夜再放送=初回のアーカイブス放送は2012年4月)によると、

 グリーンランドの陸氷の上に、これまでみたことのないような河が流れているのだ。

 川は、ムーランと呼ばれる垂直ならせん状の穴

に流れ落ちていた。つまり、地面と陸氷(氷河)の間に水が流れ込んでいるのだ。だから、その水がおそらく、潤滑油の働きをして、氷河の流れを加速している。

 こうなると、陸氷が海に流れ出る氷山の量は増える。

 これは、海氷とは違って、海面上昇を生むだろう(温暖化に伴う海面からの蒸発は無視するという仮定はあるが。もっとも氷山は海水を冷やす効果があるので、定性的にはこの仮定を置くことは無理ではない)。

 ● 北極圏は温暖化の臨界点をこえたか

 この番組の中で、長年、北極点を含めて北極圏の氷の調査をしている海洋開発研究機構の菊地隆博士の言葉が印象的であった。博士は、冬でも北極海に氷がないところがあるという驚くべき現状(2008年時点)を目の当たりにして

 「北極海は、(人の手ではもはや押しとどめることのできない負の連鎖が始まる)臨界点をこえてしまったのではないか。その可能性が高い」 

と述懐していた。後戻りのできない時点、臨界点をすぎた。もはや、どう温暖化対策をほどこしたとしても、この進行は人為的にはとめることができない。自動的に進行するというのだ。二酸化炭素排出を今すぐに各国ともにゼロとしたとしても、もはや温暖化は止められない。夏場の北極の氷の消滅は避けられないということだろう。

 その温暖化の自動的な進行のメカニズムを、もう少し詳しく解説すれば、こうだ。

 Photo 温暖化で、氷が縮小し、しかも薄くなる。氷と氷の間にも隙間ができる。すると、それまで氷の表面で全反射していた日射は、そのすきまから海水に入り込み、海水温を上げる。結果として、温暖化はさらにすすむ。すすむと、さらに翌年の凍りはまた薄くなる。またまた海温は上がり、温暖化が急激に進行するという

 北極海の負の連鎖(正のフィードバック)

で北極圏の海氷の大崩壊が進行する。

 これが急速に進んでいる様子が、上記した1980年代からの30年の姿なのだろうか。

 この意味では、地球温暖化などは神話だという懐疑論に反論した

 『地球温暖化懐疑論批判』(写真下、東京大学など5機関が参加するサステイナビリティ学連携研究機構。2009年11月)

は、人間界から地理的に近い距離にあり、その分大きな影響を受けやすい北極圏に限れば、正論であろう。

 ● 温暖化の原因は人為的な二酸化炭素排出か

 北極圏では温暖化で氷が薄くなり、巨大地下資源、石油やガスの開発競争が以前より容易になり、ロシアやノルウェーで熾烈になっている。これは、けしからんということになりがちだ。事実、番組「北極大変動」第2集では、この問題を取り上げている。

 これ以上地下に固定してある二酸化炭素をほじくりだすなんて、とんでもないというわけだ。

 温暖化の原因の主なものは人為によるものであり、それは二酸化炭素の過剰な排出によるものである。

 これは本当なのだろうか。複雑系の原因要素を探し出すのは容易ではない。きちんとした幅広い検討が必要だろう。

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