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論説 = 廃炉の決断を求めたい           - 南海トラフ「浜岡」を追う

(2013.02.08)  国際水準から30年以上遅れているといわれている原発安全基準。これを国際水準に見合うように改めようと、その見直し作業が原子力規制委員会の検討チームで始まって半年になる。新基準の骨子案が固まった(写真= 2013年1月31日付毎日新聞)。

 Image664 南海トラフ沿いの巨大地震に対し、日本で最も危険で、しかもその危険性が切迫しているのが浜岡原発(中部電力)である。このトラフに関連して、あるいはそれとは別に敷地内に活断層が走っている疑いが指摘されているが、新基準をクリアするには

 「活断層 40万年前まで調査」

をする必要性もある。

 中部電力は、4年前、代替の6号機の増設とセットであるとはいえ、事故を起こす前に採算性という経営判断で老朽化した浜岡原発1号機と2号機を自主的に廃炉にした。日本で唯一の決断である。この決断を生かし、残る3、4、5号機についても、コスト的にハードルの高いこの新基準を大義名分に、廃炉にするという経営決断を求めたい。

 これなら、反原発運動に屈したのではなく、新基準という国の大方針、つまり国策に殉じた経営判断というりっぱな大義があり、国民世論を真摯に受け止めたいという電力会社としての名分が立つ。電力業界もこの大義名分を抑え込むことは難しいのではないか。

 しかし、それも巨大地震に襲われてからでは遅い。東京電力の二の舞を演じることは、ぜひとも避けるべきだ。

 Image665 幸い、総発電量に対する原発依存度も15%前後とほかの電力会社に比べて低い。廃炉にしてもその経営への影響は最小限に食い止められる。

 決断には静岡県民380万人の命がかかっているのはもちろん、中部圏での原発立地であり、国家百年の大計を誤るかどうかにもかかわっている。このことを中電経営者は忘れてはなるまい。 

 ● 注記 南海トラフ巨大地震の検証

 2013年1月31日付毎日新聞に巨大地震についての最新の検証結果が特集されている(写真中)。

 また、浜岡原発の活断層問題についての総括的なブログについては、このブログ

 2012年12月20日付 原発直下の活断層問題 問われる「浜岡」

を参照してほしい。詳しい参考文献が、この問題を考える場合、よい手がかりとなろう。

 Image617_2 また、この1月20日付ブログについての学習講演会が、2013年1月20日、沼津労政会館で行なわれた。ブログ子も参加したが、そのときの様子が写真下。

  ● 注記2 南海トラフ「浜岡」直下に巨大活断層の恐れ 

  規制委が浜岡原発に対して、新基準の骨子案が固まった今の時点で、どのように考えているか、注目される。

 ヒントは、以下の二つ。

 第一。規制委の田中俊一委員長は、骨子案は「世界最高レベルの厳しさ」とした上で、わざわざ、記者会見で、浜岡原発1、2号機が中電の経営判断で4年前の2009年廃炉になった事例を挙げながら、次のように述べている。

 「金がかかるから原発の運転をやめる電力会社もあるだろうが、われわれはまったく(そんなことは)考慮しない」

 これは、中電さん、残りの原発もやめたらどうですか、と言っているのに等しい。規制委、すくなくとも田中委員長の腹は決まっているのだ。

 この発言については、たとえば2013年1月31日付毎日新聞朝刊「クローズアップ」にも出ている。

 第二。これに呼応するかのように、あるいは、補足説明するかのように、規制委の森本英香次長が、次のように述べている。

 「今の時点では、規制委員会自らが浜岡について評価する段階ではない」

 これは、NHK静岡放送局の地域番組「静岡流 浜岡原発防災に備えて」(2013年2月8日夜放送)の収録映像での発言。

 今の時点で中電自らが廃炉を決断するならば、それは結構なことだが、という意味であろう。また、今の時点では、とわざわざことわっているのは、中電がみずから判断しないのであれば、近いうちに規制委自らが不適格の評価を出すだろう、という含みのある廃炉の催促発言ともとれる。

 番組では、中部電力浜岡地域事務所の村松立也専門部長が、福島事故のことを考えると、

 「思いもよらないところから何かがおこるかもしれない」

との思いから

 「もしかして、もしかしてと繰り返して対策を打っている」

と話している。

 この「もしかして、もしかして」という現場の不安を完全に払拭するのは、巨大地震が来る前に早く中電自ら「廃炉」を決定をすることであろう。上記の規制委幹部の発言はこれを暗に催促している。

  それは少し早すぎるというのであれば、

 「もしかして、もしかして」浜岡の原発真下に活断層があるのではないかという不安を、まず、ともかくも解消すべきであろう。

 というのも、このブログ(2012年12月20日付)でも指摘したように、浜岡原発の付近、あるいは直下の南海トラフ沿いに巨大な活断層がある可能性が名古屋大学などの専門家が具体的に指摘しているからだ。

 確かに、2013年1月現在で政府の地震調査研究推進本部が「主要な活断層帯」としたのは110活断層(長さ20キロ以上で、ずれればM7.0以上の大地震を引き起こす恐れがあるもの)であり、このリストには浜岡原発周辺に、そんな危険な断層群は確認されていない(主要ではない活断層が海底に16あることは中部電力も認めている)。だからと言って、原発敷地内には危険な活断層はない、とまではいえないのだ。

 というのは、このリストには落とし穴があるからだ。海沿いの活断層である。海底に陸上と同じような活断層がたとえあったとしても、海底であるところから調査が困難でなされていないか、あるいはしたとしても調査が行き届かず、活断層かどうか確認できていないかのどちらかなのだ。海沿いは、活断層がないのではなく、いわば「空白」なのだ。

 その証拠に、4、5年前から政府の推進本部があらためて九州地域で海沿いを中心に活断層帯がないかどうか、再調査し見極めたところ、当然のことだが、多数の海底活断層帯が新たに発見された。この結果、九州地域の活断層帯数はなんと一挙に倍増している。

 浜岡原発周辺は、地殻変動の激しい南海トラフ沿いであり、海底に巨大な活断層帯(群)があったとしてもなんら不思議ではない。あって当然なのだ。もしか、もしかの話ではない。現に、専門家はその存在を具体的に指摘している。

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