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「現代数学」を発見した武士 関孝和

(2013.01.04)  年末も押し迫った日曜日の夜、偶然だが、放送大学(BS放送)の

 江戸に咲いた和算の夢

というのを見た。Dsc00599 数学者、関孝和という人については、理系出身のブログ子も、おぼろげには知っていたが、この放送大学「ゆとりの時間」の専門科目特別講義は面白かった( 写真= 放送大学BS特別講義番組より )。

 関心した第一点は、どういうふうに和算を行なったか、関孝和が考案したその詳しい手順方法を

 四日市大学(三重県)の小川束教授が、実際にやって見せていたことだ。これには、びっくり、見事な解説だった。特別講義と銘打つだけはあると感心した。

 特に関孝和の主著の和算書で、代数方程式論とも言うべき

 『発微算法』(1674)

の解説は、面白かった。関孝和の新史料発見の話も具体的に紹介されており、ブログ子の不明をただしてくれたのもうれしい。

 第二点は、これがもっともブログ子がうなった点だが、孝和の科学史上の意義を明解に現代数学者がまとめていた点だ。四日市大学関孝和数学研究所の上野健爾所長(数学者)が、上記第一点を踏まえながら、

 孝和は、それまでのような個々の問題の解法にとどまらず、その背後にある数学的な一般的性質を考察している点を評価していた。

 具体的には、孝和以前は、今の小学校のツルカメ算や中学数学レベルだったのを、孝和は、高校レベル、大学レベルの現代数学にまで引き上げた。つまり導関数の考え方、判別式などの代数方程式論、行列式論、無限等比級数論にまで、一気に、それも幕臣の仕事のかたわら独力で確立したという。

 講義のタイトルは「江戸に咲いた和算の夢 数学者 関孝和物語」と、ややおだやかな表現になっていた。しかし、上野所長の評価、および番組を見た感想をズバリ、一言で、ブログ子の言葉で表現するとすれば、

 「現代数学」を発見した武士 関孝和

ということになろう。講義タイトルは、優れた鋭い内容にしては、少し工夫が足りないように感じた。

 それはともかく、関と同時代の17世紀後半に活躍した西欧の大数学者としては、微積分法を確立したG.ライプニッツやI.ニュートンが知られている。関は、彼らと少しも引けをとらない存在だったという気がした。

 関孝和といえば、円周率を詳しく算出した数学者うんぬんというイメージが日本人の教養として根強い。しかし、むしろ、日本人として初めて現代数学という高みを発見した男というのが正しい評価ではないか。しかも、その高みは、明治のような西欧の物まねからではなかった。日本人の独創性から生まれたものだった。

 日本人の独創性を具体的にみずから実践、実証してみせた。関孝和研究の第一の現代的な意義はここにある。言葉を変えれば、

 先の『発微算法』などは、関孝和からのわれわれ日本人への具体的な遺言であり、メッセージ

であるといえよう。

 このメッセージにこたえるには、関の独創性が、つまり、近世に咲いた和算の夢が、なぜ西欧のように明治の近代、現代へと受け継がれていかなかったのか。そこにどんな事情や限界があったのか。江戸時代について西欧との比較教育制度論的な考察も必要だ。関孝和=天才数学者論で片付けては、関も浮かばれないだろう。

 その考察から、今求められている独創性を育てる現代教育のあり方に大きな示唆を得ることができる、あるいは可能性がある。これが

 関孝和研究の第二の現代的な意義

だと特別講義を拝見して強く、そう思った。

 放送大学「学歌」で、小椋佳さんが、大意、

 いつでも学び直すことのできる場が身近にある。それ自体、最高のぜいたくのひとつ

と歌っている。これに実感を持った歳末だった。

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