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外の風を入れる「TQC」に 東電内部改革

(2012.12.14)  以前のこのブログ(2012年10月12日付)で、東京電力が自ら設置した社内改革委員会とも言うべき

 原子力改革特別タスクフォース会合 

の席上、社長・会長も出席した上で、外部の監視委員会に対し、

 原発・津波事故は対処可能であった

と公式に東電自らの不作為の責任を認めたことを、書いた。

 これほどの津波はそもそも予測不可能だったとするこれまでの主張を180度転換した瞬間だった。この転換を引き出した改革タスクフォースのスタートから3か月の取り組みをNHKが密着取材した。その様子が、先日

 クローズアップ現代(瀬戸際の東電内部改革)

で放送されていた( 写真上 )。

  福島第一原発では、押し寄せる津波の高さが15.7メートル、浸水深さ5.7メートルになる恐れもあることが、社内シュミレーションで早くから弾き出されていた( 写真下 )。しかし、それは経営陣には届いていたが、一般には伏せられていたことがタスクフォースの調査で分かった。

 Dsc004961_2 番組では、重要リスク管理表が作成されていたとはいえ、原発の稼働率を下げないという経営論理が暗黙のうちにあった。このルールに忠実に行動すると、安全対策が置き去りにされる。当然、安全対策の優先順位が下がる。タスクフォースメンバーの一人は、そう苦しい胸のうちを吐露していた。

 つまりは、起きる可能性があるものは、いくら確率が小さいので起きないと都合よく解釈しても、いつかは必ず起きるという法則が、経営論理に押しのけられてしまった。それが今回の事故の原因だったというわけだ。

 この論理が、少しずつ、少しずつ原発の安全マージンを削り取っていった。これは否定できない現実だろう。

 とすれば、経営の論理に隷属しない新しい安全文化を社内に根付かせる必要があろう。それは何か。後述するが、

 自由な発想に基づく「品質至上主義」

というかつての日本が世界に誇った取り組みに学ぶことだ。

 もうひとつ、社内だけではなく、対社会に対しても、上から目線という問題点があった。

 タスクフォースのメンバーの発言だが、今も、かつての東電の発想で考えているのではないかという忸怩たる思いを語っていた。原発は安全という、いわゆる国家的な「上から目線」の発想であり、社会にとって安全かどうかという視点がなかった。いまもそうではないのかとの思いもあるらしい。

 わかりやすく言えば、そこのけそこのけ、原子力が通るという、知らず知らずのおごりだ。確かに、このことも、事故を防ぐことのできなかった重要な原因だろう。

 なぜなら、上から目線は、せっかくの危惧をそんなはずはないと一蹴してしまいがちだからだ。おごりは、そのリスクが現実化するかもしれないという健全な発想を根拠もなく押さえ込んでしまう。

 改革タスクフォースの事務局長が

 「まだまだ安全性を向上させる余地はあった」

と発言していたのも、社内的な経営論理の優先、対外的な上から目線のおごり体質という問題点の反省の上に立ったものなのだろう。

 この二つの問題点を改善するには、

 外の風を入れる全社的なQC(品質管理)活動

が有効ではないか。

 Dsc0050615m2 外部からタスクフォースを監視する委員会(デイル・クライン委員長)というのも、一定の効果はあろう。が、実のある真の安全対策には限界がある。かつての、とりわけ1960年代の日本のQC活動のような現場の声を生かすサークル活動は「不良品ゼロ」運動として大変に有効であった。

 現場からの問題を指摘する意見、改善点の提案など自主的で、そして全社的な、いわゆるTQC活動こそ、安全性向上に対してその真価を発揮するだろう。

 QCには、一般に設計上の品質管理と、実際の製品上の品質管理がある。原発安全対策の場合、前者は国家レベルで基準や規制を強制的に行うのに対して、後者は電力会社が担う。

 この場合、問題点の洗い出しや改善点の提案では、社員が経営論理など社内のしがらみにからめ取られないためには、

 社会からの苦情、クレームの窓口づくり

 デミング賞など安全性向上に資する活動に対する表賞制度

 内部からの、あるいは外部からの告発などに対する降格人事や制裁の禁止制度

などの仕組みは必要だろう。

  国の安全基準さえクリアすればよい。今回の大惨事は、それだけでは不十分であることをはっきりと示した。そんな形式主義、見せかけ主義から抜け出し、社内の自主的な取り組みによる

 品質至上主義

を組織内に安全文化の根幹として根付かせたい。平たく言えば、品質至上主義とは、かつてのソニー主義だ。

 こう考えてくると、こうした組織づくりは、ひとり東電だけでなく、各電力会社が共通して取り組むべき課題だとわかる。しかも、それは、何も特別なことではない。かつて「メイド・イン・ジャパン」として、世界に冠たる日本のお家芸だったのだ。

 番組を拝見して、そう思った。

  注記

 12月14日夜のNHKニュースによると、

 東京電力は、原発の存続を前提に原子力組織の改革案として、

 (これまでの稼働率重視に代えて)安全性を最優先する経営方針

を打ち出した。タスクフォースを監視する外部委員会に出席した同社社長と会長が正式に報告した。この方針を含めた最終報告書がまとまるのは、来年2月ごろという。

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