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ヒマラヤ「デス・ゾーン」 竹内洋岳の挑戦

(2012.12.15)  なんとなく、それも途中から、ぼんやり見ていたNHKスペシャルだったが、途中から、

 これはすごい

ということに気がついた。それも、番組の趣旨とは関係ないところで、まったくもってすごいと思った。その番組というのは先日、総合テレビで放送された

 ヒマラヤ8000メートル峰 全14座登頂に挑む

という登山家、竹内洋岳41歳の達成までの21年と、最後のダウラギリ峰(8167メートル)の登頂成功の様子だった。

  静岡県に住み始めているのに、富士山にだってろくに登ったことのないブログ子が何に驚いたかというと、生き物らしい生き物がまったく生息できない

 8000メートルをこえる、いわゆる「デス・ゾーン」

に、おそらくすべて無酸素で14回も成功したという事実である。これは

 超人というか、超生物的な快挙

だろう(しかもエベレスト山頂の気温はなんと零下50度前後)。

 Image1383_2 なぜなら、生物が陸上に進出して以来、5億年以上たつが、この間、地表の酸素濃度は、12%以下になったことは一度もないからだ(現在の地表の酸素濃度は21%)。このことは、

 『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』(原題= Out of Thin Air(薄い大気の中で)。P.ウォード、文藝春秋、2008年。写真上 )

に詳しい。そのことを知っていたので、番組の流れとは関係なく、これはすごいと思ったのだ。なにしろ、8000メートルをこえると、

 写真下の手書きグラフからもわかるように、

 8000メートルでの酸素濃度は、8.5%

以下。8000メートル級の山々の頂に、無酸素で登頂するには、これ以下の過酷な状況に長時間、おそらく10時間以上たえなければならないからだ。

 陸上生物が長時間生存できる酸素濃度の限界は、進化論的には先ほどの12%ぐらいが限界。山の高さで言えば、だいたい、5000メートルが限度なのだ。富士山の山頂に近づくと、あるいは長くそこにいると、ブログ子もそうだったが、頭痛などの高山病の症状が出るのもこのためだ。体が異常を知らせるのだ。

 なのに、竹内さんは、8000メートルをこえるヒマラヤ高山を14座も征服している。

 グラフでもわかるが、6000メートルでの酸素濃度は地表の半分、9000メートルで3分の1近くになる。

 Dsc00521 竹内さんの話では、酸素マスクを使わない無酸素の場合、

 8000メートルをこえる山では、登頂というよりも、本来行けないところをなんとか、頂上経由で元の7000メートルのスタートのキャンプまで、ちゃんと生きて戻ってくることができるかどうかという闘い

なんだそうだ。

 それでも一気に頂上まで登ることはできない。いったん、8000メートルの危険地帯をうかがう7000メートル前後のキャンプで

 高度順化

をする。体を慣らす。その後一度、より低いキャンプまで降りる。そうした準備をした上で、天候を見ながら、頂上を目指す。そんな様子が映像で紹介されていた。運がなければ、成功は難しいらしい。体力のある、そして若ければ成功するというものではない。

 事実、番組では、竹内さんに同行した若い登山家は高山病の症状で、デスゾーン目前で下山を余儀なくされている。

 14座すべて登頂に成功したのは、竹内さんが日本人としては初めてらしい。快挙というよりも驚異である。

 進化論的な見地からは、酸素マスクを付けた登山と、そうではない無酸素とでは、まったく意味が異なるということになろう。

 一方、世界一のエベレスト山でも、その山頂の上空をインドガンやアネハヅルがゆうゆうと飛んでいく。これは、さきほどの本によると、鳥は、人間の肺機能より、3割も効率的だかららしい。さきほどの手書きのグラフから推算すると、

 つまり、鳥にとっての「デス・ゾーン」は9000メートルぐらい

ということになる。これだと、鳥はなんとか、エベレストの山頂をこえていける計算だ。しかし、それでも、しんどいことは、しんどいだろう。

 竹内さんの挑戦をみて、地球上の生物の進化の苦闘の様子をまざまざと見せつけられたような発見の番組だとわかった。

 エベレスト登頂などのヒマラヤ登山というのは、人類の進化、いやそれよりもはるか昔の数億年の過去にさかのぼる生き物たちの物語なのだ。

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