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地方は世論のもとなり               - リアルタイム調査の危うさ

(2012.12.02)  きょう、日曜日午前、これまでほとんどなったことのないわが家の固定電話がなった。発信元を確認する表示には「表示圏外」とあった。どうせ、商品の勧誘だろうと思ったが、久しぶりに固定電話の声を聞いてみたくて、受話器を取った。

 Image13332 いきなり、総選挙の世論調査です、お答えできる範囲で結構ですのでご回答くださいとあらかじめ録音されているらしい無機質で平板な女性の声が流れてきた。当然ながら有無を言わせぬ一方的な言い方であり、質問は7つだと押してきた。

 従来の支持政党、今度の投票に行くかどうか、投票する候補者を決めているかどうか、今回投票する政党、あるいはどの党の候補者に投票するか、その基準、回答者の性別と年齢層などを、いくつかの選択肢の中から選んで、その番号をプッシュする。 そして、どこの世論調査なのか、はっきり聞き取れないうちに電話は5分ほどで切れた。

 いわゆる電話帳からの無作為抽出による電話世論調査である。

 ブログ子としては、回答時にはできるだけ正直に回答したつもりだったが、がく然としたのは、電話が切れた直後なのに、

 どう回答したのか、肝心なことは覚えていない

という事実であった。録音の声にただこちらも機械的に反応しただけであり、考えた末のものではなかったせいだからだろう。手間や暇がかかる紙に書いてもらう調査、あるいは面接調査とは違う電話調査の大いなる弱点であり、限界だろう。

 みんながみんな、ブログ子のようなそこつなことをしているわけではないにしても、お手軽で素早い電話世論調査のずさんな実態が垣間見えて、恐ろしくなった。

 なにしろ、薬師寺克行東洋大教授の分析によると、

 「世論調査を気にしすぎる政治が民主党を徐々に侵食し、変質させ、政権運営の失敗につながった」( 「世論調査政治」の落とし穴 『本』(講談社、2012年11月号) )

からだ。同氏は、複数の民主党政権幹部の証言インタビューからこの結論を引き出している。その世論なるものの調査は、かくもいい加減なものなのだ。薬師寺氏は、

どれだけやれば気が済むの ?

と警告している。

 「だから有権者に言いたいのは、世論調査に重きを置かずに、自分で考えて投票してほしい」( 「週刊現代」12月8日号の総選挙特別対談記事 以下の「補遺」参照 )

と呼びかけている。薬師寺氏は、元朝日新聞政治部長であり、論説委員だった人だが、この指摘はその通りだろう。

 Image1331 最近では、その世論調査も、分単位のリアルタイムでなされるようになっている(写真下 =12月1日付朝日新聞。11人が一堂にそろった党首討論に対するツイッター投稿分析)。どの党首のどういう発言にネットは反応しているかが分単位でわかるというものすごさである。

 こんなことに一喜一憂する政治、あるいは政党は明らかにばかげている。

 しかし、現実には、この反応に踊らされて、投票行動したり、政党は政策を変更している。大衆迎合主義も、ここに極まったというべきだろう。たとえば、国民の関心を集めている「維新の会」の右往左往ぶり、あるいは変質ぶりはまさにしかりである。

 注意すべきは、だからと言って、世論など、あるいは地方の世論など無視してよい、聞く耳を持たなくてよいといっているわけではない点だ。そんなことをすれば、独裁政治になってしまう。人気取りの政治はするなということだ。

 わか家には、写真上のような

 「地方是輿論的本也(地方は世論の本なり)」

という掛け軸があり、この20年、大切にしている。地方の切実な問題に政治家は真摯に耳を傾けよ、というぐらいの意味で、ブログ子の信念でもある。

 もともとは、北陸のある地方紙の創刊者であり、主筆でもあったジャーナリスト、赤羽萬次郎の信念だった。赤羽は、今から100年以上も前の明治時代に、いくつかの新聞を渡り歩いて活躍した。近代日本のジャーナリズムの先駆けとなった反骨の新聞人だったと言っていいだろう。

  そんなこんなで、今朝かかってきた無機質な電話は、図らずも、世論調査政治などに惑わされずに、自分の頭でよく考えてから、投票するようにと警告してくれた、ありがたいメッセージであったと思う。政治が悪いのは、国民の民度も低いからなのだ。そんなことがわかったのだから、今時の固定電話の効用も、ばかにはならない。

 注記

 自分の頭で考える場合、各党の公約、マニフェストを比較出るサイトとして、

 http://d.hatena.ne.jp/scicom/20121216/p1 

は、参考になる。ここには、科学技術政策を各党ごとに公約が要約してまとめられている。

 また、第三極の新党や政党を選択する場合、どうせ、総選挙後は、解党、合併などの離合集散が避けられないだろうから、党を選ばず、将来性、実績などから人を選ぶのは、一票を国政に生かす賢明な策であろうとブログ子は考えたい。

 補遺

 この特別対談の相手は、共同通信社の元政治部長、元編集局長だった政治コラムニストの後藤謙次氏。

 同氏の講演を何度か聞いたことがあるが、そして、政治予測が好きな割には、あまり当たらなかったことを記憶している。

 ちなみに、同氏は、薬師寺氏との対談で、総選挙公示直前時点で、政党の獲得議席を次のように「ざっくりした数字」と断ってはいるものの、予言している。

 解散時118議席だった自民党「200議席超」

 解散時230議席の民主党「復元力が維持できる100議席超」

 第3極の筆頭、維新の会「100議席にどこまで迫れるか」

 公示直前結成の新党未来については、週刊誌発行後とあって言及はない。ただ、合流する小沢一郎氏率いる

 解散時40議席前後の「国民の生活が第一」は「10議席超。20議席に届くかどうか」

と読んでいた(ただし、数字の根拠の明示はない)。

   この後藤氏の予測は、おそらく、おおむね、あたらないだろう。ちなみに、後藤氏は、民主党支持派とみられている。

 衆院解散時21議席の公明党、同9議席の共産党については、言及なし(公明党は比例も含めて30議席の大台、共産党も倍増を目指している)。公明党は、総選挙後は自民党との連立を視野に入れている。

 なお、読売新聞・日本テレビなど読売新聞系の最新の電話10万人世論調査では、自民党は過半数241議席を上回る勢い(「ニュースZERO」12月5日夜で発表)

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