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米国は「他力」の国になるか 五木寛之の旅

(2012.12.01) 何気なく、先日午前、寝ぼけまなこでBSプレミアムを見ていたら

 作家、五木寛之の

 「他力」に救い求めるアメリカ

というのを放送していた。21世紀の仏教のあり方を求める旅シリーズなのだが、大震災直後の2011年4月の再放送らしい。久しぶりに見る五木さんは、確か、80歳近いはずだが、とてもそんなには見えない。若い。小男ではあるが、ダンディで、写真は必ず向かって右側からしか撮らせないという伝説があるくらいだ。この日の解説出演もそうだった。

 さて、番組は、要するに21世紀の仏教はどういうふうになるか、世界をめぐって考えてみようというものらしい。

 結論は、どうやら、

 仏教は、「他力」を世界の共通語として、再生する

という五木さんの印象を紹介したもの、といえばあたらずといえども、遠からずだろう。他力とは、阿弥陀仏の本願力のことである。俗に、他力ではダメ、本人の自助努力というアレである。しかし、五木さんが言いたかったのは、今の「心の危機」の時代には、他力の力、共助の力が求められているということだろう。

 五木さんには他力との出会いを中心にした自伝エッセー『TARIKI』という英文に翻訳した著書まである(写真= 「アマゾン」HP www.amazon.co.jp より)。五木さんの思いはそうであっても、他力に救いを求めるアメリカというのは、本当だろうか。

 他力とは、番組に登場した僧りょの巧みな表現で言えば

 I am sorry であり、Thank you であり、I love you

である。一言で言えば

 他力とは、自律した寛容の精神

ということになろうか。 これに対し「自力」とは、座禅などで自らの修行で解脱することをいう。

 この他力の考え方は、浄土真宗の元祖、親鸞の教えでもある。ブログ子は、真宗の盛んな北陸に生まれ、育ったせいか、この考え方にはなじんでいる。わかるのである。

 これに対し、アメリカは、もともと自助努力、すなわち仏教でいうところの「自力」の国。そういって悪ければ、つまり、もう少し踏み込めば

 自力の共和党、他力の民主党

ということであろうか。

 最近の米大統領選挙では、

 divided America(分裂するアメリカ)

という傾向が強まっている。アメリカの各州は、政治的には赤の共和党、青の民主党というように、都市部あるいは海岸沿いは「青」、これに対し、農村部や内陸部は「赤」、つまり共和党の地盤という色分けが、黒人大統領の登場で最近急速に2極化している。

 かつて奴隷制があった州かどうかで色分けされているといってもいいかもしれない。そして、それはだんだん、相互対話を不能にするほどまでにはっきりし始めている。

 41d6qkemtsl__bo2204203200_pisitbsti 2011年にアメリカを訪れた五木氏が、そんな政治地図など知るよしもないだろうが、なかなか言いえて妙、他力、自力の考え方ではあろう。一理はある。

 共和党のロムニー氏と民主党のオバマ氏が激烈に争った今回の大統領選挙は、

 自力と他力の争い

ともいえるような気がした。

 親鸞が1262年に没して、2011年は没後750回忌。

 親鸞が生きていれば、この選挙をどう見たであろうか。阿弥陀は、他力本願が勝利したと胸を張るだろうか。

 わざわざアメリカの人っ子ひとりいない湖のほとりにまで行って思索してきた五木さんには悪いが、その思索の旅は、二つの意味で、

 煩悩の旅だった

ような気がしてならない。

 一つは、オバマ大統領が再選されても、アメリカが他力の国になることはないだろうということ。強いアメリカの源泉が「自力」にあるとその歴史が教えてくれている。このことを国民自身がよく知っているからだ。

 そして、第二は、日本の仏教もまた今のままでは、世界共通の宗教として再生することはないだろうということ。他力の仏教自身があまりに他力を当てにしているからだ。他力とは、自律であることを忘れている。これでは世界宗教になどなれるはずもない。

 番組を見て、正直、そう感じたことを告白しておこう。

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