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「源氏物語」を読む  古典の日を前に

(2012.10.28)  科学・技術と社会についてのブログもいいが、たまには、日本の古典文学もいい。そんな思いで、この夏以来、1970年代の学生時代に買って積んどいた大長編、

 円地文子訳『源氏物語』(全10巻、新潮社)

を、書庫代わりになっている倉庫から取り出して夜長に読んでいる( 写真左 )。

 Image1163 さすがに学生時代と違って冒頭だけの桐壺源氏には終わらなかったが、今は、光源氏が傷心の極にある第3巻「明石源氏」まで読み進んだ。ようやく、文体にも、光源氏の人間関係にも、あらまし慣れてきた。円地さんの現代語訳のおかげで、ずいぶんと読みやすい。

 冒頭「いずれの御時にか」(現代語訳では、いつの御代のことであったか)と巧みにぼかして断っててはいるものの、当時の天皇家の一大スキャンダルを軸に、これほどまでも男と女の心の奥の奥を描いてみせた紫式部の才能は、そのテーマの独創性、注目度抜群の時事性とともに驚嘆に値すると感じている。これからの光源氏の復活と、その後の因果応報が楽しみだ。

  そんな日々だが、読書週間中の11月1日は、みんなでさまざまな分野の古典に親しむ

 古典の日

と法律で定められた。「紫式部日記」の1008年11月1日に相当するところに、「源氏物語」についての記述があり、これを記念した日らしい。祝日ではないが、今年から始まった。おそらく、京都市あたりが積極的に動いたのであろうが、定められたことの意義は大きいだろう。

 現代語訳に一大決心で取り組んでいた円地さんを、同じ屋根の下でまじかに見ていたのが、後に自らも、生涯最後の仕事との思いで、源氏物語の現代語訳に挑むことになる若き日の瀬戸内寂聴さんだった。

 具体的に、どんな思いで、瀬戸内さんが1990年代初めに現代語訳に取り組もうとしていたのか。ブログ子は、思わぬところから、それを知った。

 月刊誌「一個人」2012年11月号の特集=源氏物語入門。この中に、瀬戸内さんの当時の決意を記した手帳の写真が、愛用の文具類とともに公開されている( 写真下 )。

 本文には、この決意について何も触れていないのだが、ブログ子は、この小さな写真に写っている瀬戸内さんの小さな文字で書かれた直筆のメモ内容を、愛用の天眼鏡で〝解読〟してみた。もう20年も前の決意話であり、時効と言ってもいいだろうから、ここにそれを紹介しても、瀬戸内さんは、きっと笑って許してくれるだろう。

 こうだった。

 源氏を完成させる為には

 1 健康 散歩、ヨガ、気功

 2 規則をつくる 仕事時間を決める、休みとる(土、日)、徹夜しない

 3 仕事の整理 引き受けない

 4 義理をかく  誰が死んでも

 5 経済を引き締める 慎ましい生活

 6 最後の仕事と思う

     収入は講演 ?  何とかなる ( 気分転カン )

 この後に、「4000枚」と完訳原稿量のことが書かれている。手帳には、日割り計算の原稿量まで載っており、周到な計画を立てて挑んだことがわかる、また、生計面での有力なスポンサーはなかったこともうかがわれるなど、手帳は〝一級史料〟だろう。

 出版計画についても、平安京の

 「建都1200年に合わす」

と書かれている。

 Image1124 平安京遷都は794年だから、1994年に焦点をあわせ、「1992年11月」に執筆開始。94年には出版社に原稿を「出しはじめる」との予定だったらしい。「1995年完成」( 脱稿の意 )予定で、執筆開始から6年後の1998年に完訳が講談社から出版された。これは、紫式部の執筆期間とほぼ同じくらいの時間をかけたことになり、ともに、いかに大事業だったかがわかる。

 だから、よくぞ、1000年もの間、読み継がれ、書き写されて現代まで生き残ってきてくれたか、感謝せずにはいられない。

 古典というものの持つ重み、その現代語訳のありがたさを具体的に知らせてくれるメモ内容であったように思う。

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