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「ヒッグス」は粒子か 場の古典論 

(2012.09.04/09.08)   理論的には素粒子には質量がないはずなのに、なぜ現実の素粒子はみんな質量を持っているのか。

 Image9663 素粒子に質量を与えるべく、素粒子と相互作用するヒッグス場が存在するからである。そう喝破したのは、若きヒッグス博士だった。1964年秋、東京五輪前後のことである。そのヒッグス場が励起すると、ヒッグス粒子になるというわけである( 論文は米物理学会誌「PRL」)。

  このアイデアは、

  超伝導についての物性論から、電気抵抗ゼロの超伝導物質も、電磁気的な現象がからまると、抵抗を持つ

という事実に着目したものだった。つまり、

  素粒子についての場の量子論から、質量ゼロの素粒子も、ヒッグス場の相互作用がからまると、質量を持つ

というわけだ。

 場とは何か、ということをブログ子が初めて理解したのは、

 場の古典論

を学んだときだった。空間を上下、左右に結晶構造のように振動子(粒子)を並べ、その間をバネで結ぶ。ある振動子をたたくと、その振動が波となって上下左右に伝わって、空間全体が振動する。つまり、励起する。

 このとき、( 力学的連結調和 )振動子の数を無限に大きくしていくと、この振動子の動きを表す「場の古典論」の基礎方程式は、場の量子論という極微の世界の基礎方程式、つまりKG波動方程式に収斂する。

 大学でこのレポート課題が出題されたとき、その導出に成功した日のことを今でもよく覚えている( 注記 )。しかも、このように古典場の振動波を量子化すると、外場の影響、つまり相互作用は( 古典場の )粒子の質量項となり、素粒子の質量の起源は場との相互作用によって生じることを示唆していた。

 ヒッグス博士は、さきほどの超伝導でのアイデアをもとに、ヒッグス場という場の量子化で、素粒子に質量をもたせることに成功した。

 先日、NHKの科学番組「サイエンスZERO」で、ヒッグス粒子は、場である。その場が励起されると場は粒子のような性質を持つという解説をしていた。相互作用していない非励起状態では、磁場がそうであるように波となって広がっているだけで、粒子としては姿を現さないというわけだ。なかなか見事な紹介であったと感心した。

 場の古典論をやさしく説明するために、磁場を身近な「場」の実例として取り上げていた。

 ただ、6種類の基本粒子( 写真= 「GRAPHICATION」2012年181号、池内了氏記事「現代科学の見方・読み方」より)の質量がみんな異なる理由については、ヒッグス機構では今も説明できていない。素粒子の質量がバラバラで規則性がないのはなぜか、今も謎なのだという。

 これ以外にも、ここで述べた慣性質量と重力場での重力質量がなぜ厳密にいっちするのかというのも謎らしい。

 Image952 「ヒッグス」以後は、それらの謎を解く有力候補とも言われている超対称性理論にも今後注目が集まるようにも思う。

 さらには、重力とそのほかの相互作用を統一する大統一理論への模索も本格的に始まると言えるのではあるまいか。

 それはともかく、日常の世界とは本質的に異なる極微の世界を、日常の言葉で説明できるためには、説明する人がよくわかっていないとできない。この番組を拝見して、このことを痛感した。

( 写真下= 日経新聞2012年9月3日付朝刊「迫真」。発見、ヒッグス粒子 半世紀の夢 現実に 7月4日の世紀の発表前後の様子をドキュメント風にまとめている )

 注記

 この懐かしい演習問題は、次の文献にも見える。

 http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/handai-honor08/yr08-02-field-concept08.pdf  

 この文献には

 古典場の力学振動モデル

について、イラスト付きでわかりやすく詳述されており、ここからクライン-ゴードン( KG )基礎方程式が導出されている。今も大学の物理学科ではこの導出演習があることを知ったので、ここに紹介しておきたい。ブログ子は、この基礎方程式の導出については、40年以上前、一、二週間ほどかかってやっとできたことを告白しておこう。

 この解析的な導出により、ブログ子なりに極微の世界のイメージがどうにかできるようになったことを記憶している。

 蛇足。

 ヒッグス粒子予言論文については、

 http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2012072700004.html 

が面白い。ひょっとすると、この粒子の事実上の予言者は南部陽一郎氏かもしれないという記事であり、1964年8月31日前後の緊迫した優先権争いの微妙でデリケートな内情を伝えている。とすると、この粒子は「南部粒子」とも言えそうだ。

 もっとも、南部氏自身は、2012年7月12日付朝日新聞朝刊「科学欄」で

 「理論の数式を提唱したのはヒッグス博士だから、『ヒッグス粒子』と呼ぶのはきわめて自然だと思う」

とヒッグス氏の功績をたたえてはいる。理論の数式を提唱したのは彼だが、その理論の土台を提供したのは、そして、複数の粒子の存在を示唆したのは私といいたいともとれる発言である。

 この記事で南部氏は「めでたし、めでたしだ」と喜んではいるが、忖度するに、これほど反響が大きいと、ノーベル物理学賞をもう一個もらえたのに、と心は穏やかではあるまい。

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