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「心技体」の陸上男子100m ボルトの場合

(2012.08.25)  好事魔多し。ロンドン五輪のあとに、五輪の前に放送されたBS1のスポーツ・ドキュメンタリー

 世界最速の男、ウサイン・ボルト

というのを見て、つくづく、そう感じた。ものごとが順調すぎるときほど、ふと、魔がさす、思いもかけぬ失敗をする、まさかの事態が起きるという意味だ。

 陸上男子100mのボルト選手( ジャマイカ )は、2008年の北京五輪の金メダリスト。そして、2009年の世界陸上( ベルリン大会 )で、人類初の

 9秒58

の世界新記録で金メダル。実況アナウンサーの

 「また人類は速くなった」

との名言まで飛び出した大会だった。

 そして、2011年の世界陸上( 韓国テグ大会 )。スタートに苦手意識のあるボルト選手だったが、予選も準決勝も、おどろくほど見事なスタートで、最後は軽く流して決勝へ。順調な仕上がりに、金メダルは確実視されていた。本人はもちろん、冷静なコーチすら、そして多くがそう確信していただろう。

 だが、決勝で、本人すら予想しなかったフライングで一発で失格。「あり得ない」事態に試合、ボルト選手は直後半狂乱に陥ったらしい。

 番組で、このときのことを聞かれて、ボルト選手は

 「行け、との声が頭に鳴り響いた」

と語っている。修練に修練を積んできたが、最大の敵は自分だったと冷静に分析している。いわゆる油断から、あるいは過信から魔がさしたのであろう。あまりに順調だったので、集中力を欠いたのかもしれない。

 それでも、2012年のロンドン五輪の決勝では、スタートがわずかにほかの選手から遅れたものの、自信のある後半で巻き返し、結局、

 9秒63

で金メダルを獲得した。スタートの遅れには、おそらく1年前のテグ大会の悪夢が脳裏をよぎったことが影響していたのではないか。それでも、優勝したのだから、強靭な精神力である。

 カール・ルイス選手が、1991年の世界陸上( 東京大会 )で人類で初めて10秒00を切って、9秒86の世界新記録を出したときには、スポーツ科学の専門家は、9秒80前後が人類の限界だろうと予想した。しかし、その予測は、見事に外れた。今のボルト選手は、ゴールでルイス選手を2メートル以上引き離す計算になるのだ。

 今回のドキュメンタリーを見て思うことは、2020年までには、9秒50を切る日がきっと来るだろうということ。今のボルト選手をゴール近くで1メートルも引き離して優勝する。決して、それは荒唐無稽ではないような気がする。

 いや、このペースでいけば、9秒40を切る日が、ブログ子が生きている間にすら実現するかもしれないと思ったりもする。全盛期のルイス選手を4メートルも引き離して、ゴールする日だ。

 好事魔多しの格言を跳ね返し、選手が集中力を高めるなど、自分をいかにコントロールできるかにかかってくるのではないか。

 こうなると、100mは、もはや練習に耐える体力や素質、技術の勝負というよりも、つまりスポーツ科学の範疇というよりも、つまるところ精神力の強さが勝負を決める。 

 日本流で一言で言えば、100mは、「心技体」が三拍子そろわないと勝てない。

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