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アリバイづくりの「原発比率」意見聴取会

(2012.07.17)  将来の原発比率をどうするか。

 内閣府の国家戦略室や経済産業省などの政府は、国民的議論を呼びかけたはずなのに、その意見聴取会は、参加者が会場でボディチェックを受けたり、名古屋会場では意見発表者の中に〝個人の意見〟の披瀝を希望した地元電力会社の原子力部課長が含まれていたりと、とても真摯に国民的議論をしようという場とは思えない。

 課長の健気な〝勇気〟には敬意を表したいが、国民的議論がいつのまにか一方的な聴取にすり変わってしまった。これでは、混乱を招くだけであり、単にアリバイづくりを急いでいるだけだと指弾されても仕方がないだろう。

 将来(2030年)の原発比率について、冷静で、しかも大多数が納得できる国民的な議論がなぜ必要か。それは、単にエネルギー政策が将来の国の形を決める重要政策だからだけではない。

 仮に、この比率を減らした場合、その大部分、太陽光、風力などによる再生可能エネルギー発電が担わなければならないが、それには国民に今よりも重い負担を強いることになる。この転換に対する電気料金の追加的な負担に対する国民の納得が不可欠であるからだ。原発の比率を減らすことは、国民に負担の覚悟をしてもらうことにほかならない。

 具体的に言えば、今月から、水力を除く再生可能エネルギーの普及と促進を目的とした固定価格買取制度がスタートした。メガソーラーなど大規模な太陽光発電の場合、電力会社の買取価格は、発電コストより高めに設定され、1kWh当たり42円。

 この電力会社の負担を電気料金に転嫁する促進賦課金は、当初は月々100円程度(一般家庭)だが、普及が進めば、たとえば、現在の10倍に再生エネルギー発電が増えれば、当然、世帯の負担も10倍になり、月々1000円程度にもなる。その見返りとして、普及が進めば、原発比率は小さくできるというメリットがある。

 このように将来の原発比率の議論は、比率と表裏の関係にある固定価格買取制度の価格設定という国民の生活と密接に関係することから、包括的な検討が今求められている。

 しかも価格設定の論議には、これから10年、20年先の、たとえば太陽光発電の技術革新の定量的な分析が欠かせない。太陽光発電の発電コストは現在、1kWh当たり約25円だが、2020年には14円に下がり、さらに2030年には7円にまで下がるとの具体的な試算もある( 注記 )。普及が順調なら2020年代には、発電コストでは、再生エネルギーのほうが、原発より安くなるとの見方もある。

 さらに、原発比率の議論は、国際公約1990年比25%CO2削減という温暖化防止政策、あるいは使用済み核燃料の再処理方針を今後も堅持するかどうかなど核燃料サイクル政策の見直しにも深くかかわる。

 Image733 ここに国民的な議論を巻き起こすチャンスがある。急がば回れである。急げ、急げのアリバイづくりのような意見聴取会では、原発事故で国の原子力政策への国民の信頼が完全に失墜した今、

 「どのような結論に至ったとしても国民の不信は払しょくできないだろう」(6月18日付静岡新聞社説 = 写真 )。

 そのとおりであり、では、どうするか。将来の原発比率について意見集約の環境整備を訴えた同社説は

 現実的な答えを導くために国民投票を検討する手もある

と指摘、イタリアなど諸外国の事例を紹介している。有効な一案であろう。複数の重要政策がからんでおり、直接国民に判断を仰ぐのは理にかなっており、国民投票にかける価値は十分にある。

 具体的には、期限と達成目標、それぞれの利点と欠点を示した選択肢を国民が選ぶというわけだ。将来の原発比率の国民的議論を単なる「%」問題に矮小化してはならない。

 国民的な議論には、自民党政権時代の重要政策のたな卸しとリセットの意味合いがあり、関連政策の整合性を図る好機でもある。その決着は国民投票で決める。

 こうした意見集約の仕組みづくりは、険路ではあろうが、政権交代をかかげて国民の支持を勝ち取った民主党の当然果たすべき責務ですらあると思う。

 注記

 たとえば、独立行政法人科学技術振興機構「JSTnews」2012年7月号 特集2 「 明るい低炭素社会」への道筋を提案する ! 。低コスト化シナリオと太陽光発電の展開

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