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精神科医の憂うつ 学会が初の「処方」指針

(2012.07.31)  スーパー銭湯の湯上りで、生ビールを飲みながら、何気なく中日新聞を開くと、

 日本うつ病学会 安易な投薬に警鐘 初の指針

という短い記事(7月28日付= 写真上)が目にとまった。具体的には、指針では抗うつ薬の有効性や副作用の情報を盛り込み、軽症患者への安易な薬物療法に「慎重な判断が求められる」という形で警鐘を鳴らしているらしい。

 Image788_2 別にどうということもない記事のようにみえる。しかし、指針を出した背景には、世界、特にアメリカの精神科医の間をおおうある憂うつがあることに、ブログ子は気づいた。

 「抗うつ剤神話」の憂うつなジレンマ

という「ニューズウィーク日本版」(2010年3月10日号 = 写真下)の記事である。「うつは薬で治せる」と一般には信じられている。しかし、抗うつ剤の効果は、よほどの重症患者を除けば、偽薬(いわゆるプラシーボ)と大して変わらないというそんな最新研究(米国医師会報2010年1月号論文)が紹介されているのだ。

 具体的に、そしてわかりやすく言えば、抗うつ剤の効果の4分の3は、患者の思い込みと期待と希望の産物にすぎない偽薬効果だったというのだ。改善効果の大部分は、脳への直接的な薬理的な作用などではないというのだ。

 軽症患者の場合、小麦粉を固めたような薬効がない偽薬でも、精神科医が抗うつ剤として処方すれば、その暗示効果で本物の抗うつ剤と同様の効果があるらしい。逆に、本物を渡しても、これは気休めの偽薬ですと言えば、改善効果はたいていないのだそうだ。

 本物の抗うつ剤は、副作用のない偽薬と違って、神経伝達物質への働きかけを通じて脳に直接作用する分、副作用が出る場合がある。となると、飲むなら、偽薬のほうがいいとなる。

 Image793newsweek つまりは、抗うつ剤には治療効果はある。ただし、ただ同然の偽薬と同程度に。ただし、偽薬にはない副作用がある。精神科医や製薬業界にとっては、これは不都合な真実だろう。

 こうしたことが背景にあって、日本でも日本うつ病学会が指針を出して安易な投薬に初めて警鐘を鳴らしたのだろう。

 風邪を治すように、人の心が関わる病気を薬物で治そうという考え方には根本的に限界があることを精神科医は忘れてはなるまい。

 抗うつ剤は、もはや魔法の薬でも、万能薬でもない。

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