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書庫で泳ぐ〝生きた化石〟 渡部昇一的世界

(2012.07.27)  ロンドン五輪が始まった。熱き戦いの中、それとはまるで別世界の

 書庫という水槽の中で泳ぐ〝生きた化石〟のような人

に出会った。ベストセラー『知的生活の方法』の著作でも知られる英文学者の渡部昇一氏(上智大学名誉教授)である。雑誌「男の隠れ家」が、21世紀知的経済自由人の生き方と題して増刊号を出している。御歳何歳かは忘れたが、その代表として渡部氏の自慢の書庫生活を紹介している( 写真 )。

  Image785 内外の貴重な本の収集家としても知られていることは、かねてうわさには聞いていたが、それはそれは立派で、広々とした書庫に整然と並べられた自慢の書庫が公開されていた。たいした量でもないのに本の置き場に難渋しているブログ子も思わず、うらやましいとため息をもらしたほどだ。

  ところで、タイトルにもなっている「知的経済自由人」とは何か。パラパラ読んでみると、どうやら、

 お金や生活の心配から解放され、自分の好きなことをしながら、時間も自由に使える、そんな知的生活をしている人

をさすらしい。具体的には、進化論で知られるC.ダーウィンなどは、さしずめこれだろう。何のことはない、昔から使われている「悠々自適」のことだ( 注記 )。

 そんな生活をしていると自認する作家、本田健氏が、取材で得た知見から、知的経済自由人になるための「100冊」を増刊号で紹介している。

 理系出身のブログ子としては、どんなサイエンス教養書が紹介されているか、興味を持ったが、なんと、

 大ベストセラー『バカの壁』(新潮新書)

は取り入れられていた。しかし、科学や技術の本は一冊もない。金儲けの本ばかりが、それも通俗本ばかりなのだ。『バカの壁』も話題の書ではあっても、およそサイエンス教養書とはいいがたい。多くのベストセラーがそうであるように、数年で忘れ去られる雑書だ。

 渡部氏が愛してやまないイギリス社会では、お金に困らない貴族はもちろん、紳士などの教養人には基本的な科学知識を身につけることは必須要件。科学する心を養う教養書が一冊もないというのは、いかにもずさんだ。

 そして、ふと思った。あの広大な、そしてりっぱな蔵書を収蔵する渡部書斎にも、科学書は一冊もないのではないかと不安になった。事実とすれば、知的ディレッタントとまでは言わないものの、経済自由人であることは間違いないものの、知的とはとてもいえないと、負け惜しみもあって放言しておこう。 

 とはいえ、ただ、ひとつ、これだけの書庫が、今話題の首都圏直下型地震で一夜にして灰燼に帰することのないよう、耐震、耐火など渡部氏にはしっかり管理してほしい。また、ご逝去後も保存対策を怠ってはなるまい。どこかの大学で管理してほしいような立派な蔵書のような気もする。

 注記

 それでは、ブログ子はどうか。使えるお金が少ないので「汲々」の毎日。しかし、自由な時間はたっぷりある「自適」の生活。とても生きた化石のような悠々たる生活とはいかない。せいぜいが「汲々自適」だと自慢しておこう。

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