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素粒子は粒子か ?    「ヒッグス」発見以後

Image781 (2012.07.30)  ものに質量を与えるとされるヒッグス粒子の発見からまもなく1か月がたつが、「日経 サイエンス」9月号が、この粒子について特集を組んでいる ( 写真 )。

 素粒子の理論分野でノーベル物理学賞を与えられた小林誠さんや、益川敏英さんが編集部インタビューに応じ、発見の意義や今後の理論研究の展開について語っているのが、興味を引いた。

 この粒子の発見の決め手は、理論的に予想される粒子のいくつかある崩壊パターンに実験結果が合致し、かつ、その質量は125GeV付近にある確率がほぼ100%に近かったことだ。小林さんは、これについて

 「実験結果を素直に解釈すれば、今回の実験でヒッグス粒子が見つかったと考えるのが自然だ」

という表現で成果を高く評価している。残された最後の粒子の発見は「一種の完結」というわけだ。

 問題なのは、当初予想されていた質量140GeVではなく、なぜ125GeVだったのかという点だ。このズレから、ひょっとすると、発見されたのは、いくつかあるヒッグス粒子の中のひとつかもしれないという。ヒッグス理論では、ヒッグス粒子は一つであると証明していない。だから、ほかの基本粒子と同様、3種類(世代)あってもおかしくないというわけだ。

 それと、もうひとつ、質量を与えるヒッグス粒子そのものの質量がなぜ125GeVなのかという点だ。ヒッグス理論ではこれは説明できない。

  こうしたことから、発見に至ったデータをもとに、質量を与えるヒッグス機構を詳しく調べると、

 新たな理論の入り口

に至るのではないかと話す。つまり、単に45年前に予測された粒子が今見つかったというだけでなく、突破口(ブレイクスルー)になるということだ。

 益川さんも、

「 (1980年代以降) 30年間のこの理論の無風状態に新たな展開が期待できる」

と話す。たとえば、標準理論にある多くの任意パラメーターの確定、また、なぜそのような値になっているのか、さらには基本粒子の質量にはなぜ規則性がなく、ばらばらなのか-といったことが、今回の実験結果の先に見えてくるのではないかと期待を示した。

 Dsc00249 その先とは、ひも理論、超対称性理論などのことを指しているのだろう。今回の新粒子は、こうした最近の理論によって説明される可能性が高いと益川さんは、インタビューで語っている。

 これらの記事を読んで、

 〝素粒子〟は、果たして粒子か ?

という南部陽一郎さんが行ったある講演(1985年4月、東北大学理学部。 注記 )のタイトルを思い出した。素粒子は〝粒子〟ではなく、閉じたひも、つまり、ごく小さい輪ゴムのようなものであるという理論である。

 ここまでくると、実証性が求められる物理学も数学的、抽象的になりすぎて、とても、実験にかかるまでにはまだまだ遠い道のりだろう。

 注記

 南部陽一郎『素粒子論の発展』(岩波書店、2009)  「〝素粒子〟は粒子か」

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