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原発事故調報告、八つ当たりの日経「社説」

(2012.07.25)  4つの原発事故調の最終報告書が出揃ったので、7月24日付朝刊各紙の社説がどんなことを主張しているか、主張のポイントとなる主見出しを中心に、拾ってみた。

 Image775_2 経済紙の日経新聞は経団連の〝広報部〟的な存在であり、経団連の重要メンバーは事故を起こした東電をはじめ全国の電力会社なのだから、まず、日経新聞を拝見した。案の定、歯切れが悪く、論説委員も書くにあたって、神経をすり減らしたのだろう、

 「物足りない原発事故調報告」(=7月24日付日経朝刊)

と苦しい主張をしている ( 写真 )。しかも、第一社説(オスプレイ問題)の下に、重要度が少し落ちる第二社説として掲載していた。その気持ちはわかるが、東電への細やかな配慮ではある。

 それはともかく、八つ当たりとはこうだ。

 津波が来る前に地震の揺れによる重大な損傷が原発にあったかどうかということは争点としては重要だ。この点について政府事故調は大きな損傷はなかったと考えるのが自然との表現で、損傷の可能性を一応否定しながらも、断定を避けた。これに対して社説は「これでは事故調の教訓を原発再稼働の判断などに役立てるのは難しい」と腹を立てている。断定してくれれば、原発の地震対策は機能したことになり、再稼働に弾みがついたのにと悔しさがにじんでいる。

 その無念さが、政府事故調の委員長談話に〝雑言〟を吐いたり、その報告書内容についても取り立てて目新しいものがないなどとけなしたりする原因につながったようにみえる。平たく言えば、腹立ちまぎれの八つ当たり社説である。

  面白いのは、第二社説として書かれている中日新聞社説。津波が来る前に地震によって原発が重大な損傷を受けたかどうか、政府事故調は、東電の社内事故調と同様、一応否定したのに対し、国会事故調は損傷の可能性を否定できないとした点に注目、「国会が率先して解明を」と踏み込んだ。正鵠を射た指摘だ。

 産経新聞は、東電など関係者を国会で証人喚問するなど、4つの報告書を「責任追及の出発点にせよ」と話を一歩先に進めている。東電にとっては、もっとも厳しい社説だろう。しかし、その前に、まずそれぞれの報告書の総括結果を踏まえて、そこから主見出しを取るのが順序ではないか。

 朝日新聞の社説は「これで終わらせるな」と書き、毎日新聞も大型社説にして「原因究明は終わらない」と主張している。ともに、検証の継続のため、新たな調査委員会の設置を提案している。内容は大同小異で、この種の社説の定石どおりの無難な主張に終始している。

 地元紙、静岡新聞は、政府は「残る疑問の徹底解明を」と、これまた型通りの主張。残る疑問とは、放射能汚染予測データの公表遅れが避難誘導にどのような影響を与えたかの評価が、政府事故調と国会のそれとで見解が分かれた点などだ。

 最後に、大型社説を組んだ読売新聞は

 「原発の安全向上に教訓生かせ」

とし、脇見出しで「想定外に備える危機対策を」としている。当たり前すぎて、そして陳腐すぎて、何も言っていないのに等しい。東電との距離、原発との距離が社内で決まっていないらしいことがうかがわれる。このことをさらけ出した解説的な社説との印象が強い。事実上、主張のない大型社説である。

 ブログ子は、中日新聞の社説を評価したい。ほぼ同意見だ。

 もうひとつ、津波による全電源喪失後、建屋が水素爆発したほかのどの号機よりも圧倒的な量の放射性物質が、なぜ水素爆発しなかった2号機から外気に放出されたのか。ルートやメカニズムなど、この謎の解決はぜひとも究明しなければならない。どの報告書もこの解明があいまいだったり、あえて踏み込みを控えている。この点を明確に指摘した社説がなかったのは残念だ。原子炉の主蒸気逃し弁(SR弁)の開閉と計測された放射線量の増減の相関関係など、専門家の今後の再検証に期待する。

 最後に、どの社説も、現時点では、東電に重大な過失があったとして、当然払うべき注意義務を怠った場合の業務上過失致死傷罪という刑事責任を問う声はなかった。ブログ子にとっては、意外な気がした。国民世論が高まれば、過失と傷害との因果関係を広くとらえれば、これまでの情報だけでも十分に問えると思う。告訴・告発を受け、それらを受理するかどうか見極めている検察の今後の動きを注視したい。

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