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それからの「ザ・コーヴ」 水銀中毒は?

(2012.06.01)  もう、ほとんどの人は忘れてしまっただろう。今から3年前の2009年、アメリカで「ザ・コーヴ」という日本のイルカ漁をテーマとした映画が上映されたことを。それがアカデミー賞(長編ドキュメンタリー部門)を受賞したことを。そして、2010年、すったもんだの挙句、日本でも上映されて

 誰も知らなかったイルカ漁と捕鯨の問題を描く今年最大の問題作

として、話題になったことを( 写真 )。

 Image579 ブログ子も、このとき環境保護か、それとも食文化 ? と話題になったこともあり、浜松市の小さな単館系映画館に見に行ったことを思い出す。食文化として、今も鯨やイルカを食べる習慣は日本に残っているが、拝見して、伝統漁法であっても残虐な殺し方はやめたほうがいいとの感想を持った。

 それよりも、加害者として映画で槍玉に上がった和歌山県太地町の人々、特に漁師のメチル水銀中毒の実態のほうが、よほど心配だと思ったのを今も覚えている。鯨類を食べないほかの地域の人々に比べて、太地町の場合、食物連鎖の頂点にいる鯨やイルカを食べる機会が多いせいか、毛髪に含まれるメチル水銀の含有濃度が4倍も高いことがわかっていたからだ。

 5月31日付中日新聞によると、国立水俣病総合研究センターが、2010年に公表した初回調査のその後の追跡調査の結果、(メチル)水銀による健康被害は見られないと発表した。

 追跡調査によると、水銀濃度が比較的に高かった200人近い住民の平均は

 15.1ppm ( ppm = 100万分の1。1ppmとは、毛髪1キログラムに対して、1mgの水銀が含まれる )

と、日本人の平均2.5ppmの約6倍。世界保健機関(WHO)の安全基準の50ppmを超える住民は、約100ppmを最高に12人だったが、いずれの住民の検診でも、運動失調、指先の感覚麻痺といったこの中毒特有の健康被害はなかったという。

  一安心とはいえ、神経障害を引き起こす原因物質のメチル水銀は、悲惨な水俣病の事例でもわかるように、残留性が強い。また、胎児性水俣病のように妊娠を通じて、被害が親から子に拡大する。

 記事によると、センター所長は、検診結果を受け「これまで通り食べてもらって全く問題ない」と安全宣言したという。強い残留性と胎児性水俣病のことを考慮すると、そして、ごく一部であるとはいえ、国際基準をこえた住民がいたことでもあり、もっと慎重であるべきである。手放しの安全宣言は、言い過ぎではないか。

 メチル水銀による環境汚染は、過去の出来事ではない。ブラジルのアマゾン川でも、また、カナダでも問題になっている〝現代病〟である。おそらく、成長著しい中国やインドでも今後大きな問題になるであろう。

 高度経済成長期の蔭で苦い経験をした日本は、水銀汚染については、より敏感であってほしい。環境保護か食文化かの二項対立をこえて、映画は日本に体験者としての謙虚さを求めたものであると思う。

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