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E.シートンは進化論をどう受け取ったか 

(2012.06.11)  先日5月27日付のこの欄で、

 ファーブルは進化論になぜ否定的だったか

と書いた。意外にも2、3人の方から感想をいただいた。そのなかに、E.シートンはダーウィン進化論をどう受け止めていたのか、という質問をいただいた。シートンは、より人間に近い鳥やほ乳類の観察を生涯続けたナチュラリストであり、画家であり、また『シートン動物記』など一連の動物物語の作家でもあったから、至極当然な質問だった( 注記 ) 。

  シートンは、1860年、ダーウィンの『種の起源』発行の翌年生まれ。『ファーブル昆虫記』全10巻が完成した1910年には50歳になっている。この間、最初の動物物語集『私が知っている野生動物』(1898年)を刊行した。また、1925-1927年には、物語の裏づけとなる資料集ともいえる動物学の大著『狩猟獣の生活』(全4巻)も出版している。このことからみて、当然、ダーウィンやファーブルの強い影響を受けていたであろう。

  シートン協会に所属する翻訳家、今泉吉晴氏のご教示(私信)によると、結論を先に言えば

  シートンは進化論に肯定的であった

といえる。

  以下、その理由を述べてみたい(文責はブログ子。「」内は今泉氏私信)。

  まず、ナチュラリストとして、研究者としての観察結果からの考察。主として鳥やほ乳類を観察し続けていたシートンは「人と動物とは、欲求と感覚のほとんどすべてを共有しており、違いは程度の差に過ぎない」と結論付けた。 

  これはファーブルの昆虫の本能行動の観察とは大きく違っており、シートンは神による「創造説ではなく、進化論に立脚していたと見なして99%間違いない」。

  次に、動物物語の内容やストーリー展開からの分析。シートンは、動物記のほとんどで、動物の子どもの成長過程をダーウィンの言う「最適者の生存」の考え方で描いている。「生息地によってちがう環境条件に適応しながら育つ個性的な動物の生き様」を描いた。つまり、「動物の子どもの個性の形成を方向付ける要因は「最適者の生存」とみた」。

   シートンは、進化論を「論」にとどめるだけでなく、それを足がかりに、より積極的に人間と対等に、絶滅に追いやられる動物の生存権すら主張していたと今泉氏は教えてくれた。

 注記

  質問には、このほか、オーストリアのG.メンデルについては、どうかというお便りもあった。植物学者でもあった彼は有名なメンデルの3法則(論文は進化論発刊6年後の1865年)の発見者であり、晩年は修道院長。1822年生まれで、1884年没。

  種は変化し、その変化は親から子へ生殖を通じて種内に広がっていくとする進化論が成り立つためには、当然、遺伝の法則があるはずだ。ダーウィン自身もその法則や仕組みを熱心に考察、探求したが、ついに見出すことには成功しなかった。

  メンデルはダーウィンの話題になっていた進化論を当然知っており、内心では共感したであろう。つまり、肯定した。しかし、ダーウィンの国、イギリスの国教会はローマ教皇庁とは別の新教であるからいいものの、メンデルの所属する旧教の総本山、ローマ教皇庁が進化論を激しく非難していた。このことから、教皇庁支配下の修道士、修道院長だったメンデルは、共感はしても表立って支持するまでには至らなかった。これがおおよその真相であろう。

  つまり、メンデルは、ダーウィンが受け取れば小躍りして喜ぶことがわかっていながら、自分の「雑種植物の研究」(1865年)を意図的に、ダーウィンに送らなかったことがうかがえる。この論文が学界でさほど注目を集めなかったことも、メンデルにとってはあるいは〝幸い〟したかもしれない。

 一方、ダーウィンは、当時無名のメンデルの研究は知らなかったらしい。事実、メンデルと意見交換した様子はない(ダーウィンとファーブルとは互いに意見交換していた)。

 これは科学の裏面史といえば、そういえるであろう。科学といえども、それは人間がつづるものである以上、データの捏造もあるだろうし、ときには保身もある。「それでも地球は動く」と堂々信念を貫くことは容易ではない。

 これは何も19世紀だけの話ではない。たとえば、20世紀に入っても、DNA構造の発見、いわゆる「二重らせん」の先陣争い(1953年前後)をめぐる熾烈かつ醜いスキャンダルもまたしかりなのだ。

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