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無理のない脱原発の道 「40年廃炉」の設計基準を守れ

(2012.06.18)  焦点となっていた原子力規制を担う原子力規制委員会を新設する法案がようやくまとまった。規制委員会は、9月までに発足する見通しという。

 問題は、土壇場の与野の修正協議で、

 原発を稼働から40年で廃炉にする条文の例外規定が、自民党の要求で、規制委員会発足直後に「速やかに」修正する

となったことだ。修正は規制委に委ねられることになってはいるものの、それを決める委員の人事には国会の同意が必要であるところから、自民党の主張、つまり、電力業界の意向が反映される可能性は高い。

 どう修正されるのか。規制委員会設置法案の条文では

 「原子炉を運転する期間を、最初に使用前検査に合格した日から40年とする。ただし、安全性を確保するための基準に適合していると認めるときに限り、20年を超えない期間を限度として1回に限り延長の認可をすることができる」

となっている。この「20年を超えない期間を限度として1回に限り」という歯止めの文言が削除され、40年という本則が骨抜きにされる状況が出てきたのだ。つまり、適合している限り、延長の認可をすることができるとなるのだ。これでは、現行制度とまったく同じことになってしまう。事実上、「40年廃炉」の本則は空文化する。

 Image6503 40年というのは、これまでの原発設計で設定された寿命。実際には安全上、これ以上使用しても余裕を持つようにはなってはいるものの、安全性の根幹にかかわる技術上の原則は守るべきであり、政治の駆け引きにすべきではない。

  この原則が争点になっているのには、1970年代に建設された古い原発がそろそろ40年立つことから、電力会社にとっては深刻な問題になっているという事情がある( 注記 )。この事情は逆に言えば、ひとつのチャンスでもある。40年廃炉の原則堅持は、脱原発の自然な実現方策でもあるからだ。

  6月15日付朝日新聞「社説」 ( 写真 ) は、

 「40年で閉めていけば、新増設がない限り、原発の(供給電力に占める)比率は2030年に15%に下がり、50年にはゼロになる。もっとも緩やかな減らし方ともいえる。」

と書いている。その通りである( 注記2 )。現在の依存比率が約26%だから、合理的で無理のない、また、国民にもわかりやすい脱原発の道である。

 もう一つ、脱原発の道で考えてほしいのは、今回の原発事故でもわかったように、

原発立地の密集は、いったん事故が起こると隣接原発も制御不能になる可能性が高く、国を滅ぼす

ということだ。廃炉の順番をどのように決めるかの原則は、福井県若狭地方のような原発密集地を優先的に間引きし、原発密集度を緩和する原則を導入することであろう。あの狭い地域に原発が、「もんじゅ」「ふげん」を含めて15基も集中しているのは異常である。地元住民の安全を確保するためにも、この集中の緩和の原則は欠かせないのではないか。

  規制委員会は、発足と同時に、難問をかかえることになる。脱原発へ着実に踏み出してほしいというのが国民大多数の思いであろう。このことを強く受け止めた判断をしてほしい。業界からも、政治からも独立した規制委の存在意義が試される試金石、それが「40年廃炉」原則の堅持である。

  注記

 たとえば、原発が集中する福井県若狭地方の

 美浜原発(関西電力、1号機)は営業運転開始から今年で41年。2号機は39年。

 敦賀原発(日本原子力発電、1号機)は42年。

 高浜原発(関西電力、1号機)は37年、2号機は36年。

 今回事故を起こした福島第一原発の4基は、1号機の41年を先頭に、いずれも営業運転から30年以上立っている古い原発。事故で廃炉が決まったのも当然だろう。残った5号機(34年)、6号機(32年)も、設計上はそろそろ廃炉を考えてもおかしくないほど古い。

  つまり、今、「40年廃炉」が法律で明文化されると、事故を起こし、すでに廃炉が決まっている福島第一原発の4基を除いた全国50基の原発のうち、35年以上営業運転している8基(うち40年以上は2基)が直ちに廃炉問題に直面する。痛手は若狭地方に原発を設置している関西電力において特に深刻となる。廃炉で営業利益がでないばかりか、廃炉処理に1基当たり少なくとも数百億円と見積もられている莫大な処分コストと長い時間と多くの人手がかかる。

 これでは、関西電力をはじめ電力業界がこぞって明日はわが身とばかり、「40年廃炉」に抵抗するのも無理はない。

  注記2

  たとえば、ドイツのメルケル政権は、福島原発事故を受けて、

 10年後の2022年までに、全原発17基を順次廃止する脱原発の政策

をすでに決めている。これに比べれば、日本の50基を40年で廃止する方策は、原発数が3倍ではあるものの、ペースは緩やかであるといえる。

 ただ、このエネルギー政策の大転換は、ドイツでも壮大な〝実験〟と受け取られており、着実に実行できるかどうか、危ぶむ声も強い。というのは、すでに再生エネルギーの供給が原発を抜いて全体の2割を超えたのに、決定から1年がたった今も、その基盤となる電力アウトバーンなど送電網整備計画や実現までの工程表は策定できていない。ようやく送電網建設に伴う住民同意など難問を解決するための手続き法案が共同通信によると、今年中にまとまりりそうだという。

 ドイツのように、数社の送電会社があり、電力分野で競争原理が働きやすい環境がある程度整っている国ですら課題は山積している。

 いずれにしても 来年秋のドイツ総選挙の行方がカギ。ドイツ経済がこのところ好調であることから、メルケル首相が三期連続、首相に選出され、脱原発に今後強力に指導力を発揮するとの見方もあるが、EU経済危機もあり、そうなるかどうかは予断を許さない。

  補遺 浜岡原発について 2012年6月27日

 中部電力の株主総会は、脱原発(つまり浜岡原発の廃炉)提案の議案を否決した。ただ、これまでの原発推進の風向きは、変わりはじめている。

 つまり、原発が立地する御前崎市は、従来の原発推進の姿勢は変えていないものの、10-20キロ圏内にある隣接の牧之原市(西原市長)は、これまでの方針を180度転換。明確に廃炉提案の議案に賛成した。これには、議会が「浜岡原発の永久停止」をすでに決議しているという事情がある。

 事故を起こせば避難対象地域となる30キロ圏の外、つまり原発から50キロ離れている静岡市(田辺市長)は、脱原発廃炉議案に賛成も反対もしない、いわば保留の「白票」を投じている。田辺市長によると、この夏にまとまる国のエネルギー政策の見直しの結果を精査して見極める。牧之原市よりは持ち株のはるかに多い(それでも全体の株式数の0.6%)を所有している静岡市にも、これまでの原発推進一辺倒の態度から微妙に変化しはじめていることがうかがえる。 

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