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不滅のプルトニウム発電 官僚たちの35年

(2012.06.18)  国の原子力委員会が、原発から出る使用済み核燃料を再処理し再び利用するのか、それとも直接地下に埋めて捨ててしまうのか、国の基本政策の核燃料サイクルの見直しに小委員会を設けて、本格的な検討に入っている。

 資源小国の日本のエネルギー政策の切り札として登場した高速増殖炉(FBR)開発によるプルトニウム発電計画。軽水炉でできるプルトニウムを再処理工場で再処理し、高速増殖炉で再利用するという国の核サイクル政策は、1978年の方針決定から35年、いまや技術的にも経済性の面からも完全に破たんしたといえるだろう。

 NHKのETV特集「〝不滅〟のプロジェクト 核燃料サイクルの道程」(5月17日夜放送)

をみて、あらためてそう思った。この番組では、元科学技術庁の管理課に在籍していた伊原義徳さんが保存していた非公式な

 原子力政策研究会(島村武久・元同庁政策課長の私的な研究会)

の録音テープをもとに構成されていた。資源小国の切り札として、どのような経緯で「再処理」方針が決定されていったか、この方針に対するアメリカの横やりとその打開事情、さらには1990年代に軽水炉から高速増殖炉開発に本格的に政策の重点を移していったその間の事情、これまでほとんど表に出ることのなかった関係者の生々しい〝証言〟が紹介されていた( 注記 )。

 小委員会では、再処理で取り出したプルトニウムを核燃料とする高速増殖炉の開発と実用化の中止も含めて検討される。その実験炉については、1977年に「常陽」が臨界に成功している。それに基づいた原型炉については、1980年に「もんじゅ」建設が始まり、1995年8月に臨界にこぎつけたものの、直後(同年12月)、ナトリウム漏れ事故を起こす。以後今日に至るまで一度も本格稼働はしていない。実用化には、原型炉に次いで経済性を重視した実証炉の建設、さらには安全性の確保と運転のしやすさを重視した商用炉の建設が欠かせないが、いずれも技術的な見通しすら現在まったく立っていない。

  「常陽」臨界成功から35年、一貫して国の長期計画では再処理し、取り出したプルトニウムをリサイクルするという基本は変わっていない。取り出した後に残る高レベル放射性廃棄物については、電力会社の責任において事業主体を設立し、地下に埋設することが法律で定められている。しかし、事業主体は決まったものの、その最終処分場となる国内の場所探しは、まったく進んでいない。

  再処理方針の決定から35年の歳月と約1兆円の国費をかけて挑んだ〝夢〟の高速増殖炉開発計画が残したものは、半減期約24000年の数百トンもの行き場のない〝厄介なお荷物〟プルトニウムと、一度も本格稼働しなかった原型炉「もんじゅ」だけだった。

  燃やせば燃やすほど燃料が増えるというような、うまい話には落とし穴がある。このことを思い知らされた官僚たちの「いばらの35年」であったといえそうだ。

   そして現在。発電もしないのに、「もんじゅ」を維持するのに必要な費用は、年間約200億円。いつ生命維持装置を外すか。論議が始まった小委員会には、さまざまな思惑から、その決断を先延ばししようという動きもあるようだ。費用の面では、行くのも地獄だが、撤退するのも地獄だろう。決められない政治が、〝脳死状態〟の再処理工場+高速増殖炉開発プロジェクトを放置させることにつながってはなるまい。

 これからの正念場、いわば国民の「地獄の10年」をしっかり見つめていきたい。そんな思いを抱かせるETV特集であった。

 注記

 この私的な研究会が、原型炉「もんじゅ」の建設が始まった1985年に同庁内に設けられたことからもわかるが、研究会の目的は

 次の実証炉構想など、核燃料サイクル政策の推進方策

について、各電力会社と情報交換することだったらしい。この目的が大きく狂い出したのは、

 もんじゅのナトリウム漏れ事故(1995年12月)

であったことは間違いない。このとき、資源小国、日本の救世主とされたプルトニウム発電の計画は、事実上頓挫する。

 事故原因は、ナトリウムの温度を検出するほんの小さな温度計の設計ミス。これが致命傷となった。きちんとした検査対象ですらなかった部品がプルトニウム発電の息の根を止めたといえる。

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