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知っているようで 年間空間線量率って何 ?

(2012.04.25)  いまさら人には聞けない。しかし知っているようでよくは知らない。日常、非常にしばしば出てくるので、かえって堂々と聞くのは恥ずかしい。誰にもそんな言葉が一つや二つはある。ブログ子にも、もちろんある。最近の新聞で言えば、

 年間空間線量率の予測図

というやつだ。4月23日付毎日新聞1面に6枚ものカラー図付で

 高線量域 20年後も 政府、初の予測値図公表

として、

 政府は22日、東京電力福島第1原発事故で福島県内に放出された放射性物質を巡り、20年後までの年間空間線量率の予測図を発表した( 写真 )

ことを伝えている。政府(経済産業省)が長期にわたる将来予測図を示したのは初めてらしい。昨年秋に航空機でモニタリングした結果をもとに理論的にはじき出したマップだ。放射性物質の除染がないとした場合の予測という。

 Image513 それによると、原発が立地する大熊町、浪江では20年後も年間積算で被ばく線量が50-100ミリシーベルトと高く、避難所から帰宅して元の生活に戻ることが許されない地域が残る。

 年間空間線量率の線量というのは放射線量の略だが、その放射線の中身とは具体的に何か。また年間に換算して、つまり

 年率の空間線量

とは、具体的にどのように計算するのか。地面に降り積もった放射性物質の量と空間線量率の関係はどうなっているか。また、この外部被爆において、航空機の高さ、つまり、測定地点の高さと空間線量率との関係はどうなっているのか。

 知っているようで、案外、漠然としか、わかっていないことに、ブログ子は気づいた。

 この空間線量率ということばは、少なくとも今後20年間は新聞記事などでしばしば登場する。したがって、しっかり理解しておきたい。そう感じた。

 ここでいう放射性物質とは、原子炉から〝ベント〟(排気)された放射性の、いわゆる核分裂生成物のことである。中性子を媒介にウラン235の核分裂の連鎖反応で生じたさまざまな不安定な原子核ができる。それが、半減期と称する時間間隔で安定な原子核に落ち着くとき、その不安定な原子核は

 カンマ線という人体に有害な高エネルギーの光

を放射する。この量を測るときに使われるのが

 空間線量率

という考え方であり、空間線量率計である。

 ただ、注意したいのは、空間といっても、空中を飛び交うガンマ線というよりも、主に地表に降り積もったものを計器で計るのであり、いわゆる外部被ばくの目安となる。

 事故直後には、半減期の短いキセノン(半減期約5日)や人体に有害なヨウ素131(半減期8日)、ヨウ素135(半減期6.6時間)が風にのって上空に漂い、そこから出るガンマ線が測定に引っかかった。

 しかし、その後は降雨などにより、地表に降り積もった半減期の比較的に長い放射性物質、たとえばセシウム134(半減期約2.1年)、セシウム137(半減期約30年)、ストロンチウム90(半減期約29年)からのガンマ線が主なものだろう。つまり、事故から一年後の現在では、こうした半減期の比較的長い放射性物質からのガンマ線が主なものだ。

  これが、件の予測図の今後20年にわたる放射性物質の正体なのだ。原子炉からの放射性廃棄物の中間貯蔵がおおむね50年に設定されているのも、こうした物質からの放射が十分低くなるまでという意味合いがあろう。

 風にのってやってきたウラン235の核分裂生成物には、さらに半減期の長いもの、たとえばテクネチウム99(半減期21万年)、ジルコニウム93(半減期約150万年)、ヨウ素129(半減期約1600万年)などは、ガンマ線を出しながらゆっくりと崩壊し、安定な原子核に落ち着く。

 これらは、高レベル放射性廃棄物処理で、「10万年後の安全」を脅かすものの正体なのだ。ここまでの半減期となると、半永久的に安定している地下への埋設が必要になる。

 それでは、どのように空間線量率を具体的に計算するのか。

 わかりやすい説明をネットでさがした。その中では藤原隆男さん(京都市立芸術大学、天体物理学)の

 空間線量率の計算

というのが、もっともわかりやすい。放射線学の専門家ではないだけに、原理から説き起こし、しかも高校数学程度の積分の知識で解説していたのには、感心した。「空間線量の計算」でネット検索すると、出てくるので、計算法に挑戦してみてほしい。

 この計算結果から、どのように除染したらいいのか、最後にいろいろ議論しているので参考になる。

 さらに、新聞報道などで頻繁に出てくる

 面積1平方メートルあたりのベクレル(Bq/平方メートル)から時間にして1時間あたりのシーベルト(S/h)への換算式は

  ε=2.1×10(-12乗)×p [ Sv/h ]

となる。ε[ Sv/h ]とは、人体への1時間あたりの吸収線量率。 p[ Bq/平方メートル ]とは、単位面積(ここでは1平方メートル)に含まれる放射性物質から1秒間あたりに出てくるガンマ線の個数。

 たとえば、p=10(+6乗)のとき、つまり、1平方メートルあたり100ベクレルのとき、ε=2.1×10

(-6乗) [ Sv/h ]=2.1μSv/h

となる。

 こういう知識があると、あるいは藤原氏の計算式を理解すると、毎日のように新聞に掲載されている

 大気中の環境放射線量(都道府県別、μSv/h)の表

の読み方も深くなる。毎日新聞には、

 文部科学省発表で、高さ1.5-39.4メートルのモニタリングポストの測定値から推算した高さ1メートルでの値

が載っている。高さ補正がなぜ必要か。藤原さんの計算論考ではていねいに説明されている。

 少しむずかしい話になったが、藤原氏の論考は、こうした点で非常に参考になる。

 少なくとも、科学ジャーナリズムに関わる人、あるいは新聞社の科学記者には必須の基礎知識であろう。この際、逃げないで高校数学や高校物理を十分におさらいしておきたい。

 最後に私事だが、ブログ子の大学院時代の仲間にこんな優秀な人材がいたことをあらためて今、感じている。 

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