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心配を裏切らない人 鳩山由紀夫氏の真骨頂

(2012.04.10)  久しぶりに、鳩山由紀夫氏が話題になっている。同氏は今は、民主党の外交・安全保障問題の最高顧問。4月10日付読売新聞1面下「編集手帳」は、

 イラン大統領府の発表によれば、鳩山由紀夫元首相が大統領との会談で国際原子力機関(IAEA)を批判し、核開発を進めるイラン寄りの発言をしたという

点を取り上げている。3年前、オバマ大統領との信頼関係をぶち壊した事例や、沖縄県の米軍普天間基地問題で「最低でも(移転先は)県外」と発言し、日米同盟を揺るがしたことも念頭にあったのだろう、コラムの最後で、

 かくも毎度毎度、「心配を裏切らない」人もめずらしい

とこき下ろしている。それでも足らないのか、同日付社説でも、とうとう

 「鳩山氏は、能力的にも性格的にも、外交に関与してはならない政治家だ」

と決めつけた。よほど腹にすえかねたのだろう。ブログ子も、この社説を支持したい。

 民主党支持者も含めて、たいていの国民は

 案の定、しでかしたか

という感想を持ったのではないか。同日付読売新聞には「軽すぎるなあ-」(すずきたける)との政治一コマ漫画まで掲載されており、(社説に比べて、ずいぶん穏やかではあるが)皮肉っている(写真)。宇宙人うんぬんでは、すまされない事態であろう。

 Photo 問題は、イランはこうなることを十分予測して、意図的に会談に応じたのだろうということだ。

 だとすると、会談の様子を録音されていた可能性があり、発言の真偽、真意をめぐる回のドタバタは今後、さらに日本とイランの間でこじれる可能性がある。火種が残ったのが、なんとも心配だ。

 というのは、鳩山氏の発言の具体的な内容というのは、大統領府の発表によると

 「IAEAがイランを含む特定の国に対し、二重基準的な対応をしているのは不公平だ」

として、IAEAを批判したらしいからだ。これはまさに、イラン側が終始これまで主張してきたことなのだ。イラン側から言えば、してやったりの発言だったわけだ。

 わかりやすく言えば、イランの宗教的な〝天敵〟イスラエルを支持するアメリカなどの先進国は、二枚舌でイランを差別しているということだろう。 こうした二枚舌については、国際社会では公知の事実であり、いまさら鳩山氏に指摘されるまでもないことだが、アメリカの同盟国、イラン側から見れば〝家来〟の元首相にイラン大統領に向かって公式に、また直接に言わせたところがミソなのだ。

 これに対し、

 鳩山氏は

 「発表は完全に捏造」

だとして息巻きいた。後の祭りだが、それでも大統領府に訂正を申し入れる考えという。

 日本国民としては鳩山さんが正しいと信じたい。が、もし、大統領府の発表が、会談内容の録音記録などから事実であることが判明した場合、捏造発言、つまりウソ発言は大統領や大統領府を侮辱したことに等しい。その場合、イラン国民は黙っていないだろう。

 具体的に言えば、イラン政府から名誉毀損で訴えられかねない事態でもあるということだ。批判されたIAEAのトップ、事務局長は日本人なのだ。公平中立を建前とするIAEAの立場は丸つぶれである。このいざこざは、日本とイランとIAEAの三者の間に、ウソ発言の真偽はともかく、イランが主張して止まない二枚舌の対応は公然の事実であるだけに、今後暗い影を落とすだろう。

 心配を裏切らない人の「完全に捏造」発言であるだけに、ますます心配になる。鳩山氏は、外交オンチというか自分のおろかさを自覚して、これ以上の発言は慎むのが、もっとも国益にかなうのではないか。

 追記 

   あふれるほど原油のあるイランが、1970年代以降、核開発(平和目的の原子力発電、あるいは核兵器開発)にひた走る真の目的は何か。

 アメリカなどの核保有国は、平和利用の原発導入を口実にした核兵器開発(つまり原発の原子炉でつくられるプルトニウムを使うプルトニウム原爆)ではないかという疑念が根強くある。NPTに加盟しているといっても、活動報告、核物質計量管理、核査察受け入れなどその義務をはたそうとはしていないではないか。この秘密主義がある限り、NPTに加盟していると言っても、それは隠れ蓑にしているだけだ。現に、最近、アメリカが偵察衛星でイランの核兵器開発拠点まで特定しているのが何よりの証拠だ。核兵器開発にも転用可能な高濃度のウラン濃縮技術の導入している事実もわかっている。

  一方、イラン側は、もちろん、将来のイランのエネルギーの確保が目的だというだろう。いつまでも原油に頼っているのではイランの将来はない。平和目的である証拠に、核兵器開発を禁止したNPT(核拡散防止条約)に加盟している。核兵器開発なんてとんでもない。そもそも、1970年代から原発開発をしつこく売り込んできたのはアメリカ、イギリスなどの核保有国ではないか。それなのに、イラン革命があったとはいえ、途中で放り投げて〝食い逃げ〟したのは、どこのどいつだという不信感がイランでは根強い。だから、自主、独立での開発にも力を入れざるを得ないのだ。これはイランの同然すぎる権利だと主張する。

  イランとしては、ともに天をいただかない宗教的な〝天敵〟イスラエルを支持しているアメリカの言うことなど信用できないと言いたいだろう。イスラエルだって建国以来核兵器開発をしてきた。同盟国、フランスがその技術を供与したことは公知の事実じゃないか。われわれのイランの生存権のためには、核兵器開発は当然の権利だと主張したいくらいだ。イスラエルはNPTに加盟していないが、イランを疑う前に、核兵器を持っているともいないとも明確にしない核兵器疑惑国、イスラエルこそ問題だ。この「あいまい政策」は核恫喝なのだ。

 だいたい、イスラエルはNPT体制ができる前の1970年以前から核開発をしているからといって、NPTにいまだに加盟していないのはけしからん。こんな不公平なダブルスタンダードな言い分は国際社会では通用しない。アメリカは二枚舌をやめるべきだとイラン側は言うだろう。

 つまり、イランの核兵器開発疑惑は、こうした歴史に根差した相互不信感が根底にある。感情が絡んでいるだけに、未来志向などといって過去の経緯を容易には互いに水に流せないのだ。

 補遺

  こうした不信感と不信感がぶつかり合っているのが

 核開発、イランの現実

なのだ。

 先日、そうした現状をNHK-BS1「世界のドキュメンタリー」で(再)放送していた。制作は

 なんと、イラン PRESS TV (2007年)

というイランの国営放送局なのだ。番組はイラン政府の主張を擁護するプロパガンダであり、おしなべてイラン側の主張(上記のような)に肩入れした番組だった。つまり、

 イランは、なぜ独自に核開発を行うのか。その正当な理由

を国際社会にアピールしようというのが制作意図らしい。アメリカなど核保有国の身勝手なダブルスタンダード(二重基準)、つまり偽善を暴いていた。これはある意味、日本など先進国の痛いところを突いているようにブログ子には思える。

 つまり、石油のほとんどを中東に依存する日本ではあるが、戦後は、一貫して情報はアメリカから、それも一方的に伝えられることに慣れている。イラン側の主張にも正当な理由があるのではないかという点については、アメリカ側に日本は情報操作されていて、必ずしも正しく受け取られていない。

 そうしたゆがんだ状況をただすためには、

 イラン国営放送の主張は、そのつもりで視聴するかぎり、貴重

と感じた。

 それにしても、番組を見て国際政治や外交のすさまじさを強く印象付けられた。

 一言で言えば、とてもじゃないが、単細胞的な、まじめ一方の鳩山さんが口をはさむ余地はまったくないというのが、番組を見たときの率直な印象だった。 

 追記

 さらに、イランの天敵、イスラエルの原爆開発を含めた核開発については、これまた、NHK-BS放送が深夜段組で再放送していた。 

 イスラエル、秘められた核開発(イスラエル、2001年放送)

というタイトルだった。

 1948年の建国以来、国の生存を確保する手段として、エルンスト・ベングリオン初代首相の指揮の下で、いかに一貫して核開発を強力に推進してきたか、その様子を伝えていた。周りをアラブ諸国に取り囲まれた小国、イスラエルは悪夢のホロコーストにおびえていた。この恐怖心が、核技術を持つフランスと同盟を結ばせ、建国したばかりの貧乏国に金のかかる核開発にまい進させたのだ。イラン同様、イスラエルもまた国家の生存権の確保を核開発にかけたのだ。

 番組では、シモン・ペレス元国防次官(元イスラエル大統領)へのインタビューで構成されていた。

 まずはフランスから、1950年代に平和目的の名目で原子力発電の技術を導入した。1960年代、アメリカのケネディ政権はイスラエルの核開発は周りのアラブ諸国に核拡散を招くとの強い懸念を表明、その開発に反対した。しかし、番組ではイスラエルは核実験の成功にこぎつけたことを紹介している。

 イスラエルは、核兵器を持っているとも持っていないとも明言しない、いわゆる「あいまい政策」を貫いている。これがアラブ諸国の侵略に対する抑止力になるとの確信が何度かの中東戦争を通じて得たからだろう。また、アラブ諸国に核拡散を防止するのにも役立ち、あからさまにするよりはイスラエルに有利と考えているのだろう。

 なお、イスラエルの核は、主に、軽水炉原子炉から抽出したプルトニウムを利用するプルトニウム型核兵器らしい。プルトニウム抽出のための再処理工場も突き止められているという。その結果、推定だが、2001年現在、イスラエルは数百発の核兵器を地下に貯蔵していると見られている。

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