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国民必読の民間事故調「報告書」を読む これが悪魔の連鎖、4号機

(2012.03.17)  先日のブログで、朝日新聞朝刊「工事の不手際で4号機救う」について、工事の不手際ならぬ、記事そのものの不手際、不完全さを指摘した。つい最近発行された

 福島原発事故独立検証委員会「調査・検証報告」

の全文、約400ページを読んで、なぜ、日米両政府の調整会合が地震発生時、定期点検中で停止していた4号機こそ、首都圏3500万人避難への「悪魔の連鎖」の引き金になるなど、もっとも危険だと認識したのかという謎が解けた。

 その日早朝、4号機建屋は1号機建屋、3号機建屋に続いて水素爆発を起こし、原子炉・原子炉圧力容器・原子炉格納容器を収めている頑丈な建屋の上部が吹き飛ばされた。その日とは、

 運命の日、2011年3月15日

だったのだ。

 報告書によると、建屋が吹き飛ばされたことで、なんとアメリカは建屋上空に無人偵察機を飛ばし、その精密写真の分析から、4号機の使用済み核燃料プールに水がないと判断したらしい。驚くべき素早い行動だが、定期点検を利用して原子炉の大工事に取り掛かるため、つい最近、原子炉から、水を満たした冷却用プールに熱々の使用済み燃料棒を浸したばかりだった。

 そのとき地震が発生。全電源喪失で冷却できずに、プールの水はすべてあっという間に蒸発、燃料棒がむき出しになっているのにに違いない。その証拠にむき出しの燃料棒が熱で崩壊、水素が大量に発生し、4号機建屋に充満、引火で爆発したというプロセスを両政府は推定したのだ。アメリカの原発専門家のシュミレーションだ。

 いったんそうなると、4号機から高レベルの強い放射線が発生し続けるから、もはや人は近づけない。もちろん、ほかの原子炉建屋に注水などできない。コントロール不能に陥る。とすると、やがて1号機も、2号機も、3号機の原子炉、冷却プールも崩壊する。

 とすれば、大まかに、福島第二原発も総員退避せざるを得ず、これが東海原発からも総員退避となり、ついには

 首都圏3500万人の避難に自衛隊の災害出動、治安出動

となるという最悪のシナリオの「素描」を報告書は伝えている。その引き金は4号機である。しかも、たとえ水がプールに残っていたとしても、4号機の建屋の冷却プールは地震で壊れやすい状態にあると判断されており、いつ、プールの底が崩壊してもおかしくなかった。熱でコンクリートが崩壊するというのだ。ちょっとした余震などで底が抜ければ燃料棒はむき出しになり、件の悪魔の連鎖が始まるというのだ。

 この始まり、引き金が3月15日早朝の4号機建屋の水素爆発だった。それがかろうじて免れたのは、幸運中の幸運なのだが、4号機の冷却プールの水がなくなったから、水素爆発をしたのではなく、別の謎の原因で水素爆発が起きたらしい。この点は報告書も言及していない。

 神様がわれわれを助けてくれた

としか、考えられない偶然というか、幸運だったのだろう。そういえば、なお恐ろしいともいえるのだ。

 どうやら、件の8日付朝日新聞1面の記事の情報源は、この報告書らしいとわかった。

 このように、この報告書は、どんな過去の推理小説よりも、また、どんなサスペンスドラマよりも、迫力、恐怖、現実感があり、一気に読ませる。ブログ子は一晩で読了したほどである。言葉は悪いが、これほど〝面白い〟報告書はこれまで読んだことがないというのが、素直な読後感だ。

 なにしろ、6つの原子炉が文字通り、次々とチェルノブイリ化するという最悪のシナリオの素描を公表して見せたのだから。それは、去年のいまごろの出来事として描かれている。

 なのに、このシナリオについては、先の政府事故調「中間報告書」にはまったく言及がない。政府の都合の悪い事実は政府事故調では公表できにくいことを示す証拠だろう。この意味で、民間事故調の存在意義は大きいと言えた。

 はっきり言えば、この報告書は国民必読の報告書だ。チェルノブイリ事故の場合には、その検証報告にもとづき、後日、事故はドキュメンタリー再現ドラマとしてまとめられた。今回も国民が、いや国際社会が等しくこの原発事故の現実を直視するために映画化することが必要だと思う。

 追記

 この報告書を公表した委員会の北澤宏一委員長は、3月14日夜のBSフジに出演し

 この報告書から浮かび上がってくる「私の提言」として

 複合災害に備えるには原発立地の「過密配置は国を滅ぼす」

と回答している。ということは、福井県若狭湾に関西電力を中心として15基も原発がある、いわゆる原発銀座は国を滅ぼすということになる。ここは福島原発どころではない過密地帯なのである。今回の恐怖から考えると、決して大げさな表現ではない。そのとおりだろう。 これを敷衍すれば、脱原発の基本として

 原発立地が分散するように、廃炉する原発を選択せよ

ということになる。科学者からの脱原発( 注記 )の具体的な提言と受け止めたい。

 もうひとり、出演したリスク管理の専門家は、「私の提言」として

 「官僚をうまく使う」

ということを掲げていた。事故対応にあたった当時の菅直人首相のトップダウン型指導者の危うさを踏まえたものであり、事故発生直後、組織内で情報の共有がなかなかできなかったことによる政府内部の混乱に対する反省として注目したい。

  さらに、福山哲郎前官房副長官や山本周「産経新聞」論説副委員長も出演した番組では

 これまでまったく想定されなかった

 複合災害に対するマニュアルづくりが必要

だとの声もあった。複合災害では、今回の事故の長期にわたる全電源喪失でもわかるように、

 多重防護

が一気に崩壊するという事態になる。これに対する備えは今のところない。早急に立て直しが必要だ。喪失で緊急炉心冷却装置すら起動しなかったことは重大だ。今回、「死角」(報告書)となった使用済み核燃料の冷却の重要性など、解決すべき課題は多い。

 また、今回の事故では、科学者は政治家に対して単に判断の材料を提供するに過ぎない、決定権はないこともわかった。科学者は全体を見ていないし、また、その科学的な知見も人によってかなり広い幅があることもわかっと番組で指摘(福山氏)された。

 最後に、これから、おそらく今夏には、国会が設けた事故調査委員会(いわゆる黒川委員会)がまとめる報告書に注視したい。それというのも、民間事故調ができなかった

 当事者の東京電力に対する聞き取り調査

ができるかどうか

にかかっているからだ。東電が要請を拒んだからだ。これこそ、黒川委員会の存在意義が問われるテーマだろう。国会には国政調査権という強力な〝武器〟があり、その国会が設置した委員会からの聞き取り要請を拒むことは難しい。東電の真摯な協力を期待したい。

 注記 事故後の原発世論調査

  脱原発に「賛成」は44%

   「どちらかといえば賛成」は36%

 合わせると、脱原発に賛成は80%にも達した。国民の総意は脱原発ということだ。

 日本世論調査会の最近の面接調査である(3月18日付中日新聞」)

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