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チェルノブイリの森はいま あれから25年、低線量被爆の実態

(2012.03.27)  福島県では、今、第一原発周辺を中心に放射能に汚染された道路や森など環境のいわゆる除染がクローズアップされている。

 事故から1年経って、半減期は短いが大量に発生した事故直後の高線量汚染の時期はすぎた。代わって半減期の長い放射能物質から出る放射線密度の低い、いわゆる低線量の汚染が焦点になっている。低線量被爆といっても、最近の測定によると、

 立ち入り禁止となっている警戒区域の20キロ圏内では、年間許容線量(1ミリシーベルト)に換算して、おおむね数倍

である。がん発生リスクが、放射線を浴びない場合に比べて高まり始める約100ミリシーベルトに比べるとかなり低い。とはいえ、これが長期にわたって浴び続けた場合の人への影響は、今のところ未知だ。放射線防護医学の今後の知見が待たれる。

 こうした低線量被爆の生物に与える影響を調査できる格好の〝実験場〟が

 チェルノブイリの汚染の森

である。事故から25年たった今も、人の立ち入りが禁止されている30キロ圏内では、年間換算で、

 年間許容量の約100倍以上、つまりおおよそ100ミリシーベルト以上

の放射線が飛び交っている。

 先日(3月8日深夜)、NHKBS1で、この25年間の低線量被爆が生物たちに与える影響について、科学者(主として制作国のフランス人)たちの現地調査報告が放送された。

 大変に興味ある三つの成果が読み取れたので、ここで紹介するのも無駄ではないだろう。

  第一。低線量被爆下の動物は、被爆のない環境に育ったものに比べて、

 放射線に対して耐性を備えていた

ということが、わかったことだ。この二種類に人工的にそれぞれ同じ強力な放射線を瞬間的に被曝させた実験では、チェルノブイリ下で育った動物のほうが、その影響が少なかったのである。

 第二。30キロ圏内には人が立ち入らないので、食物連鎖の頂点に立つ人がいない分、生物多様性が良好にはぐくまれていたことだ。つまり、植物、草食動物、肉食動物の生息バランスが生態学的に見てよかったというのだ。

 第三。次世代づくりの繁殖には、この低線量被爆はどのような影響が出るのであろうか、という関心の高い問題だ。高線量被爆では強い悪影響が当然出ることは科学的に裏付けられているが、番組によると、低線量被爆では、予想に反して、

 DNA損傷には、双方にほとんど差はなかった

という結果になったのだ。低線量の被爆では、繁殖に目だった異常はこれまでのところ出ないという。この原因としては、損傷が軽微な場合、生殖細胞内のDNA自身に修復機能が備わっている事実が考えられる。しかし、番組ではこの顕微鏡観察結果について、さらに長期間の世代交代ではどのような影響があらわれるか、それは未知として結論を留保している。

 いずれにしても、これから、放射線防護の研究を日本でも加速させる必要があろう。それが、第一原発事故を起こした日本の国際的な責務だ。そうこの番組を見て強く感じた。

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