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「真珠湾」を予測した男 

(2011.12.07)  70年前のあす12月8日は、

 真珠湾攻撃・開戦記念日

である。12月7日付朝日新聞は、

 危機の時代へ三つの教訓

との社説をかかげている。「単純な解決を性急に求めない」「意見の多様性を尊重する」「他者の視座でわが身を見る」の三つだという。危機の時代でなくても、外交にはこうしたことは必要であり、ある意味、言わずもがなの主張である。

 この三つを守るあまり、解決時期を逸し、いわゆる小田原評定に堕しないことが大事なのだ。それには、この三つのほかに、特に危機の時代には、

 確実な情報に基づく国際情勢の分析力とそこからの洞察力

が政治家には要る。これがなければ、百家争鳴で決断はできない。

 たとえば、綿密な軍事情報をもとに、日本の真珠湾攻撃を、起きる16年も前に予測した男がいる。

 イギリス人の軍事ジャーナリストで、「ニューヨーク・ヘラルド」紙の論説記者、ヘクター・C・バイウォーター(Bywater)のドキュメンタリー小説、

 『The Great Pacific War(太平洋戦争)』(1925年発行)

である。1921年のワシントン軍縮会議を詳細に分析取材し、まとめたものである。真珠湾攻撃でアメリカ側の死者がおおよそ2500人にのぼることも的中させている。

 驚いたことに、真珠湾攻撃に参加した連合艦隊司令長官、山本五十六も、開戦直前に、この真珠湾攻撃を指摘するバイウォーター記者と会見までしているということだ。当然、山本長官は、会見に先立ってこの小説を読んでいただろう。

 これらを偶然というには、あまりに予測が的確でありすぎる。正確な軍事情報をつかむことが、先の見通しをつけるのにいかに大事かがわかるだろう。

 今の日本にとって、第一防衛ライン(列島ライン)、第二防衛ラインと名づけて太平洋東進膨張政策をこの20年着々と進めてきている大国、中国が一番の脅威である。かつてのロシアが南下膨張政策を強引に推し進めてきたときの国際情勢とある意味、似ている。

 日本は専守防衛であるからこそ、情報操作に踊らされないよう、過度にアメリカに頼らず、中国などの軍事情報の独自入手に力を入れる必要がある。同時に、より大事なのは、ソフト、つまり、その意図を含めて正確な分析ができる優れた人材を早く防衛省などで育てる必要があろう。日本はハードに比べて、このソフトが先進国の水準に比してずいぶん劣るのは残念だ。

  日本は、今月中に情報収集の能力向上を目指し、レーダー型情報収集衛星3号機をH2A20号で打ち上げる。成功を期待するが、分析官など人材養成も急ぐべきだろう。

 真珠湾70年の教訓とは、これにつきる。

  追記 2011.12.12

  真珠湾攻撃の予測は、それほど難しいものではないことを最近の著書、

 『日米衝突の根源 1858-1908』(渡辺惣樹、草思社)

で知った。19世紀後半からの日本とアメリカの世界進出をつぶさにトレースすると、当然、日本とアメリカが、互いに帝国主義国として中国市場進出を狙う目的で双方戦争に突入することは、十分あり得たことだと思った。アメリカのアジア進出において、ハワイは軍事戦略上、要衝の地だったのだ。

 一方、アメリカは米西戦争のさなかに、ハワイを併呑している(1898年。ただし、アメリカの一州としたのは太平洋戦争後)。日本がアメリカと衝突するとすれば、まず、ハワイだったことはこれでわかる。移民問題でも当時、アメリカと日本はハワイで競争していた。実権はアメリカが握っていた。

 渡辺氏は、静岡県下田市出身であることから、特にこうした問題に敏感だったのだろう。

 たとえば、その後の日露戦争後の1905年、日本は朝鮮を保護国とするが、同時に、日露戦争の仲介者、アメリカはフィリピンを獲得する。これには日本が秘密条約でアメリカに承認している(桂・タフト協定)ことが大きな要因になっている。日露戦争では、アメリカはロシアとの間に立つ仲介者ではあるが、その労を活用して日本を最大限に国益確保に利用したのである。

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