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三方「10%」我慢 で日本も脱原発へ なぜドイツは環境大国になったか

(2011.12.27)  不思議である。情報操作されている気がする。日本にある原発54基のうち、今月末までにはほとんど停止し、稼動しているのは

 わずか6基

と全体の約1割。不思議なのは、それでも電力不足で停電にはならないという。となると、今稼動している原発が定期検査ですべて停止し、3か月間の点検に入り、54基すべてが(再稼動せず)停止したままになっても、来年夏には停電などはないのではないか、という思いもする(追記2参照)。

 東海地震の震源域のど真ん中にあるため、静岡県の浜岡原発は、国の要請ですべて停止している(1、2号機は古く効率が悪いのですでに廃炉のためもともと停止中。残る3号機、4号機、5号機(いずれも出力100キロワット以上の巨大原発)は停止。新設予定の6号機計画は今回の大震災で事実上建設は頓挫)

  浜岡原発をかかえる中部電力の場合をまず考える。浜岡原発すべてがとまったとして、その設備の発電能力は約350万キロワット。定期検査などで稼働率は年間平均約7割とすると、原発による供給電力はせいぜい250万キロワットのパワーでしかない。これは同社の火力などをあわせた総供給電力のパワー約3000万キロワットの1割にも満たない。わかりやすく言えば、この程度しか、供給パイプは細くならないのだ。

 ベース電源として利用される原発とは違って、夏場の最大使用電力に対応するため、臨機応変に出力を迅速に変えられる火力発電には設備に1割程度の余力が設けてある。水力発電には揚水発電という、夜の余剰電力を活用した巧妙な〝奥の手〟もある。いずれもコストはかかる、手間がかかるという問題点はあるにしても、原発なしで細くなった分、パイプを火力設備の応援で少し太くすることは出来ないことではない。

 これに中部電力が協力を呼びかけているように、家庭での節電をこまめに行う。家庭で一番電気を食うのが、エアコンだ。資源エネルギー庁最近の推計では

 家庭の電気使用量の約半分がエアコン。次いで4分の一の冷蔵庫

なのだ。エアコンの設定温度を調整して、夏場、冬場に節電する。これだけで、家庭での年間消費量の10%や20%は十分にカットできる。

 国の政策として、太陽光、風力など再生可能エネルギーを強力に推進する。現状は、太陽光発電は、全国平均で、消費電力の0.5%がせいぜい、風力発電も同程度で、あわせても1%程度である。

  そこで、全国平均で考えると、供給電力の約30%を原発に依存しているから(関西電力の依存度が最も高く約50%)、脱原発には、この30%のうち、

 10%分を、原発に比べて余分なコストはかかるが、電力会社の火力などの余力設備の活用でまかなう

 10%分を、家庭の節電努力でまかなう

 残り10%分を、国や電力会社の再生可能エネルギー推進でまかなえるよう導入を急ぐ

というやりかたで徐々に原発廃止の道を歩んでいく。

 いわば、

 三方「10%」我慢

という方式である。こうすれば、何も全国のパチンコ店の電気を全部消してしまえ、などというどこかの知事が言ったような乱暴な方法は要らないのである。

 ただ、問題なのは、これにはこれまでよりもコストがかかる、手間ひまがかかるという点だ。これが電気料金にしわ寄せされる心配だ。

 もう一つの問題は、設備産業の電力会社として、発電しなくなった54基もの原発をどうするか、である。廃炉については、その技術はいまだ確立していない。とりわけ、浜岡原発などの巨大原発の廃炉技術は未経験だ。その費用も1基あたり数千億円かかると見られている。実際はもっとかかるであろう。これを電力会社だけが背負えるか。

 それに、廃炉には、迅速にしたとしても、安全性の面から慎重さがもとめられることから、数十年はかかる。大津波や大地震が起こりそうな場所の原発を優先するとしても、実際は50年以上かかる大仕事だ。原発立地と廃止については、第一義的には電力会社に責任があり、廃止コストをどう吸収するか、あるいは耐えられるようにするにはどうするか。見極めて国として対策が必要だ。

 また、廃止の合意を地元とどう取り付けるか、も難しい。早い話、浜岡原発の停止で、地元の御前崎市は、原発交付金が大幅に減らされて、財源不足に拍車をかけている。

 そのほか、温暖化対策など問題は山積してはいるが、今こそ、核の平和利用として始まった原発から脱却していく時期に来ている。もんじゅ事故、再処理工場の事故続出、ウラン濃縮工場のトラブルなど、原発政策の国の基本である核燃料のリサイクルは、事実上、破綻しており、今が決断の時期ではないか。

 それには、上記の三者が痛みを分かち合う姿勢が求められるであろう。

 すでに、口先だけの「脱原発」の時代は終わった。見通しを持ち、具体的に詰めた、そして周到に準備した工程スケジュールづくりを急ぎたいものだ。

  補遺 2011.12.30

  こうした脱原発の道筋は、一見、空想のような気がする人もいるだろう。政治はそんなに甘くはないというわけだ。

 しかし、日本の大震災を目の当たりにして、ドイツ政府は、国内に17基あるすべての原発を閉鎖する法案を6月に閣議決定した。スイス政府も25年後までにすべての原発を廃炉にする方針をこの5月に決定している。

 こうした動きの大本の日本の政府が脱原発への道に踏み出せないはずはない。廃炉技術などドイツやスイスと足並みを揃えて取り組むチャンスではないか。

 この意味で、ドイツやスイスの決断は世界を変える今年の重大ニュースの一つに挙げておきたい。第一位は、なんといっても北朝鮮の金正日の死去だろう。

   ところで、ドイツではなぜ、こうした思い切った原発ゼロ政策をいち早く打ち出せたのであろうか。

 太陽光や風力エネルギーなど再利用可能エネルギーの導入に力を入れているからだろう。原発に頼らなくても、それに代わる必要エネルギーを自然から取り込むことが出来るという20年の経験による自信がある。地球温暖化対策で原発に依存せざるを得ない先進国では一番の環境大国であることが、こうした施策を打ち出す源になっているようだ。何しろ、2020年までに二酸化炭素排出量を1990年に比べて40%削減することを目標に、今実現に向けてさまざまな施策が進行している(現在までにすでに30%削減に成功しているという。ドイツはこの20年で再利用可能エネルギー開発を急速に推進し、ついには、もたもたしている日本を追い越してしまい、世界一の発電量を誇っている。

 この実績を支えている環境対策のいくつかを紹介すると、

 24時間運行の路面電車(フランクフルト市街)

 売電も出来る、収入の得られる強力な太陽光発電の家、プラスエネルギーハウスづくり

 今後建設される公的な建物は、原則、通常のビルの10分の一程度の超省エネビル、いわゆるパッシブハウスにすることが義務付けられている(太陽光発電、風力発電のほか、電力を一番使う空調施設のいらない窓の開け閉めを自動化したグリーンハウスよりもさらに強力なエコビルづくり)

  乗り捨て自由のレンタル自転車の普及システムづくり(1日1000円くらい)

 環境基準に適した車しか通行できない道路行政の推進

 ペットボトルの再利用システムの導入

          (以上は、BS朝日「米倉涼子の未来街道を行く」 2011年12月放送より)

  

などである。 こうした背景があったればこそ、地球温暖化という枷があっても、原発ゼロの法的な決定をどの先進国よりもいち早く打ち出せたのだろう。

 こうした環境政策の大本になっているのが、子どもたちへの環境教育。森の中の幼稚園づくりだ環境の大切さを自然に学ぶのである。

 小さいころからの実物の環境教育こそが、環境大国、ドイツを国民が支持する源泉となっているのだろう。

  追記 12月27日

 第二のふるさと、金沢の北國新聞によると、

 雪下ろし、どさっ。白峰で屋根雪1.5メートル。

 白山麓スキー場、全てオープン。金沢・医王山でも初滑り

と夕刊「風道」。こちら、浜松は朝から快晴。風強く寒ッ。ブルッ。

 追記 2012.01.21

   2012年1月19日付朝日新聞によると、

 電力会社で組織する電気事業連合会が民主党政策調査会に提出した資料

 「今冬、今夏の電力需給と原子力再起動について」

では、この5月に全原発が再稼動せず、停止したまま、去年のような猛暑に見舞われた場合

 原発依存度の高い関西電力は需要ピーク時に電力(いわゆる供給能力)が25.0%不足するという。水道管にたとえれば、需要に対して管の面積を目いっぱい増やそうとしてもまだ25%も細い管にしかならず、水圧が下がり断水(停電)するらしい。

 ただ、この資料によると、原発を抱える9電力会社全体では、

 電力不足は7%にとどまるという。

 これは、さきほどの三方「10%」我慢の法則により、国民の節電努力でカバーできる。

 それは冬場、夏場の短い期間の努力だけでいいから、切り抜けられないこともない。

 しかし、停止した全部の原発の肩代わりを、この5月以降、火力発電で賄うとすると、燃料費は年間3兆円増えるという。これは

 赤ちゃんも入れて国民一人当たり=年間約2万円の負担増

という勘定になる。仮に電力会社の言い分をそのまま信用するとして、これは全部の原発が年間を通じてストップすることに対するコスト増だ。

 この重い負担を人の命には代えられないとして国民が電気料金に上乗せすることを引き受けるか、それとも、電力会社の経営努力で吸収すべきであると考えるか、政府が税金を投入するか。ここまで突っ込んだ議論を加速すべきである。

 脱原発=再稼動、絶対反対には、巨大原発の廃炉技術の開発とそれにかかるコストの上に、廃炉までの長い期間、こうした火力発電代替に伴う電気料金上のコスト増という痛みをどう切り抜けるかという議論や具体的な仕組みが欠かせない。

 こうした点について突っ込んだ論議を巻き起こしたい。

 脱原発の選択は正しい。しかし、その道に挑むには、国民も、電力会社も、そして政府も等しくそれなりの長期にわたる覚悟と忍耐が要る。それでも、脱原発の道を目指したい。東北大震災で、だれもがそう思ったに違いない。この初心を忘れてはならない。

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