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イルカと〝共同〟漁 再考「ザ・コーブ」

 (2011.09.27)  NHKも、和歌山県太地町に気を使っていたのであろう、有料チャンネル・プレミアムの、そのまたこの月曜日の深夜2時から

 ドキュメンタリー「イルカと生きる 伝統漁」

というさりげない番組を再放送(BSアーカイブス)していた。見た人はほとんどいなかったのではないか。漁師が川魚をとるのに賢いイルカをたくみに味方につけているのだ。

 去年のいまごろ日本では、誰も知らなかったイルカ漁の問題、つまり太地町の小さな入り江で何が行われているかというドキュメンタリー映画「ザ・コーブ」が、大きな話題になっていた。入り江に誘い込まれたイルカがいっせいに撲殺される漁法は残酷ではないかと賛否を呼んだ。世界的には、米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞した2009年に反響が巻き起こったいわくつきの映画。

 この「イルカと生きる」は2008製作で、まだ、「ザ・コープ」騒ぎの前に一度放送されたものを騒ぎが落ち着いたいまごろになって深夜、放送したというわけだ。場所は、ミャンマー(旧ビルマ)の大河、エーヤワディ河(イラワジ河)。

 今回の映画を見ると、イルカと漁師とが、互いに息を合わせるというか、コミュニケーションをとりながら〝共同〟で川魚を追い込む。小船に乗った漁師の投網のタイミングをイルカが合図している様子が、見事に映像に捕らえられている。 リーダーのイルカ(カワゴンドウ)が尾びれを水面に出し、「用意して」と小船上で待ち構えている漁師に合図したり、次にはこれまた背中を水面に出して「ついてきて」と小船を魚の群れに誘導したりしていた。魚群を複数のイルカがほどよく追い込んだところで

 「投げて」、今だといわんばかりに尾びれでタイミング

を出し、投網が行われる。

 一方、漁師のほうも、小船のへりを

 細長い円錐形の棒

を片手で軽くたたいて、「一緒にやろう」などと水中のイルカに船の様子ややり方を伝えているらしい。この投網方法では、通常の三倍もの収穫があるという。

 こうした共同漁法は伝統漁法らしいが、イルカにとっても、投網から漏れた魚にありつけるので相互に利益があるらしい。

 この様子を見ていると、

 イルカと漁師、つまり人間とは互いに信頼しあって共同作業をし、相互に利益を得ている

という感じがする。 ただ、この方法は、イルカのペースに合わせて漁をするので、どうしてもその日の収穫にばらつきが出てくるのは避けられない。最近では現地でも、安定した収入が得られる農業が重視され始めており、伝統魚法(季節漁)は、政府によって漁法を保護する政策はとっているものの、廃れる一方らしい。

 このドキュメンタリーの最後に、ベテラン漁師が

 「イルカに失礼なことはするな」

と訴えていた。電気漁法に怒りをあらわにしていた。この漁法は水中に電流を流して(高値で売れる)魚を感電させ気絶させるもので、時にはこれにイルカもやられるらしい。この方法は違法だが、簡単に魚が取れるので後を絶たないという。

 そんなこんなで、最近では、電流を恐れてか、イルカは段々この河にやってこなくなったらしい。それだけ、イルカは賢いのだろう。

 このほか、ドキュメンタリーでは、父から子へ、人間の方の世代交代の難しさを伝えていたが、同時に、イルカの親子もまた、世代交代の訓練を水中でしているような様子を紹介していた。

 ほとんどの人が見なかったであろう深夜番組のさりげないドキュメンタリーだったので、少し詳しく内容を紹介した。

 ミャンマーでは、絶滅の恐れのあるイルカの保護とともに、伝統漁も免許許可制にして、伝統を守ろうとしている。

 イルカそのものの捕獲については、日本では太地町以外にも、もう一か所、伊豆の伊東市でも水産庁が設定した漁獲枠内で「イルカ追い込み漁」が毎年9月から3月までの季節行われている。ただし、ここではこのところ、ほとんど捕獲はされていないという。

 人と意思が通じ合える「イルカに対して失礼にならない」よう、追い込んだ上での残酷な撲殺を禁止するなど、伝統漁法とはいえ、時代にあった改善が必要ではないか。少しオーバーに言えば、イルカの尊厳を気遣ったやり方があるはずだといいたい。それを重んじるのが伝統漁法のいいところではないか。

 深夜番組を見終わって、改めてそんなことを気づかせてくれた。(2011.09.27)

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コメント

結局魚は取っちゃうんだ。
イルカは賢くてかわいいけど魚は槽じゃないという差別じゃないの。

投稿: ednakano | 2011年10月19日 (水) 11時02分

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