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100000年後の安全

(2011.08.15)  今日は終戦記念日であり、お盆でもある。家族や日本の将来について、国民一人ひとりが心静かに考える日でもあろう。

 先日、浜松市民映画館「イーラ」で

フィンランドのドキュメンタリー「100000年後の安全」(2009年)

という映画を見た。

原発の安全性については、原子炉自体の安全性(高々、50年間の)ほかに、その高レベル放射性廃棄物の最終処理まで約10万年も含めて考える必要があるとすると、

 原発に未来はあるか

と問われれば、誰しも明快な答えはできないだろうという印象を映画を見終わって持った。

 この映画には、フィンランドで世界で初めて、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場(深地層処分)が決まり、今、本格的な建設が始まり、2020年ごろから100年間の稼動に向けて準備が進んでいる様子が淡々と映し出されていた。場所は、首都ヘルシンキから西に250キロ離れは、オルキルト島オンカロ。地下数百メートル。この一億年、安定した環境を維持しているらしい。

 ここに原発から出る使用済み核燃料の高レベル放射性廃棄物をガラス固化して永久廃棄する。

 放射能減衰は、

 放射能の強いセシウム137  で半減期 約30年

       ストロンチウム90    で半減期 約29年

となる。半減期が長くなるにつれて、放射能は弱くなる。

        プルトニウム239  で半減期 約24000年。

 天然に存在するウラン235では半減期は約1億年。

 映画の「10万年」という数字はどこから出てきたのだろう。

 いろいろな半減期を含む廃棄物は、おおよそで、1000年後には現在の放射能の10000分の一くらいに減衰する。ずいぶん減衰したことはわかるが、それだけでは人体に安全かどうかはわからない。

 また、いろいろな半減期を持つ放射性廃棄物は、その内容物によって減衰の仕方も変わってくる。放射による原子の崩壊の過程で、別の半減期を持つ放射性物質に変わることがあるからだ。

 そこで、原発に装てんするもともとの原材料であるウラン1トン(核分裂するウラン235を5%程度含む)、つまり、掘り出したウラン鉱石でいえば750トンが自然に出す放射能レベルにまで、廃棄物が減衰するようになれば、安全は確保できたと仮定する。一応の安全基準だが、それは、数万年の年月かかるといわれている(電気事業連合「原子力エネルギー」図面集)。

 だから、余裕を見て、10万年後の安全

ということになったのであろう。

 日本でも、深い地層での処分の方法について、

 北海道の北端部、幌延町の深地層研究センターで安全で確実な埋設方法の研究がずいぶん以前から行われており、一般の見学会も行われているが、成果は遅々としてあがっていない。原発に未来がないことが一因であろう。

 もうひとつ、愛知県瑞浪市にも瑞浪深地層研究センターがあり、岩盤の安定性、地下水など安全な埋設のための研究が行われている。予算としては、両施設を含めて地層処分関連で、年約100億円程度を国が計上している。ただ、研究目的を一般の人にもわかるようにわかりやすく打ち出していないことから、技術者の士気は決して高くない。おこぼれ頂戴の日陰の研究となっているのが問題。有能な人材が集まらないのも当然かもしれない。

 また、各電力会社の出資で設立されている日本原子力発電環境整備機構(NUMO)も最終処分場探しを10年前から重い腰を上げて始めている。しかし、住民が協力してくれそうな有力候補地は今も見つかっていない。これまた、原発に未来はないことを国民が肌で感じているからだろう。職員の士気も決して高くないのも気になる。先の見えない仕事を仕方なくやらされているという空気が組織内にあるのは否めない。出向人事で組織が成り立っていることから、是が非でも候補地を見つけようという積極的な仕事ぶりにはつながらない。責任の所在があいまいなのも熱意を減退させる原因であろう。

 原発の時代の50年を過ぎて、今、人類は、廃炉の時代を迎えようとしている。

 この機会に、一度立ち止まり、

 「原発に未来はあるか」

じっくり考えてみる時期に来ているのではないか。(2011.08.15) 

 追記 2011.08.15 1980年代、想定されていた福島第一原発事故

   きのう、14日夜、教育テレビで

 アメリカから見た福島第一原発事故

というのを放映していた。福島原発の製造元、米GEの元設計技術者などが登場し、(全電源喪失が起こった場合)その原子炉格納容器の奇妙な形に問題はないか、水素爆発の可能性はないかなど、1980年代に徹底してシュミレーションしていたし、その報告書もGE上層部に報告されていた。しかし、それは取り上げられることはなかった。放送での説明では、公表すれば「GEの原発ビジネスは終わる」からだという。

 日本の内閣府の原子力安全委員会の委員長は

 全電源喪失は考えてもいなかった

との発言を事故後しているが、アメリカの原発開発の事情を専門家としてつぶさに調べていれば、こんな発言はできないはずであった。業務上過失にも相当する不見識だろう。

 こういう失態を聞くにつけ、

日本の原発に未来はない

と思わざるを得ない。

 参考 2011.08.28

   最終処分場問題にゆれる幌延町については、

 毎日新聞2011.08.24日付朝刊

に詳しい。交付金がもらえることから、財政事情の厳しい町の町長としては「文献調査」について、「検討すべき課題」だとして議会答弁したが、町民の反対により、この発言を撤回したことを報じている。

  参考 最終処分場についての世界の情勢

 フィンランドは、最終処分場が決まり、運用に向けて具体的に処分場建設が始まっている。

 原発大国のフランスは、最終処分場が決定し、2025年からの運用を目指して建設が始まろうとしている。

 ドイツは、最終処分場は決定しているが、その計画が一時的に「棚上げ」になっている。

 アメリカは、最終処分場の計画自体が「白紙」戻った。

 原発建設が進むインド、中国は、計画づくりが始まったばかりであり、最終処分場は決まっていない。

 最後に、日本は、20年以上にわたって最終処分場探しは行われてきたが、地下処分するという方針は法律で決定しており、そのための研究も行われている。しかし、具体的なその候補地探しは、北海道北端の幌延町など名乗りを上げていた自治体もあったが、住民の反対で「白紙」に。候補地探しは振り出し戻った。

 六ヶ所村の再処理工場の中間処理施設が事実上、最終処分場になる可能性も出ている。しかし、青森県は六ヶ所村を最終処分場にしないとの確約を政府と交わしており、現在、最終処分場探しは袋小路に入っている。

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