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科学革命はなぜ17世紀西欧にだけ起こったのか かぎは16世紀西欧の文化革命

 最近は、日本の小惑星探査機「はやぶさ」の感動的な地球帰還が話題になり、科学とか、技術とかに、一般の関心が高まっている。

 ブログ子も、三連休を利用し、この機会に、

 現代物理学につながる科学革命がなぜ西欧にだけ起こったのか、それも17世紀西欧だったのか

という問題意識を持って、

 『磁力と重力の発見』(山本義隆、みすず書房、全3巻)

および、

 『16世紀文化革命』(山本義隆、みすず書房、全2巻)

を読んでみた。いずれも、見事な大著である。

 科学とは、独自の目的と合理的な方法で新しい知見を発見し、それらを理論的に、あるいは体系的に研究する学問

のことであり、

 技術とは、人間の生活に役に立たせるためにさまざまな知識を活用する手段

のことである。科学と技術が互いに影響しあいながら相互作用することはよく言われている。しかし、ながら、具体的な事例はなかなか示されなかった。たとえば

 磁力と重力発見

では、互いの影響がどういう具合になされたのか、具体的に、実証的に文献などを調べ上げたのが、前書である。これを読むと、お互いに接触しなくても影響を与えるという摩訶不思議な遠隔作用である重力が、磁力とのアナロジーから、自然界に存在する力として認識されてくる様子が浮かび上がる。そこには、自然魔術が実験科学として発達し、科学と技術の媒介役になっていたという事実を説得力を持って提示している。魔術が、形而上的な科学と、形而下の技術の相互作用役をになったというのだ。

 なぜ17世紀の西欧にだけ、科学と技術の相互作用による科学革命が起こったのか、という問題意識で書かれたのが、後著である。著者の山本氏は、ほかの文明圏にはなかった

 言語革命や数学革命といった文化革命

が16世紀西欧に起きていたからだと、膨大な文献を挙げて結論付けている。著者によると、文化革命とは、

 印刷術の普及に伴い、部数拡大の論理から必然的に、著作言語が少数者のためのラテン語から多数者の使用する各国語に変化してきたこと、そのことでそれまでラテン語で書かれてきた科学と、自国語で書かれる技術との相互作用が起きたこと、出版文化の浸透で秘密主義から情報の公開が始まったこと、新大陸の発見に伴い実用技術に関心が高まったこと、それまでの質の議論から白黒決着をつけることのできる定量的な議論が行われるようになったこと、負の数、少数なども扱う画期的な代数学の進展に伴い、厳格な実証性、合理性が図られるようになったこと、手写本では図版が書写のたびに劣化するのに対し、印刷図版には劣化はなく、情報の正確な伝達が可能になったこと

など、である。これに対し、アラビア科学やインド科学、中国科学は、応用面では知的な水準としてはむしろ西欧より優れていた面があったにもかかわらず、こうした文化革命が伴わなかったといえないか。この点については、著者自身明確には指摘していないが、推測されるところである。

 大筋まとめると、こんなところだろう。

 こう考えると、日本のように科学と技術を一緒くたにして、「科学技術」と表記するのは、間違いであることがわかる。2011.02.14 

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