« 大きな一歩 (Giant Dip)  来るか、日本の太陽系大航海時代   | トップページ | 飄々として毅然 糖尿病がエアロビクス日本一を支えた 世界デーで考える »

あの入り江で一体何があったのか ドキュメンタリー映画「The Cove」

  (2010.11.10)  この映画を見終わって、ふと、思った。なぜ、こうした実態を知っていたはずの日本の新聞社はこれまで黙して、語らなかったのだろうと。その理由は、新聞社が和歌山県などで不買運動が起きるのを恐れたからだろう。

  もう一つ、考えさせられたのは、

 日本では伝統漁法であったとはいえ、知性を持っているうにも感じられるイルカを追い詰め、食料として捕獲するため、昔では考えられないくらい大量に殴り殺す、刺し殺すのはダメだが、安楽死のような殺し方ならいい、というような単純な問題でもないという

 ということだった。

  公開されてこの半年で、日本を除く各国で24もの国際的なドキュメンタリー賞を獲得したアメリカ映画「ザ・コーヴ」を浜松市民映画館「イーラ」で見た。あの第82回アカデミー賞(長編ドキュメンタリー賞)受賞作だ。

 観客は、平日ではあったが、午後7時からの上映で、わずかに5人だった。

 和歌山県太地町のある入り江でのイルカ漁の実態に迫った話題の映画も、はや日本では熱も冷めたようだ。この映画のテーマを一言で言えば、

 イルカ版「反捕鯨問題」

といえるだろう。聴覚の面では、いやそのほかの面でもひよっとすると人間以上に知性的な動物であるかもしれないイルカ殺しは許せない、というわけだ。なんという残虐な殺し方だ、という叫びも聞こえてきた。確かにむごたらしかった。

 また、多角的な視点から取材をしていて、決して

 環境保護と日本の食文化との論争という単純な二項対立

でテーマを追いかけていない。強引な取材姿勢ではあっても、10年以上にわたる綿密で執拗と言っていい調査の裏づけがあり、彼らの主張があながち軽薄として、一概に無視し得ないという印象を強く持った。

 日本で上映するに当たって、登場する日本人関係者の顔にぼかしをかけるなど、一定の配慮はなされている。ひとことで言えば

 ジャーナリスティックなドキュメンタリー映画

と言えるだろう。イルカ殺しはやめろという監督の主張を一方的に押し付けるのではなく、見る人に実態を示し、その背景を含めた材料も与えて、日本人によく考えてもらいたいという映画である。

 イルカ漁というと、太地町ばかりが有名だが、実は、小生の暮らしている静岡県の伊東市でも毎年、漁獲量を大幅に制限して「イルカ追い込み漁」が水産庁から許可されている。こうした漁法は伝統漁法であり、違法ではない。9月から翌年の3月までが漁期。

 こういう映画を、日本人ではなく、外国人につくられてしまったことを日本人として恥ずかしく思った。日本のジャーナリストは何をしていたのか、と猛省した。

  ともかく、イルカと人間の共存の道探れといった新聞社論説委員風の正論では片付かない映画だった。多くの日本人に見てもらいたい一本である。2010.11.10

  追記

  その後、2010年12月2日付静岡新聞朝刊によると、

 この映画で海洋生物の水銀汚染について語った遠藤哲也北海道医療大准教授が、上映権を持つ東京の会社と配給会社に対し、損害賠償と該当部分の削除を求めて、東京地裁に訴えていたことがわかった。取材時、イルカ漁非難を意図した映画の取材であることを隠したまま取材され、その映像を恣意的に編集し映画化したことは、「科学者としての信用を失墜させる行為」であると准教授は主張している。同日開かれた初公判では、訴えられた会社側は争う意向とみられるという。

 裁判所は、表現の自由と、基本的人権の尊重との兼ね合いが争点になる難しい判断を迫られるだろう。どこまで表現の自由が認められるのか。映画の公益性のためには、どこまで個人の名誉毀損が容認されるのか、意外に線引きは難しい。

   これについては、所沢ダイオキシン報道訴訟において、テレビ朝日側と農家との訴訟を思い出す。このときは、さいたま地裁は、信用を失墜させられたと訴え、損害賠償を求めた農家側の訴えを退けた。テレビ局側に名誉毀損はあったものの、放送内容が大筋で真実であり、しかも、放送の目的には(国民の健康被害を防止するという)公益性があったと判示した(2001年5月)。

 補遺 2012年10月31日

 なお、日本人のイルカ観についての優れた論考に、中村羊一郎静岡産業大学教授の

 『イルカの眼』(羽衣出版、2009年)

がある。同氏は、全国各地のイルカ漁について取材しているが、この本でその一部を紹介している。日本人のイルカ観とは、西欧の水族館の「かわいい」イルカ観とは違い、イルカは神からの贈り物という考え方であることを付記しておきたい。

|

« 大きな一歩 (Giant Dip)  来るか、日本の太陽系大航海時代   | トップページ | 飄々として毅然 糖尿病がエアロビクス日本一を支えた 世界デーで考える »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント


一回で8万ゲットォォォォォ!!!!
http://gzv2zw8.ran.tooben.net/

ぶっちゃけ経験ゼロでもなんとかなるもんだなwwww
オレ女に全部おまかせして、ほぼ寝てるだけだったぞwwwwww

投稿: こんなんでいいの!? | 2010年11月13日 (土) 09時02分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/49992261

この記事へのトラックバック一覧です: あの入り江で一体何があったのか ドキュメンタリー映画「The Cove」:

« 大きな一歩 (Giant Dip)  来るか、日本の太陽系大航海時代   | トップページ | 飄々として毅然 糖尿病がエアロビクス日本一を支えた 世界デーで考える »