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記憶力のいいことは幸せか 

 テレビ静岡(フジテレビ系列)の番組「ベストハウス123天才脳シリーズ」に脳科学者の茂木健一郎さんが、久しぶりに出ていた。相変わらずの〝活躍〟に感心した。

 トランプ52枚をランダムにシャッフルして、あるシャッフル後、それを、記憶の天才と称する被検者に1分程度見せて、その後、茂木さんが、再び、シャッフル。そのトランプを見せた元とおりに52枚を並べ変えてもらうという趣向である。

 この実験は、単に数字を元とおりに並べ替えるよりもはるかに難しい。ダイヤ、スペード。ハート、クローバなどのカード種類と、そこに書かれている数字をセットで記憶しないと、元通りには復元できないからである。

 記憶力世界チャンピョンという被検者のベンさんという50代の男性は、見事、数分で、完全に正しく、元通りに並べ替えていた。確かに驚異だ。

 記憶方法は、数字などを絵にしてイメージをつくり、物語をつくり記憶するというのがコツだそうだ。

 ベンさんは、今、1セット52枚のトランプではなく、36セットのトランプで世界記録に挑戦しているのだという。全部で1872枚だから、もうこれは人間業ではない。

 番組では、もう一人、なんでも記憶してしまうリック・バロンさんという中年男性アメリカ人も登場した。この人は、物語にして数字を思い出すのではなく、出来事の起こった日時と曜日を瞬時に、何の努力もしないのに思い出せるというのだ。

 起こった出来事の日付記憶人

というのだ。これは、出産時に起こった、ある種の脳の病気

によるものだろう。超記憶力症候群というステキな名称を番組では使っていたが、いわゆる「サバン症候群」という病気だろう。

 しかし、〝病気〟とはいえ、人間の脳には、まだまだ知られざる能力が眠っていることをうかがわせる。脳障害はたいていその人に悪影響を与えるが、人間の脳の新しい機能がまだまだあり、この3次元世界や宇宙についての認識を今とは根本的に異なるものにしてしまう可能性がある。

 そんなことを考えさせる貴重な本に

 「脳のなかの幽霊」(角川書店、ラマチャンドラン著)

という世界的な名著がある。小生の終生の出会いの本であり、

 人間とは何か

 宇宙とは何か

ということを人間の脳の認識機能から深く、哲学的に示唆してくれる著作だ。何度読み返してもそのたびに信じられないくらい脳の不思議を思い知らされる

 ところで、サバン症候群の若者が書いた不思議な、不思議な本当の話

 「ぼくには数字が風景に見える」(講談社、ダニエル・タメット)

もびっくり仰天の本だ。

 最後に、記憶力がいいことは、一般にはいいことだ、幸せなことだと信じられている。しかし、果たしてそうか。記憶がたかだか8時間しかもたない数学者を主人公にした

『博士の愛した数式』(小川洋子、新潮社)

はいかにも、芥川賞作家らしい視点と筆力でさわやかに私たちに、そのことを考えさせてくれる。

 本の紹介は、これくらいにするが、茂木さん出演の仰々しく騒がしい番組にはこうした考察がないのは仕方がないとしても、脳科学者の茂木さんに

 深い哲学的な考察

を踏まえて、脳機能の不思議さをほんの少しでも視聴者に訴えていたら、ただの「驚き番組」に堕しなかったであろうと惜しまれる。脳の記憶部分の「海馬」ばかり説明しているようでは、三流科学者になってしまう。世界的な科学者らしい一言がほしかった。所詮、この人は-いや、愚痴になるからやめておこう。2010.09.18

 

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