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広島原爆「死亡曲線」 日本の医学界は何をしてきたか 長崎にもあるはずだが

 先日のNHK「封印された原爆報告書」を見た感想を一言で言えば、

 日本の科学界、医学界の恥部

をあばいたといえるだろう。この番組では、自ら開発した広島原爆の威力、殺傷能力を知りたいアメリカと、731細菌部隊など戦争犯罪から逃れたい旧日本陸軍(医務局)の利害が一致したことから、日本側は、原爆投下直後の広島原爆被害の

 医学的調査報告書(181冊の英文ファイルで構成、総計1万ページ)

を国家プロジェクト規模、つまり、都築正男東京帝国大学教授ら約1300人を動員して、アメリカから頼まれもしないのに、積極的に情報収集にあたり、わざわざ英文に翻訳して、アメリカ側に渡していた事実が克明に暴き出していた。日本政府は、投下で被曝した日本人よりも、投下したアメリカに協力することを優先したのである。あるいは、そう思われても仕方がない実態だ。調査を命じた三木某旧陸軍医務局少佐も、取材証言で

 「731部隊のようなこともあり、戦争犯罪から日本が逃れるのに、報告書づくりは役に立つ。それも、早く自発的に報告書を提出すれば、それだけ『有効なカード』になる」

との趣旨の発言をしている。占領軍への配慮、迎合であろう。いずれ要求があるはずだから、早く報告書を作成して、こちらから持って行ったほうが得策という判断という見方を三木少佐はインタビューでこたえていた。

 せっかくの被害調査が、肝心の日本人被害者の救済にはまったく生かされず、アメリカの戦後の核開発にのみ貴重なデータを提供していたという。

 これは、いわば、被爆国にしかできない極めて重要なデータである。しかし、その被爆国の被害者救済には、長く非公開扱いにされて、一切、活用されなかったのだ。

 その代表が、爆心地からの距離によって死亡率がどう変化するか、学校で集団で学んでいた17000人の子どもたちの死亡被害状況からまとめられた図である。提出(あて先はアメリカ陸軍、アシュレー・オーターソン大佐)された181冊の英文ファイルからは、この死亡曲線などを含む成果がアメリカ軍によってりっぱな論文(全6巻)にまとめられていた。しかし、つい最近ので、極秘扱いで、公開されていなかったという。

 この調査は、原爆投下直後の8月8日にスタートしている。

 とすれば、必ず、長崎原爆の投下直後にも、広島と同様の調査が行われたはずだ。広島との比較から、さらに精密で貴重なデータが得られることは科学者ならすぐにわかるはずだからである。ただ、この番組では、こうした長崎原爆の医学調査報告書があるはずたとの言及はなかった。今後の調査が期待される。

 これらのデータは、旧ソ連は、シベリアでの原爆実験では、ヤギなどの動物を使って収集しているが、人間への殺傷力調査は、さすがにできなかっただろうから、アメリカへの日本のデータ提供は、アメリカにとっていかに貴重であったかが、わかろうというものだ。

 この調査報告書づくりは、いわば、

 原爆版731部隊

というべきだろう。被爆国日本のおぞましい実態を暴いたものとして、この番組を高く評価したい。2010.08.08

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