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8・22韓国併合100年 「坂の上の雲」を読む

8月22日は、

韓国併合100年

である。8月10日に、この併合について、

 「その意に反して行われた植民地支配」

との文言が菅直人首相談話に盛り込まれた。併合に関しては、「併合条約は強制的にていけつさせられたものであり、無効」との立場を堅持する韓国側に近い歴史認識である。これに対し、日本側は総じて、当時の国際法に照らして、有効との立場。これまでの政府見解は、この線に沿って、ややあいまいに、1965年の日韓基本条約第二条「(併合条約は)もはや無効」との見解を今も、堅持し、今回の首相談話発表後もこの「もはや無効」見解の見直しは考えていないという。

 歴史の事実は両国で一致することはあっても、歴史認識はどんなに議論しても、その立場が異なることから、完全に一致することはないだろう。また、一致させなければならない必然性もないように思う。とすれば、お互いの立場を尊重して、過去の事実を無視せず、直視し、

 未来志向

で対応していくことが現実的であり、相互利益につながるたろう。政治とは、結局、妥協である。ただ、無原則ではなく、未来志向という両国相互の利益を考えた上での妥協なのだ。

 こうした併合(1910年8月)が、どういう経緯で行われるようになったのか、あらためて

 「坂の上の雲」全6巻

 を今、再読している。日清戦争、日露戦争、それを受けた韓国保護条約、そして、併合条約。当時の東アジアの国際情勢を読み込みながらの司馬遼太郎の悪戦苦闘の歴史小説である。

 このタイトルであるが、司馬さんは、小説の中で

 この当時の日本は、個人の立身出世ということが、この新興国家の目的に合致していたという時代であり、青年はすべからく大臣や大将、博士にならねばならず、そういう「大志」むかって勉強することが疑いもない正義とされた。(第一巻より)

と書いている。つまり、坂の上の雲とは、個人の大志=国家の正義を指すのだろう。そこには国民にも国家にも、ひたむきな明るさ、伸びやかさがある。それを司馬さんはその明るい上向き視線を「坂の上の雲」と、文学的に表現したのであろう。

 しかし、そうであっても、朝鮮にとっては、この「坂の上の雲」は、韓国併合という歴史的な屈辱への道につながっており、いい迷惑であったろう。日本の植民地支配の第一弾であることは間違いない。

 司馬さんの小説には、一切、朝鮮側からの見方が一切ないのは、やや寂しい。小説のテーマがあいまいになるのを避けたからだろう。

 この併合にいたるまでの、日本海海戦などロシアとのすさまじい戦争については、ロシア側から描いたものに

 「海の史劇」(吉村昭、新潮文庫)

という名著があり、司馬さんの大作読了後に、読んでみたい。日露戦争では圧倒的に有利なはずのロシア側にも、負ける理由がそれなりにあったことがわかるだろう。2010.08.22

 追記

 日韓併合など、日韓の在り方については、司馬遼太郎さんが

 「以下、無用のことながら」(文芸春秋)

の中の

 日韓断想

で、

 「私が、民国の韓国や共和国の朝鮮、または日本を思うとき、はるかな背後に、遠景として、当時まだ沃野だったシベリアの野や湖が広がるのである。 中略  「同じ顔の兄弟」を思うとき、シベリアの古代風景を脳裏に展げるべきである。わずか数千年の時間の前にはソウルも平城も東京も、実に小さな存在にすぎない。 中略  近景だけしか見ないのもこまる」

と指摘し、未来志向とともに、遠景志向も大事だと強調している。

 鋭い指摘だと感心した。2010.09.19

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コメント

『こうした併合(1910年8月)が、どういう経緯で行われるようになったのか』,あらためてフィクションを再読すると,何か得られるのだろうか。科学的批判精神を持たない人は,何と『チャチ』な反応をすることだろう。

投稿: | 2010年8月24日 (火) 01時55分

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