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梅棹忠夫と文化社会学

 7月7日付静岡新聞朝刊に

 梅棹忠夫氏、死去 行動する民族学者

と出ている。90歳。梅棹さんと言えば、ほとんどの人は

 文明の生態史観

 ベストセラー、岩波新書『知的生産の技術』

を思い浮かべる人が多いのではないか。小生も

『文明の生態史観』(中央公論社、1967年)

をときどき書棚から取り出しては読み返してきた。この本については、ほとんどの人が絶賛しているが、今の世界を主導しているアメリカの位置付けができていないなど、大きな欠点もある。しかし、スケールの大きい著作であることは間違いない。

 ただ、梅棹さんは、こうした大きなスケールでものを考えるだけでなく、たとえば

 『日本人の知恵』(中央公論社、1962年)

という、いわばスケールの小さな著作もあり、これが梅棹史観の土台になっている。手元にあるこの本を開いてみると、駅弁、おみやげ、会館、応援団、出前など、いろいろな日本人の知恵について、「歴史の糸をたぐることをつねに忘れずに」(あとがき)、「生きている現代社会の(都市)民俗学」(あとがき)を目指した。いまで言えば、

 文化社会学

ということだろう。文系、理系(梅棹=生態学、人類学)の学者が京都岡崎の「たき本」に集まり、共同討議形式で結論を導き出していったという当時としては珍しいやり方だった。この企画の最初のきっかけは朝日新聞社の提案らしい。

 文化社会学には文系だけでなく、理系の研究者も参加することでより豊かな発想が生まれ、学問の見通しがよくなる。しかも、社会的な説得力も出てくるのではないか。

 ところで、エピソードをひとつ。梅棹さんの訃報に接して、思い出したのは、万博跡地に開館した国立民族博物館の初代館長に就任して間もないころ、館長室に一度たずねたときのことだ。記憶では、室内に

 ひらがなタイプライター

がおいてあった。1970年代半ばだったと思う。梅棹さんは、あまり知られてはいないが、漢字が日本文化の進展を阻害するとして、戦後一貫して漢字廃止を主張。主張するだけでなく、ひらがなタイプライターまでつくった、

 ひらがな論者あるいはローマ字論者

だった。最後まで、意気軒昂な漢字廃止論者だったと聞いている。日本文化をこよなく愛する梅棹さんらしいが、残念ながら、

 漢字は日本からなくなることはないだろう

と、梅沢さんの大往生に接し、感じている。漢字はもはや日本人の血となり、肉となっている。それを承知で、廃止を主張し続けるところが、日本を愛する梅棹さんらしいとも言える。

 冥福を祈りたい。2010.07.07

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