« 変な給食 子供にとって「牛乳」は健康に良い食品か 牛乳神話について | トップページ | 富士山新聞 ふるさとの富士山、なんと321座とか »

弁護士にとって再審裁判の敵は誰か 袴田事件「救う会」に参加して

 5月17日付中日新聞浜松版に、死刑囚、袴田巌(74歳)さんを「救う会」集会の記事が小さく出ている。

 袴田事件無実訴え集会

というベタ記事だ。1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で起きたみそ製造会社経営者1家4人殺しである。捜査段階での拷問に近い取り調べで得た「自白」供述が招いた冤罪ではないかとみられている事件だが、集会に参加してみて、遺留品とされる「5点の衣類」などに腑に落ちない疑問が次々に出てきていることを知った。袴田さんがとてもはけない衣類だったという。死刑判決を書いた静岡地裁元裁判官、熊本典道氏も、無罪意見だったが、主任裁判官として、多数決の結論、死刑判決を欠かざるを得なかったと告白している。ただ、この事件では、足利事件のように、巌氏が犯人ではないという決定的な証拠もないという際どいところが、今一つ再審が盛り上がらない要因ではないか。しかし、その場合は、

 推定無罪の原則

を適用すべきだが、これが現実には、死文化しているという現状がある。むずかしい。

 参加して、印象に残ったのは、再審を申請した場合の証拠開示、再審決定、さらに再審裁判での弁護士の「敵」というのは、この集会で講演した袴田事件再審弁護団、伊豆田悦義弁護士によると、

 検察官ではなく、裁判官

であるという指摘だった。先輩裁判官の下した確定判決に疑問を投げ掛けるからだ。そんなことは裁判官とてもなるべくならしたくないのが本音であると指摘していた。その通りだろう。推定無罪の原則がなかなか現場で適用されない背景でもあろう。

 そうしたことに打ち克ち、再審への道を開くには、まず再審申請した後の弁護士、検察官、裁判官の三者協議において、証拠開示を求めるに際し、

 事件との関連性、無罪を証明にとっての重要性

が論理的であることが求められる。ここが勝負であり、現在、検証実験など、その準備をしているという。しかも、その証拠に新規性や明白性が求められることから、再審決定の道は一般市民が考える以上に険しい。こうした地道な作業を現在、袴田事件再審請求後の現在、行っているという。

 同時に、伊豆田さんによると、証拠の扱いについて裁判官は自由裁量が認められているが、

 請求をぞんざいに扱ったり、あるいは再審決定しても、軽々しく提出証拠を扱うと、注目している国民から批判される

という緊張感を再審裁判官、あるいは再審請求にかかわる裁判官に持ってもらうことが大事だ。その意味で、こうした「救う会」の活動は大事だという。市民の事件に対する関心度が高くなれば、その分、裁判官は、これまでできるだけ再審は開きたくないという心理から、再審を決定し、真実を明らかにしなければならないという方向に心証が変わる

という。

 この話を聞いて、ふと、最近、つまり、菅家利和さんの足利事件(東京高裁、再審開始決定、2009年6月)以後、

 再審が動いた

という事例が複数ある。

 布川事件、最高裁が検察の特別抗告棄却、再審開始決定(2009年12月)。再審請求から26年ぶり。水戸地裁で再審。

 狭山事件、最高裁が検察の特別抗告を棄却、再審開始決定。東京高裁も検察に証拠   開示を勧告(2009年12月) 再審請求から32年ぶり。東京高裁で再審。

などがその例だ。世論の動向が、最高裁や高裁を動かしたと言えよう。

 その辺の事情については、

 季刊誌「冤罪File」(キューブリック)2010年3月号の「特集 再審が動いた!」に詳しい。

 「救う会」= 渥美邦夫会長 浜松市浜北区中瀬950-3 053-588-0177

  追記

 5月19日付静岡新聞の社説に

 袴田事件/まず死刑執行の停止を

という主張が出ていた。死刑囚が心神喪失の状態に陥った時には法務大臣の判断で死刑執行の停止ができるという刑訴法の条文を適用するべきだという論旨であり、袴田さんはこの規定に適合するとしている。一端停止して、その上で再審で白黒つけるべきであるという趣旨だろう。これまでこの規定が死刑囚に適用された事例はないらしいが、今回の「救う会」に参加してみての実感として、妥当な判断ではないかと感じた。

 ただ、被害者の遺族としては、複雑な思いであろう。その辺も考慮して、法務省は適用するかどうか見極めたいところだ。というか、法務省としては前例がないところから、踏み切れないだろうが、死刑廃止など人権派の千葉景子法相は、執行停止には前向きなのではないか。今後の推移を見守りたい。2010.05.17

|

« 変な給食 子供にとって「牛乳」は健康に良い食品か 牛乳神話について | トップページ | 富士山新聞 ふるさとの富士山、なんと321座とか »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/48381859

この記事へのトラックバック一覧です: 弁護士にとって再審裁判の敵は誰か 袴田事件「救う会」に参加して:

« 変な給食 子供にとって「牛乳」は健康に良い食品か 牛乳神話について | トップページ | 富士山新聞 ふるさとの富士山、なんと321座とか »