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温暖化は本当に人為的な原因で起きているか。 一度は論争相手の立場で考えてみよう

 静岡新聞の社説が、国連の温暖化報告書、いわゆるIPCC報告書をめぐる一連のデータ改ざん疑惑について、

 検証できる仕組み要る

と主張している。データの公平、公正な選択法、その品質を保証するルール、将来予測の計算に使った重要データの公開など、報告書に問題がないか、第三者が検証できる仕組みが必要ではないか、と問いかけている。そのとおりだろう。

 思うに、通常の論文の場合のように、論考の後に、筆者のe-mailアドレスを付けておくことを提案したい。そうすれば、問い合わせができるわけだから、筆者としても、データの取り扱いが慎重になるだろう。また、公開するかどうか、これまでは筆者の裁量に任されていたが、これからは、重要データについては原則公開を報告書執筆の条件にしてはどうか。この半年間のごたごたでは、公開せよ、ダメだという押し問答で混乱し、温暖化懐疑論者の不信感を一層募らせたことはやはり、反省すべきだろう。

 そんな思いで、5月23日付朝日新聞「書評欄」を見ていたら、なんと、チェコ大統領(経済学博士)が、新著

 『「環境主義」は本当に正しいか?」(日経BP社)

を書いたと書評が出ている。環境保護は必要だが、経済成長と技術の進歩と歩調を合わせて対応すべきであり、環境最優先主義、あるいは環境第一主義は結局失敗すると警告しているというのだ。うなずける。さらに、そもそも主流派の学説に疑義を唱えており、書評者は刺激的な著作と評価している。環境保護を絶対的な真実と信奉する謙虚さに欠けた傲慢さを嗜めているらしい。それは宗教であり、科学ではない。一読してみたい。

 この著作は明らかに、温暖化懸念派のアル・ゴア元米副大統領を意識したものだろう。「不都合な真実」は懸念派にも懐疑派にも双方の陣営にあるのだ。

 ところで、温暖化論争が科学スキャンダルにまで過熱しているらしいので、JR静岡駅前の大型書店「戸田書店」で、「地球温暖化」のコーナーをのぞいてみた。確かに、激しい、ヒステリックとも言えそうな書名が目白押しだ。

 「地球温暖化は止まらない 地球は1500年の気候周期を物語る」(東洋経済、S.フレッド・シンガー、デニスT.エイヴァリー)

 この本は、いわゆる国連のIPCC報告書同様、いわゆる正統派の主張。これについては、それこそ山のように多くの本があり、このほかにも、

 「温暖化地獄」(ダイヤモンド社、山本良一・東大生産技術研究所教授)

というのもある。予測を超える現実、暴走する温暖化と勇ましいというべきか、おどろおどろしい宣伝文句がついている。この類の本は、ここではこれ以上紹介しない。

 問題は、この正統派の主張に対して、異義、疑義を唱えている本がここ数年でも続々出ている。書棚をのぞいてみると、

 「暴走する『地球温暖化』論 洗脳・扇動・歪曲の数々」(文芸春秋)

 いかがわしい本ではない。武田邦彦(元名大教授で中部大学総合工学研究所教授)、池田清彦(早稻田大教授)、渡辺正(東大生産技術研究所教授)、薬師院仁志、山形浩正とそうそうたる著者たちである。武田氏は、内閣府原子力安全委員会専門委員や文科省科学技術審議会専門委員でもある。

 こんなメンバーが、頭を冷やして「環境危機」の真贋を見極めよ、「地球は危ない」は本当か、と問いかけているのだから、正統は穏やかではないだろう。

 温暖化懐疑論者も、負けてはいない。こんなタイトルの本がある。

 「地球温暖化対策が日本を亡ぼす」(PHP)

 著者は、東工大理学部教授の丸山茂徳氏。今のようなEU主導の温暖化脅威論は〝不都合なウソ〟と手厳しい。

 「地球温暖化戦争」(新潮社、グウィンチ・ダイヤー)

 気温が2.6度上昇すると核戦争が起きると予測しているから、びっくりだ。

 まだまだあるが、

 「地球温暖化のウソとワナ 史上最悪の科学スキャンダル」

というのもある。これも歴とした著者で、伊藤公紀横浜国立大大学院教授と先ほどの渡辺正東大教授だ。

 こうなると、温暖化は人為的に起きているという正統派の主張を本当に信じていいのだろうか、不安になる。

 一度、論争している人は、自説を主張するだけでなく、論争の相手の立場で考えてみる必要がありはしないか。自分の説は間違っているかも知れないという謙虚さで点検するのだ。なぜなら、そもそも温暖化の人為性については、不確定性がかなりあるからだ。科学分野のこうしたあいまいさが政治の介入を許し、混乱を招いている。

 双方ともに、一度、頭を冷やす必要がある。そして、ルールをつくろう、そんなことを社説は訴えているのではないか。2010.05.23

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