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NPT再検討会議で思うこと 長崎、そして焼津がよみがえる日 第五福竜丸はなぜ「夢の島」にあるのか

 今、NYで5年に1度の

  NPT(核拡散防止条約)再検討会議

が開催されている。これに伴い、民間の平和国際会議も開かれて、被爆マリア像を携えた長崎大司教の高木三明さんや、ビギニ環礁の水爆実験で被爆した第五福竜丸の元乗組員だった大石又七さんが核廃絶を訴えた。

 再検討会議では、広島市長、長崎市長、第五福竜丸の母港のある焼津市の清水泰市長も参加し、分厚い市民から集めた廃絶署名を再検討会議の責任者に手渡していた。

 こうした中、あらためて、広島、長崎の被爆に関する本、3冊をこの大型連休明けの休みにまとめて読んでみた。

 「長崎 旧浦上天主堂 1945-1958 失われた被爆遺産」(岩波書店、横手一彦・文)

  「ナガサキ 消えたもうひとつの「原爆ドーム」」(平凡社、高瀬毅)

  「ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆」(朝日文庫、山口疆)

最初の2冊は、

 なぜ、長崎には被爆遺跡が残っていないのか

という素朴な疑問から出発し、今もなお、広島に比べて、自虐的ではあるが、

 「劣等被爆都市長崎」と地元で言われたりもする

のはなぜかに迫っている。旧浦上天主堂の廃墟を完全に取り壊したのには、どこからか政治的な、あるいは宗教的な強い要請があったのではないかとの仮説が提示されており、うなづける面もある。仮説を具体的に立証する確証をつかむのはなかなかむずかしいだろうが、今後の検証が待たれる。

 最後の山口さんの書は、まさに

 衝撃の書

である。こうした二重被爆者は、同書によると、約200人ぐらいいたのではないかという。この山口さんについては、このブログ(1月16日付)で書いた。ここではこの本に書かれている気になる一文を紹介したい。それは、ドキュメンタリー映画「二重被爆」の企画・プロデューサー、稲塚秀孝さんの文章である。この本の最終ページに出ている。この映画には山口さんも登場する。その山口さんは、2006年8月、国連軍縮委員会事務局の主催で、国連のホールで「二重被爆」を上映した際、150人の観客に向って、静かに次のように述べたと言うのだ。

 日本のことわざでは、「二度あることは三度ある」と言います。しかし、絶対に3度目の被爆があってはならない

と訴えたのだという。その通りだとつい、思ってしまう。

 しかし、事実は、1954年3月に第五福竜丸事件として三度目の被爆がまたもや日本人に発生していたのだ。長崎も「劣等被爆都市長崎」という自虐的な言い方が地元にあるが、山口さんのような人でさえ、こういう言い方をするくらいなのだから、第五福竜丸の母港

 焼津市もまた、忘れ去られた〝被爆地〟

なのだろう。焼津市は

 第一回の焼津平和賞を今月、2010年5月31日に発表し、6月30日に授与式

を行うことにしている。焼津市が、忘れ去られた〝被爆地〟とならないよう、しっかりした平和賞に育てたいものだ。そして、長崎のように市民が一つになりにくい環境をつくらないことだ。市民が素直に参加できないような市民感覚から遊離した平和賞や平和運動は、またまた禍根を残す。

  消えたもう一つの「原爆ドーム」

という言い方から、付け加えると、

 なぜ、第五福竜丸は都立第五福竜丸展示館(東京都江東区の夢の島公園内)にあるのだろうか

 なぜ、廃船(1967年)後、被爆時の母港、焼津港に展示されなかったのだろうか

 あるいは、なぜ、焼津市には、今、その小さな模型しか展示されていないのだろうか

という素朴な疑問が強く残った。その模型は、焼津市歴史民俗博物館にある。その経緯はともかく、長崎に被爆遺跡がないのと、どこか通底するものがあるように思えてならない。都合の悪い歴史を消し去ろうとするものへの怒りがこみ上げてきた。この場合、歴史を消し去ろうとするものが、その時々の権力者とは限らない。「原爆マグロ」はいらない、イメージが悪くなるという切実な声をいかに乗り越えていくか、そこが悩ましい。だから、

 核廃絶の道はよほど遠い

 若き日の数奇な運命と、晩年の崇高な行動をつづった山口さんの近著などを読んで、そんな強い思いを抱いた。2010.05.09

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