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動物の地震予知

4月16日付 静岡新聞夕刊の随筆欄「窓辺」に、地震防災対策強化地域判定会委員の吉田明夫(浜松市出身)さんが、

 動物の地震予知

について、自分の考えを述べていたのが、興味深かった。結論的に言えば、

 いつ、どこで、どのくらいのという「地震予知の3要素を、動物の異常行動を基に予測しようというのは、一般的な手法として実際的ではない」

ということだった。動物は、自分の生存にかかわる異常を感じるかも知れないが、それが必ず地震であるとは限らないというのがその理由だ。地震はその1つにすぎないというわけだ。

 大きな地震が起これば、生存にかかわるから、地震を察知して、異常行動をとるかもしれない。しかし、異常行動をとったからといって、それが地震を察知したからだとは言えないのだ。つまり、地震の発生と動物の異常行動が一対一に対応していない。だから「一般的な手法として実際的ではない」という持って回った言い方になったのだろう。

 大変に慎重な言い方だが、こういう言い方は、吉田氏が動物による地震予知を否定したかのように誤解しかねない。

 だから、動物の異常行動を予知につかえないない

と主張しているのか、それとも、

 (実際的ではないが)つかえる

と言っているのか、あいまいなのは困ったことだ。吉田氏は、文章全体から判断すると、動物の地震予知能力について、否定も肯定もしていない。結論の部分の「一般的な手法として実際的ではない」というのは、どういう意味か、はっきり、わかりやすく書いてほしかった。特殊な手法としては実用的であると主張したいのであろうか。だったら、動物の予知能力をおおいに活用していいではないかとならないか。特殊であろうが、一般的であろうが、予測できればいいのだから。一般的な手法として実用的である、というのはどんな場合なのだろう。現在の正統派地震予知研究の体積ひずみ計のことを指すのだろうか。しかし、それとて、確実に予知できるとは正統派予知研究者も保証していない。見逃しや空振りは大いにありうると予防線を張っているくらいだ。

 科学者の言葉には、読者が誤解しないように厳格にしようとして、かえって誤解を招くような表現がある。こう発言すると、これはどう受け取られるか、読み手の立場に立って吟味していない。自分だけで独り合点して、正確に表現したつもりになっている。これはこわい。2010.04.17

  追記 2010.04.21

 この問題について、直接、吉田氏(神奈川県温泉地学研究所、気象庁元地震予知情報課長)に真意を問いただしてみたところ、つぎのような回答だった。

  一般的な手法として実際的ではない、というのは、具体的には、気象庁などの公的機関が有効な防災情報として公表するものとしてはつかえない、という意味。

  ただ、吉田氏は、個人的には

  動物の異常行動については、それが何を意味するのか、科学的な分析が今後も必要であり、大いに関心を持っている

とのことだった。いずれの日にか、特定の動物について、ある特定の異常行動が地震発生の前触れとして、相当高い確率で、一対一で対応するということが突き止められる可能性があるかもしれないというわけだ。 

  だから、随想で、吉田氏は、動物の異常行動の観察からは予知はできないと主張しているわけではないのだ。異常行動をもっと絞り、磁気の乱れや地電流の変化、あるいはそれらに伴う電離層の変化など解明を進めれば、あるいは成功するかも知れない。ただ、現状では「一般的な手法としては実際的ではない」のだ。

  進化した人間ではすでに失われた「超能力」をほかの動物はいまだ備えているかも知れないのだ。それを活用する研究だ。人間はもっと謙虚であるべきだ。

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