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偉大なる屈託の人 評伝「星新一 一〇〇一話をつくった人」

 読書好きで、ショートショートの名手と言われた星新一さんの名前を知らない人は、おそらくいないであろう。しかし、名手と言われるまでになるまでに、いかに苦労したか、這いずりまわるような精神的な苦悩や模索があったことを近著、

評伝「星新一 一〇〇一話をつくった人」(最相葉月、新潮文庫)

で知った。上下刊で800ページにもなるが、星さんを知る100人以上の関係者に取材し、まとめた労作だ。オリジナルな手紙や遺品を整理し、そこから得られた情報も活用しているだけに、星さんの人間像を掘り深く浮かび上がらせている。ざっと読み終えて思うのは、あらためて、

 SF小説とは何か

ということだった。星さんは、科学小説、SFが文学作品として、一段低く見られていることに晩年まで苦悶したらしい。

 「なんでぼくには直木賞くれなかったんだろうなあ」

と、どこかでショートショートを軽んじている編集者を恨んだり、抗議したりしていたという。

 この評伝は、通常の

「私は偉かった、彼はすごかった」

という類のものとは、一線を画する仕上がりになっている。星さんを直接知るインタビューと遺品整理から得た生情報のもつ迫力だろう。

 星新一は、最後まで、屈託の人だった。それも、この評伝上下2巻の表紙の穏やかな星さんの表情からはおよそ想像できないほどの

 偉大なる屈託の人

だった。2010.04.16

 追記 2010.04.16

ところで、先の

 SFとは何か

ということだが、星さんは、結局、何と戦っていたのだろうか。ショートショートがなかなか文学として日本に受け入れられない理由は、日本では自然主義文学が主流だからではないか。異様な状況設定や異様な出だしはしない。最後にオチはは要らない、というのが鉄則だ。人間を描け、登場人物の心の葛藤を書き込めというのだ。

 しかし、ショートショートでは、何よりも

 異様なシチュエーション、状況設定

が大事だ。つまり、星さんはこの狭間でもがいていたのだ。これでは直木賞がとれないのも無理はない。

 星さんは、アンチ自然主義文学を目指していたのだ。文学は否定していないが、自然主義は否定していたのだ。これでは、直木賞はとれない。

  ショートショートは、アンチ自然主義文学

なのだ。異様な出だしと、異様な状況設定と、ハッとするオチ。いずれも自然主義文学は否定していた。そんなことに気付いた。2010.04.16

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