« とうとう、「温暖化論争のでたらめ」と「Newsweek」3月10日号 | トップページ | 北海道森町の駅弁「いかめし」の驚異 シンプル イズ ナンバーワン 全国一 駅弁の甲子園 »

信じる者は治る 抗うつ剤の真実

 450円という安さもあって、駅のキオスクで車内暇つぶし用に何気なく買った「Newsweek」日本版(3月10日号)をぱらぱらと読んでいたら

 「抗鬱剤神話」の憂うつなジレンマ

という、ショッキングな記事を見つけた。5ページにもわたる記事だが、おもしろい。抗うつ剤の粒で、イラストをつくっているのも洒落ていてうまい。そのイラストも抗うつ剤ということで、抗うつ剤のつぶつぶで脳を描いていた。

 内容を簡単に言うと「欝は薬で治せる病気という概念を広め、医学界に革命をもたらした抗うつ剤。しかし極めて重度の患者を除けば、効き目は偽薬と大差ないと考える米研究者が増えている。患者の抗うつ剤に対する期待が効き目に大きく寄与するからだ」というものだ。

 憂うつなジレンマというのは、そのことを正直に患者に言うべきか、それとも、偽薬と大差ないとはいえ、せっかく効果があるのだから、唯一の希望である抗うつ剤の真実は隠しておくのが親切というものではないか、悩ましいということを指す。正直に言えば効果があるのに患者は処方する医師から離れていくだろう。黙っていれば、高価な抗欝剤を使い続けさせることになる。患者にみすみす出費を強いるようなことはかかりつけ精神科医として果たして親切なことか、良心の呵責に苦しむことになる。精神科医として憂うつだ。

 内容を結論的にひと言で言えば、次のようになる。

 薬を信じる患者は治る !

  抗うつ剤は病状改善に効果がある。ただし、その効果は偽薬と同程度。「極めて重度の患者を除き、抗うつ剤の効果の大半は患者の期待から生まれたものだ」。「脳への直接的な化学的作用によるものではない」。

 つまり、うつ病は、患者が処方された薬を本物と信じるかぎり、それが偽薬であろうと本物であろうと、薬で治る。逆に、処方された薬が本物でも、患者がそれを本物と信じなければ、偽薬程度の効き目もないというのだ。

 こうなると、信じる者は救われるのだ。

 さらに言えば、本物と信じた薬を飲まないで持っているだけで、うつ病は治る、かも ? !

  それにしても、米大手製薬会社、ファイザー社の広報担当者のコメントとして

 「抗うつ剤の効果がおおむね偽薬と変わらない」というのは医薬品を認可する「FDA(米食品医薬品局)でも学界でも業界でも周知の事実」

と書かれていたのにはびっくりした。ただし、これは、記事には注意書きがないが、重度の場合を除くという意味だろう。

 この記事には、抗うつ剤の効果を信じていなかった精神科医が、自分が軽いうつ症状になって薬を試してみたら効果があったことについて寄稿している。まさか、効果がなかったとは、商売柄、言えないだろうから、効果があったと書いたのだろう。ただ、本物の薬を信じていないのに、効果があったというのは、本文とは整合性がとれていない。効果がないはずだが、ひょっとしたら効果があるかも知れないと半信半疑だったからだろうか。それとも、本物は、偽薬と違ってある程度、直接的な脳への化学的作用があるったからだろうか。

 この精神科医の記事で面白かったのは、この抗うつ剤論争が過熱した要因としては

 抗うつ剤を処方しない精神分析医やソーシャルワーカーと、処方する精神科医との顧客獲得競争

があるとの指摘だ。精神分析医としては、薬に直接的な化学的作用があるとなれば、商売上がったりで、顧客が減るのではないかと恐れるというのだ。

 うつ病は、どの先進国でも、いまや「現代の国民病」と言われるほどに多くの国民を悩ましている。いずれ、日本でもこの問題が大きく取り上げられるだろう。この問題が米国で最近論争になったきっかけは、今年1月、抗うつ剤は軽度から中度のうつ病にはプラシーボ(偽薬)と同程度の効果しかないという論文(コネティカット大心理学者、アービング・カーシュ)が米国医師会報に掲載されたことだった。

 いずれ、日本でもこの論文は大きく取り上げられるだろう。450円は安かった。2010.03.12

|

« とうとう、「温暖化論争のでたらめ」と「Newsweek」3月10日号 | トップページ | 北海道森町の駅弁「いかめし」の驚異 シンプル イズ ナンバーワン 全国一 駅弁の甲子園 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/47791140

この記事へのトラックバック一覧です: 信じる者は治る 抗うつ剤の真実:

« とうとう、「温暖化論争のでたらめ」と「Newsweek」3月10日号 | トップページ | 北海道森町の駅弁「いかめし」の驚異 シンプル イズ ナンバーワン 全国一 駅弁の甲子園 »