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広島と長崎の二度、原爆にあった男 山口彊(つとむ)の 数奇な人生と崇高な行動

 数奇な運命というのは、こういう人の人生を言うのだろう。1月14日の夜の「報道ステーション」を見ていたら、最近、全身がんにより93歳で亡くなった二重被爆者、山口彊(つとむ)さんのことが紹介されていた。

 終戦の年、長崎市の会社員だった山口彊さんは、この年8月出張先の広島市で原爆の被爆を爆心地近くで受けた。瀕死の重傷で、なんとか汽車で長崎市の会社に戻って、一部始終を上司に報告したという。しかし、上司は

 一発の爆弾で、広島市のような大都市が壊滅するはずはない

となかなか信じてもらえなかったという。そのやり取りの中、なんと、長崎に落とされた二発目の原爆に被爆したのだという。

 えらいのは、戦後、自分が二重被爆者であることを隠していたが、息子が60歳で全がんで亡くなったのを機会に、積極的に非核平和を海外に向かって訴えていたことだ。なかなかしっかりした英語で受け答えていた。

 「国内で非核平和を訴えても空しい。核兵器保有国に行って、あるいは国連で訴えなければ非核平和は前進しない」

 そのとおりである。国内にこもっていては、世界に非核平和の切実な願いは届かない。

 その証拠に、山口さんの訴えに、

 3D映画の話題作「AVATAR」の監督、ジェームズ・キャメロン監督が

 「原爆をテーマにした映画を製作する」

ことを、山口さんの臨終間近のベッドサイドで誓っていた。これに答えて、山口さんは

 「(これで)私の役割は終わった」

と言い残して、その一週間後にこの世を去ったという。

数奇な運命の崇高な人生だったように思う。2010.01.16

  追記 2010.01.28

  この山口さんの死後のことが、1月26日付毎日新聞「記者の目」に出ている。山口さん担当の阿部弘賢氏(長崎支局勤務)の論考だ。山口さんが望んでいたにもかかわらず、山口さんの遺体が病理解剖され、研究機関に提供されることがなかったというのだ。その理由が、なんと、一般病院に入院していた山口さんの場合、大学病院などに病理解剖を依頼するための負担金、約26万円が入院病院にも患者側にもなかったというのだ。いろいろな事情があったのだろうが、たったこの程度くらいの資金で、貴重な遺志を生かせなかったのは無念である。せめて、今、流行の死亡時画像病理診断(Ai)ができなかったものか、数万円でできるはずなのだが、残念だ。

 それにしても、長崎大学が負担するとなぜ引き受けると言わなかったのだろうか。被爆者医療の研究拠点としてつとに全国に知られている大学なのに、あまりに残念だ。

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