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「被災者になって分かったこと」 元神戸新聞社論説委員長、三木康弘さんのこと

  先日、テレビ静岡を見ていたら、特集「阪神・淡路大震災から15年」として、

 「神戸新聞の7日間」

のドキュメンタリー調のドラマを放映していた。この中に、震災前だが、小生が一度あったことのある

 震災時の神戸新聞社論説委員長、三木康弘さん

が出ていた。三木さんは、震災後5年たった2001年4月にがんでなくなった。確か、ヨットマンだったと思うが、法学部出身とは思えないような、スポーツ好きのなかなかシャイで、すらっとしたダンディな方だった。三木さんは、震災で、父親をなくしたが、その体験を下敷きに執筆した社説

 「被災者になって分かったこと」

で知られている。震災に立ち向かうには、国家のしっかりした政策が大事だと書いていたように思うが、それよりもなによりも、それまでの社説は、しょせん、出来事を「他人事」として、論じてきたという忸怩たる思いを吐露していたのが、印象的だった。本音であろうが、それを紙面にするのはなかなか勇気がいったことだろう。どこか、ひょうひょうとしていた三木さんらしい。これには、

 父が被災で死亡した時、被災救援を頼んだが、

 声がするなど、今、生きていて、手を差し伸べれば助かる可能性がいくらかでもある被災者を優先して救援するという非情な現実を目の前にしたことが大きいだろう。いわゆる、トリアージに直面したのである。

 「理解できる。理解できるが、やりきれない」

 そんな三木さんの悲痛なうめき声が「社説」から聞こえてきそうだ。これこそが、血の通った我が事社説なだ。この社説を書いた三木さんは、ほかの被災者を慮って、書いてよかったかどうか、悩んだそうだが、こういう社説がもっとあっていい。建前の社説が多すぎるからだ。

 全国紙はいざ知らず、社説にしろ、論説にしろ、評論にしろ、当事者の痛みが伝わる

 血の通った論説、地域の匂いのする評論

が地方紙社説の基本だろう。そんなことをあらためて、三木さんは思い出させてくれた。ありがとう、三木さん。

そんな気持ちで、2010年の元日付神戸新聞社説 シリーズ「転換のあとに」

 20年の重み 新たな豊かさを再構築しよう     

を読んだ。「大転換の先に、本当の明かりが見えてくるのだろうか」という現状認識で始まっている。成長至上主義を脱し、ローカルから動こうとも呼び掛けている。「国のビジョンを待つだけでなく、地域からも「転換のあと」へ動き出したい」とも語っている。20年の重みとは、今山積している難題の発端の多くが20年前ごろにあるとの認識からつけたものだろう。

 これを受けて、加古川の取り組みを取り上げた3日付の社説も読んだが、

 結論を言えば、

 地域の匂いのする社説ではあるものの、まだどこか他人事の評論

という印象を持った。地域の出来事をわが事として取り上げているとは言い難い。

 大震災では、京都新聞社編集局に神戸新聞社臨時編集局を設置しているが、京都新聞の元日付社説は、三木さんの思いをまだしも伝えている。こうだ。

 新たな年に 包み込む力を社会に、地域に

として、「うっかり滑り落ちると二度とはい上がれない社会に、いつの間にかなっていたことに暗たんとする」として、社会がうすっぺらになっていると訴えている。ただし、この京都新聞の社説も、最後は

 「転換期に新たな羅針盤を携え、地域再生へ歩み出すのは私たち自身だ」

ともっともらしく締めくくっているのは、神戸新聞の社説主旨と同じ。つまり、京都新聞もまだ他人事社説なのだ。斬り結ぶ、つまり、新聞社が身を切って、あるいは、ライターの論説委員が身を切って具体的に何をするのか、それは余所においての社説なのだ。雑煮をたらふく食べているだけでは、むなしい。読者に響かない。

 私はそう思うのだが、冥界の三木さんは、これらの社説を読んで、どういう感想を持っただろう。あっ、そうか、そんな社説は読んでなかったか。三木さん、ごぶさたしてました。2010.01.21

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