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パンダのフンでごみ減量 ユーモア研究「イグ・ノーベル生物学賞」

 10月2日付各紙に載っているのだが、

 パンダのフンでごみ減量 ユーモア研究「イグ・ノーベル生物学賞」

という話題である。このほどハーバード大で授賞式が行われた。受賞者は北里大の田口文章名誉教授+北里大大学院生だった2人の中国人研究者。

 経緯は、こうだ。「田口氏は、ササを大量に消化するパンダの腸にササを分解する特別な菌がいるのではと考え、ふんに着目。上野動物園(東京都)でパンだのふんをもらって研究を進めた結果、分解能力の高い菌を発見、家庭用ごみで試したところ、ごみの95%以上を水と二酸化炭素に分解することに成功した。実用化に向けた研究を継続中だ」

 受賞理由は「ふんを利用し、ごみを大幅に減らすという一石二鳥で地球環境に優しい研究が評価された」となっている。分解後には、水と、温暖化の原因とされている二酸化炭素を生成するのに、地球環境に優しい研究というのも変だが、そこがユーモア研究の所以なのかもしれない。笑える研究である。

 ところで、このイグ・ノーベル賞というのは、どういう賞なのだろう。これには、創設者のマーク・エイブラハムズで、「ユーモア科学研究ジャーナル」編集長の

『イグ・ノーベル賞 世にも奇妙な大研究に捧ぐ ! 』(講談社プラスアルファ文庫)

が好著だ。

 これによると、受賞基準は、1つは

 まず人を「笑わせる」こと

なのだそうだ。

 次に人を「考えさせる」こと。

 どう考えるかと言うことは問わない。ともかく、まず笑い、そして、待てよ、と考え、えらいとならなければ、受賞者にはなれない。「本物の」のノーベル賞のような、真理の発見だけでは、受賞はとてもできない。もう20年近く続いている賞だが、これは大変に栄誉ある賞である。なにしろ、ロダン彫刻のように「考える人」にさせるだけではダメで、その前に、笑わせることが不可欠なのだ。いわば超ロダンである。まず、その彫刻をパッと見て、人を笑わせ、次に思わず「考える人」にさせる、そんな彫刻とはどんな作品なのだろう。ロダンの「考える人」の彫刻が台座から転げ落ちて、地面を背中にして仰向けになり、考えている姿の彫刻であろうか。これなら、確かに、人を笑わせる。しかし、その次に、人を考えさせるところまでいくかどうか。そんなことを考えると、このイグ・ノーベル賞は、恐ろしい賞だ。これでは、推薦する人のユーモアセンスも鋭く問われる。2009.10.03

  ところで、まもなく「本物の」ノーベル賞の季節になる。医学生理学賞では、日本人は受賞するだろうかというのが関心事。各紙も伝えているが、「週刊新潮」10月8日号「TEMPO」欄でも、

 ノーベル賞候補、脳機能研究の小川誠二氏(東北福祉大特任教授、75歳)

を紹介している。米国の文献データ会社、トムソン・ロイター社が、同氏の論文被引用回数などから、日本人候補なら、唯一人、小川氏だけということらしい。

 小川氏は、同誌によると、脳内の働きを画像化する「機能的MRI(磁気共鳴画像装置)」の手法開発者。東大卒業後、米スタンフォード大、ベル研究所、イェシーバー大アルバート・アインシュタイン医科大学に在籍した。

 同社の予測が当たるかどうか、わからないが、これまで医学生理学賞の有力候補と発表した92人のうち、本当に受賞したのは11人とか。確率は1割。日本人なら小川氏となることを期待したいが、もう一人、京都大教授で、新型万能細胞(iPS細胞)の作成に成功した

 米ラスカー賞の山中伸弥氏

も、今年受賞するかどうかは別にして、今後の有力候補であろう。ラスカー賞は、米医学界の最高賞と言われているからだ。この10月2日に授賞式に出席している。話題の人である。

 医学賞については、10年以上前、あのクローン羊ドリーを生み出したイギリス(当時、エジンバラのロスリン研究所)のイワン・イルムット博士もいつかは受賞するであろう。むしろ、いや、なぜか、遅いくらいだ。原論文は

 「Nature」 27February1997

に掲載されている(ドリーが表紙を飾った)。あの衝撃からはや12年がたつが、あいかわらず死産が多いなど謎がまだまだ解決していない。この点の見極めを選考委員会はしているようだが、その医学界、獣医学界に与えた衝撃度や影響は絶大だったことは、この12年間が証明している。いまだ受賞していないのには、獣医学界に対するヨーロッパの偏見があろう。

 追記 

 日本では、カラオケの発明者、井上大祐氏、カラスが寄り付かない金属づくりの広瀬幸雄金大名誉教授、たまごっちの発明者などがこれまでに受賞している。

 そもそも「イグ・ノーベル」というのは

 ig .no .ble

であって、下品なとか、卑しいという意味がある。ここではユーモアのあるという意味であり、「本物の」アルフレット・ノーベルの「ノーベル」とは関係ないようだ。発音が似ていることから名前をかけただけのようだ。このネーミングも、まず、人を笑わせ、次に、なるほどと考えさせる。

 さらに、追記すると、

 歴とした学問の世界にも、ドイツ人の気候学者、アルフレッド・ウェゲナーにちなんだ

 ウェゲナー賞(ヨーロッパ地球科学会賞)

という高名な賞がある。ウェゲナーは、大陸と海洋の起源について、

 大陸移動説

を提唱した(『大陸と海洋の起源』1928年)。この大陸が移動していると言うのだから、奇想天外だ。最初は、そんなバカなことがあるはずがないとプロの研究者が一笑に付したものが、その後、たいていは数十年もあとになって、大発見であることが実証された研究に贈られる。学者冥利につきる表彰だ。

 たとえば、地球科学分野ではないが、ブラックホールの存在を戦前に理論的に予想したインド人、チャンドラセカール、あるいは、地動説を唱えたコペルニクスなども、受賞してもおかしくない人物である。地球科学では、スノーボールアース説はこの賞にふさわしい奇抜な学説である。なにしろ、7億年前の地球は、地球全体が氷に閉ざされていたというのだから、にわかには信じがたい。が、当時の赤道近くにも氷があったことなど、どうやら少しずつ証拠が固められてきて、今ではおおむね信じられるようになってきている。そのせいで提唱者のポール・ホフマン博士が最近、このウェゲナー賞を受賞している。

 私も、『地球は動く、大陸は移動する。そして地球生物は移住する』という仮説を提唱しているのだが。さて-。

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