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「直感」で決まる総選挙 ?  マニフェスト選挙否定の能天気な脳科学

 先の「FRIDAY」8月26日増刊号の「ファフロツキーズ現象」の記事はりっぱな科学記事であるのに対し、週刊ポスト」8月21日・8月28日合併号「創刊40周年大感謝号」の

人気脳科学者のサイエンス・エッセー「脳のトリセツ」 第7回 「直感」で決まる総選挙

はあまりに乱暴だ。トリセツとは、「取り扱い」の略だろう。巧みに言葉をもてあそんだ、そして、科学を装った「ニセ科学」と言われても仕方がないのではないか。また、この見出しでは、マニフェスト選挙を真っ向から否定しているとも受け取られかねない。これでは真剣に政策を訴えている候補者は立つ瀬がない。ばかりか、第一、「直感」で有権者が政党を選ぶというのは本当だろうか。そんな有権者もいるかもしれないが、ごく一部だろう。大部分の有権者については、そんなバカなことはない。マニフェストを読んだりして、候補者の訴えに耳を傾けて、有権者はいろいろ考えているのだ。一部の脳科学者ほど能天気ではない。

 「直感」と、かぎかっこがついているので、何か意味深長な言葉かと思ったが、本文中には何の説明もない。脳科学では直感をどう考えているのかの説明もこれまたない。いきなり、

 「結局は、最後はどちらに投票するかという選択は脳内の感情の回路を中心として生み出される「直感」によるしかないのである」

と結論付けている。りっぱな業績のある脳科学者とも思えない言い方だ。あまりに軽薄であり、これでは「NO ! 科学」だ。この「脳のトリセツ」には、立派な経歴の著者名と顔写真が掲載されているが、ここでは恥ずかしくて、とても紹介できそうもない。

 つまりは、脳科学と総選挙を、無理無体に結びつけようとしたところにそもそも無理があったということだろう。はっきり言えば、総選挙という、現在の脳科学の限界をこえた領域にまで、脳科学の成果を適用しようとしたところに無理があるのだ。

 一事が万事、こうなのだが、脳のトリセツよりも、「脳科学のトリセツ」が必要ではないか。全国の良識ある脳科学者はこの事態をどうみているのだろう。脳科学界の良心はどこへ行ってしまったのだろう。このまま放置すれば、脳科学の威信、ひいては科学界の威信にかかわることではないだろうか。困ったものだと、まゆをひそめているだけではすまない事態だ。また、ここまでくると、週刊誌の記事だから、まともに相手にする気にもならない、ではすまない。

 というのも、この号には、

 直前完全予測リポート/ グラフと%で民主267Vs自民153を大分析/ 300選挙区候補者600人「当落確率データ」全公開 !

として、なかなか読ませる詳細な科学的な分析が掲載されているからだ。「他誌には真似できない」とまで誇っているが、なるほど確率予測など、いちいちうなづけるまっとうな分析である。同誌には、立派な分析もあるのだ。これとはあまりにかけ離れた「サイエンス・エッセイ」である。2009.08.23

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