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文化進化 「ワンダー×ワンダー」にびっくり

 毎週楽しみにしている土曜日の番組に

NHK「ワンダー×ワンダー」

がある。なかなか感じのいい司会者、山口智充と神田愛花さんが司会をしている。7月25日土曜日のテーマは

大自然のモノマネ動物/声マネ名人の鳥/進化の謎に迫る

である。鳥の中には、歌(さえずり)上手がいることは知っていたが、自分の本来のさえずりのほかに、なんと12種類ものほかの鳥の鳴き声(さえずり)を発声する鳥がいるとは知らなかった。いずれも、生まれた後に、周囲にいる鳥のモノマネで学習したのであろう。確かに驚異、ワンダーである。このさえずり上手なのは、確かに

「メスはオスの歌に惹きつけられ、より複雑な歌を歌うオスを好む。メスにもてるためオスの複雑な歌は進化してきたといえる」「鳥の歌(さえずり)は性選択上の機能として進化してきた」(『現代思想』2009年4月号 総特集ダーウィン「鳥のさえずり行動と四つの質問 動物行動学における進化論」加藤陽子など)

せいなのだろうということが、よく理解できた。特に番組では、メス鳥が、美しくさえずっているオスに引き付けられて近寄ってきて、ついにつがいになり、巣の中に入っていく一部始終が映し出されていたのには驚いた。オスは、さえずりだけでは十分ではないと思ったのか、孔雀のような美しい羽まで揺り動かして見せびらかし、メスを誘い込んでいた。その鳥の名前は忘れたが、お見事、動かぬ証拠とでもいいたいような映像であった。オスがさえずりを進化させてきたと同時に、メスもさえずりの美しさを見分ける鋭敏な感覚を、子孫を残すために、磨くよう進化してきたのであろう。

 このことを学問的に言うと、上記の論文によると、

「オスの歌には発達過程の神経回路の発達具合や発声学習の完成度が反映される。したがってメスはオスの歌を指標にすることで、発達状態のよいオスを繁殖相手に選ぶことが出来る」

というわけだ。

 もうひとつ、番組を見て、鳥の学習能力の高さに驚いた。都市公園などにいる鳥(名前は忘れた)が、ベンチにいて、近くから人間がその鳥を撮影するためにアナログカメラ(高級なニコンカメラ)を向けると、逃げるでもなく、カメラに収まった。そのときのシャッターを切る「カシャ」という独特の音や、その後に自動的にフィルムが巻き上がる音まで、即座に、しかも正確にこの鳥は発声していた。これには、びっくりした。こんな人工音のモノマネは、自然選択による進化にも、性選択による進化にもおよそ関係がない(と思う)のに、その鳥は身につけている。これはなぜなのだろうと考え込んでしまった。

 よくわからないが、上記論文を読んで、いろいろ想像したが、それは生き残るための生物学的な進化とは関係のない

文化進化

ではないかと思い至った。都市に生息する鳥は、カラスもそうだが、えさを探して一日中忙しく飛び回る必要がない。人間が食べ残したものがいくらでもある。その分、ヒマなのである。その結果、正確なモノマネという遊びを発達させた。人間と同じである。自然淘汰をめぐる闘争も、性淘汰をめぐるオス同士の闘争も、自然界に比べたら少ない、居心地のいい都市。それらの淘汰圧がない分、鳥たちにも文化を生み出す進化が用意されたのかもしれない。人為選択の育種で育った鳥たちはもっと文化進化が顕著であることになる。それはともかく、

文化の発達にはヒマや余裕が必要

というわけだ。

 ところで、この上記論文によると、鳥のさえずりと、人間の言語とは「相似性が高い」のだそうだ。つまり、鳥のさえずり研究は、人間が進化の過程でどのようにして言語を獲得していったのか、その手がかりを与える可能性があるという。

 鳥のさえずり研究は、人間の起源に光を投げかけているのかもしれない

 今回の番組は、何人もの死者を出す北海道・大雪山系大遭難で急遽差し替えられた「急ぎ仕事」のその場しのぎ放送であり、内容がないとあきらめていた。しかし、意外にも優れた示唆に富む放送だった言えよう。こういうのを怪我の功名というのだろう。2009.07.26

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