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経済物理学の光と影 強欲マネー資本主義の教訓

 経済学に革命をもたらしたと言われるのが、経済物理学である。2004年には、『経済物理学の誕生』(高安秀樹、光文社新書)という本まで出ている。この十年、物理学の法則などの成果を、高度の数学を駆使して経済学分野に適用してきた。分子レベルでマクロな沈殿現象を解析した物理学の方程式を、金融取引のリスク管理に応用し、華々しい成果が上げた金融工学はその典型である。経済物理学の光の部分と言えよう。

 ところが、昨秋(9月)のリーマンショック以来、金融工学を駆使した商品開発や売り込みにかかわったウォール街やハーバードビジネススクールが、野放図な強欲マネー資本主義者として批判された。

 その背景に迫ったNHKスペシャル

 マネー資本主義/天才科学者が生んだモンスター/リスク消滅 ! の幻想

として放送された。なぜ、暗転したのか。経済物理学のどこが問題だったのか、経済物理学がモンスターとなった、その背景に迫っていた。その背景を4つの側面から当事者に取材している。要約すると以下のようになろう。

 徹底した成果主義で脇役であるはずの投資銀行が主役として、跋扈した

 金融工学が見えにくくなったにすぎないリスクを忘れて、市場を制御できなくなるほどにモンスター化した

 巨大年金マネーが、もっと、もっとと高い利回りを追い求めた

 米政府も、規制のない新自由主義の下に、弱肉強食をあおった

ということだろう。番組の中では、金融工学はテクノロジーであり、善悪の責任はない。問題はそれを利用する人間のリスクを省みない判断に(未曾有の金融危機を引き起こした)責任がある、との金融工学派からの新自由主義擁護の声も紹介されていた。規制のない新自由主義は、もっとも効率的に民主主義を推進するというわけだ。

 金融工学の影は、それを利用する人間がつくり出したものである

ということだ。

 高度の数学に責任はない。則を超えた野放図な人間の欲望が未曾有の金融危機を引き起こしたのである。

 結局、モンスター、なんじの名は人間なり。金融工学でも、ハーバードビジネススクールでもない。

 それでは、その人間はどうすればいいのか。投資家のリスク感覚を麻痺させないためには何が必要なのか。番組では、世界の有識者にその提言を求めている。少しふえんして、まとめると、

 今回の投資銀行については、金融市場の主役であるかのような振る舞いをあらためて、本来の金融の脇役に徹すること。その場合、発想の転換も必要だ。つまり、できるだけ高利回りの運用を行い、その利益は株主に還元するものという強欲資本主義の片棒を担ぐのではなく、利益は社会に還元するという

 公益資本主義

に貢献せよ、ということ。

 無策だった政府については、規制と監視を強化する政策に転換すること。すべてを市場主義に任せるという新自由主義の考え方で律するのは危うい。社会の目的は経済成長がすべてという発想も必要だ

というものだった。

 この公益資本主義は、実は、「情けは人のためならず」という、巡り巡ってゆくゆくはその利益は自分に大きくなって戻ってくるという商人道に通じる。短期的には「損」しても、長期的には「得」をとるという考え方であり、強欲資本主義の対極にある。

 公益資本主義=商人道資本主義

と言えるだろう。これは決して「心掛け」や、最近の品格論や精神論ではない。これは、経済評論家の内橋克人の

共生経済学

にも通じる。

人間が生まれながらに備えている人間性にかなった商人道の重要性については、

『日本の「安心」はなぜ消えたのか』(集英社)

の著者、社会心理学者、山岸俊男氏が詳しく分析し、武士道や品格論が日本をダメにすると分析している。この本の内容、主張をひと言で言えば

 正直、勤勉、利他心を含めた広い意味の利己心といった人間性にかなっている商人道こそ、今回の未曾有の金融危機を引き起こした強欲マネー資本主義を乗り越える処方せんである

ということを学んだ。

 もっと、人間性にかなった商人道を。品格論のような精神論ではダメ

 今回の番組は、いろいろ考えさせるスペシャル放送だった。2009.07.22 

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