« 鶴は千年、亀は万年 ではサンゴは? | トップページ | 福井県立恐竜博物館の意地 2億8000万円で全身化石購入 »

邪馬台国はどこか 箸墓をめぐる波紋/ふたたび科学的とは何か

 6月8日付毎日新聞夕刊に、

 検証「箸墓は卑弥呼の墓」/ 波紋を呼ぶ歴博発表/懸念される数値の独り歩き

という面白い、ほんと夕刊は面白い、記事が出ていた。大学院生のころから、古代史に興味を持って、奈良のあちこちを休みの日には同僚とよく出かけていたから、つい、つい、読んでしまった。箸墓からの出土品の実年代が、おおむね、西暦240年から260年であったことから、中国の史書『魏志倭人伝』などによれば、卑弥呼は247年ごろに亡くなったことになっているので、したがって、箸墓は卑弥呼の墓であると断定している。たから、邪馬台国は、今の畿内であるという論理構成になっている。これまた飛躍である。しかし、これは、卑弥呼の墓であってもおかしくない、矛盾はしないということを示唆しているだけであり、卑弥呼の墓であると断定するのは飛躍であろう。飛躍の背景には、このころの日本列島に、こんな古墳をつくれるのは卑弥呼だけであるという、あまり根拠のはっきりしない前提がある。

 奈良県桜井市にある箸墓については、大学院生の小生がこの箸墓に院生仲間と訪れたころ(1970年代)から、卑弥呼の墓ではないかと推測されていた。最近では、この箸墓の近くに、邪馬台国の遺跡ではないかと言われている巨大纒向(まきむく)遺構があり、大和政権は大和であるという説が有力になりつつあった。そこへ持ってきて、今回の、

 炭素14年代測定

という科学的な測定法による結論で、いよいよ、江戸時代以来の論争に決着か、と思わせた。しかし、炭素14年代測定は直接、実年代、つまり、西暦年代をはじき出してくれるわけではない。炭素14年代(BP)をはじき出すだけであり、これを実年代に変換するひつようがある。この過程で、1対1に対応した実年代が出てくるわけではない。ある程度の幅や、1対1に対応しない、つまり、1対2あるいは3に対応するということもしばしばおこる。これを絞り込む過程で、自分が出したい結論に惑わされて、見たいものだけをみて、邪馬台国は大和、あるいは箸墓のつくられた実年代は240‐260年と結論を持っていきかねないないのである。

 意図的ではないものの、科学的な根拠を装った誤り

が起きる可能性がある。これに論理の飛躍が付きまとうととんでもない結論になり、混乱を招く。この場合の結論は、たいていは、本人が無意識に望んでいた結論なのである。

 ところが、この大和説に、もう一つの邪馬台国候補地(九州説)である佐賀県の県紙、6月14日付佐賀新聞朝刊の「論説」(社説)欄が反応した。いわく、

 邪馬台国の現場/吉野ケ里から積極発信を

として、「古代史最大の謎、邪馬台国の所在地をめぐってここ数年、「畿内説」エリアから情報発信が続く。先日は、奈良県桜井市の箸墓古墳が卑弥呼の墓である可能性が高まったという調査結果が報道された。翻って、畿内説と双璧をなす九州、なかでも、弥生時代のクニの姿を次々に明らかにしてきた吉野ケ里遺跡はどうか。学術、地域振興の両面から調査と研究を支える体制づくりが必要だ」と冒頭から、ライターの青木正彦論説委員が激を飛ばしている。

 論説では、「佐賀県の調査研究体制はというと、まず(奈良県立)橿原考古学研究所のような埋蔵文化財センターはない」、開園して9年目の「吉野ヶ里歴史公園の中核施設となるはずの博物館は、佐賀県の財政事情から先送りされたままだ」と指摘している。その上で、「新しい情報の多寡が所在地論争に影響しないか」と懸念を表明している。科学的なアプローチとともに、九州北部3県11市町が参加した「魏志倭人伝クニグニネットワーク」の設立を評価して、デジタルアーカイブ化など学術面での連携へ発展させていく必要があると指摘している。

 九州説も情報戦で負けるな

ということであろう。声の大きいものが、勝つというわけだ。地元紙の面目躍如の論説である。これこそが地方紙の熱き思いの伝わる面だ。全国紙のような無国籍記事とは一味もふた味も違う。だから、地方紙は面白い。2009.06.20

|

« 鶴は千年、亀は万年 ではサンゴは? | トップページ | 福井県立恐竜博物館の意地 2億8000万円で全身化石購入 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/45394306

この記事へのトラックバック一覧です: 邪馬台国はどこか 箸墓をめぐる波紋/ふたたび科学的とは何か:

« 鶴は千年、亀は万年 ではサンゴは? | トップページ | 福井県立恐竜博物館の意地 2億8000万円で全身化石購入 »