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科学コミュニケーションが不安をあおる 耳慣れない用語は使うな

 正確に記述するということは科学ジャーナリズムにとっては、大事なことである。しかし、科学と社会という観点からみて、さらに重要なことは、報道にかかわる記者たるもの、特に科学ジャーナリストたるもの、ことさらに不安を国民に与えるような報道や言い方をしないことである。専門家が使う横文字あるいはカタカナの専門用語をそのまま右から左に巧みにちりばめて、タイトルにする。映画やテレビドラマなら、それも注目度を上げるには効果的であり、許されるだろう。

 だがしかし、現実の世界の新型インフルエンザが世界的な流行の兆しを見せ始めているこの大事な時期に、ことさらに国民に専門用語を乱用するのは、自分を権威付けようという意図がたとえなくても、科学ジャーナリストの風上にも置けない恥じるべき仕業と言うべきであり、自戒すべきである。

 パンデミック、感染爆発、フェーズ5、H1N1型、PCR法、ウイルス変異。

 こうした専門用語が新聞、テレビで飛び交っている。このことが、ウイルスがごく微小で見えないだけに、もともと不安感を与えやすいのに、それを説明する科学コミュニケーションの稚拙さから、国民の冷静な行動を一層妨げている。こうした稚拙さも影響してか、冷静な行動を促そうという意図で厚生労働大臣が真夜中に記者会見するというのも、尋常な行動ではない。ことさらに不安感を煽り、国民にかえって冷静な行動を失わせる逆効果を生じさせた。

 もともとこうした新型インフルエンザの発生はここ数年、専門家から指摘され続けていたことであり、情報の伝え方の稚拙さから必要以上に恐怖心を煽る結果となった。国民の中には、「パンデミック」という耳慣れない言葉を似た語感の「パニック」と取り違え、一層恐怖心をいだくという趣旨の指摘が5月8日付静岡新聞夕刊に掲載されている。分かりやすい言葉に置き換えるべきだと専門家が指摘している。その通りであろう。

 パンデミックは、世界的な流行。感染爆発という誤解を招きやすいオーバーな言葉は使わない。フェーズ5は、世界的な流行の兆しのある第5段階。前後の脈略もなく突然この言葉が登場する現状は改めるべきだ。H1N1型は、ウイルスの型の一つH1N1型と説明を付ける。PCR法については、精度の高い検査法、ウイルス変異はウイルスの変化、あるいは遺伝的な変化など、一般の人が読んで、聞いて理解できる言葉にすべきであろう。2009.05.08

 

 

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