驚異のひよこ ふ化後3、4日で足し算、引き算ができる
全国紙の夕刊は面白い。そう言ってきたが、なかなかどうして、地方紙も負けてはいない。特集ではないものの、科学ジャーナリストとしては、びっくり仰天、ローマ共同電だが、
人間の赤ちゃんより、ニワトリのひよこのほうが、よっぽど天才
と思わせる記事が出ている。5月22日付静岡新聞夕刊である。「ひよこの計算に関する実験」という二枚のカラー図入りである。見出しは
足したり引いたり/ひよこに計算能力?/伊研究チームが実験
事実なら、人間の赤ちゃんをしのぐ能力である。あまりにおもしろいので、また、短い記事であるので、ほぼ全文引用する。
「イタリアのトレント大とパドバ大の動物行動学者らの研究チームは、このほど、ふ化後三、四日目のひよこに小さな数を足したり引いたりする簡単な「計算能力」があるとの研究結果をロンドン王立協会の会報に発表した。研究チームは「生後間もない動物に計算能力が本能的に備わっていることを示している」と結論付けた。
チームは、ひよこがふ化後に初めて見たものを親とみなして後をついて行く「刷り込み」という習性と、複数の集団のうち、数の多いほうに寄っていく傾向を利用した実験を考案。ふ化後、五つの黄色いプラスチックボールと一緒に育てて慣れさせた。
その上で二つのついたてを左右に並べ、ひよこの目の前で五つのボールを一つずつ、左右どちらかのついたての後ろに隠すと、ひよこは常にボールを多く隠しているついたてに近寄っていくことが確認できた。
さらに、一方のついたての陰から他方のついたての陰にボールを移動させても、ひよこはボールの数の多い方のついたてを選んで近寄っていくことが判明。数を足したり、引いたりする能力の存在が推定できるという。」
たとえば、五つのボールを左右のついたての真ん中にみえるようにおいて、一個ずつ、左右いずれかに移動、左に四個、右に一個、ボールを隠したとする。このとき、ひよこは、数の多い左に近寄っていく。そこで、こんどは、その状態から、ひよこに見えるように、左のついたてに隠れているボールを一個ずつ、計二個を右のついたての後ろに移動する。すると、ひよこは、(左のついたての陰には四個から二個減って二個しかない。そのかわり、右のついたての陰には、二個増えて計三個になった)というように、引き算と足し算をしたかのように、数の多い右のついたてに近寄っていったというのだ。
ついたてがあるので、直接にはボールは見えない。したがって、ひよこは、驚くべきことに、左のついたての陰にあるボールの数を記憶することができる。右のついたての陰にあるボールも記憶することができる。その上で、ボールの移動した個数だけを記憶装置から引いたり、足したりして、左右どちらが多いかを判断していると考えられる。つまり、記憶装置が少なくともひよこの脳内には二カ所、足し算引き算するレジスターが少なくとも一つは、生まれながらに持っていることになる。
ということは、この計算は、生後に習ったものではなく、自動的にハード的に処理していることになる。四個と一個の区別、三個と二個の区別ができる。生後三、四日で目がちゃんと見えるというのも驚異的である。人間の生まれて間もない赤ちゃんは、ほとんど目が見えないのに比べると大変な違いである。
人間の赤ちゃん実験については
『赤ちゃんは世界をどう見ているか』(山口真美、平凡社新書)
がある。この本によると、生まれたばかりの新生児でも、動いているものに反応する能力を持っている。ボールのようなものが、自分のほうに向かって転がってくるとき、首をそらしたり、目をつぶったりする。つまり、回避行動とまではいかないが、危険を感知しているのだろう。生まれたばかりの赤ちゃんにも、かんたんな場合には、ちゃんと三次元空間を理解している。奥行きがあるかどうか本能的に知っているのだ。
人間の赤ちゃんは天才だ。ひよこは、それよりもっと天才だ。
小生、毎朝、ゆで卵を食べるのを楽しみにしているが、なんだか毎日、大天才をたべているようで申し訳がない。これからは、食べるのを少し減らそうと思う。2009.05.31
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